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第3話 あれは一体だ

格納庫がざわついている。


「研究所製が来るらしい」


「実験体だろ」


「子供って話だぞ」


「第8に回すってよ」


失笑。


帝国軍第8機動部隊。


前線にて実戦を任される部隊。


誇りはある。


だからこそ、面白くない。


輸送ハッチが開く。


二人が降りてくる。


若い。


細い。


戦場の擦り傷がない。


視線が集まる。


値踏み。


部隊長が告げる。


「本日付で両名を第8機動部隊へ編入する」


ざわめき。


一人が鼻で笑う。


「隊長、そんな子供いります?」


止めない。


「わざわざ死体増やしてもらわなくてもさぁ」


静寂。


一人が首を傾げる。


「死体?」


軽い声。


「自分らが弱いから、俺達が来たんじゃねーの?」


怒気が走る。


だが挑発ではない。


事実を述べただけの響き。


「……なんだと?」


部隊長が前に出る。


「……一騎打ちだ。この隊での諍いは一騎打ちで決めている」


「使用機体は帝国制式GRASP-03《ガンズ》」


格納庫奥の機体が起動する。


量産型GRASP-03《ガンズ》。


帝国標準機。


安定性重視の実戦型。


「いいな」


二人は了承し、機体に乗り込む。


開始のブザー。


二機が跳ぶ。


隊員が先に撃つ。


速い。


だが一瞬で軌道がずれる。


踏み込み。


近接。


挑発。


ルクは銃口を相手の胸部装甲に直接当てる。


重い金属音。


発砲。


胸部装甲が染まる。


撃破判定。


十秒。


静寂。


「……は?」


コクピットを開け、呆然と降りる。


ざわめきが広がる。


「偶然だ!」


「もう一度やらせろ!」


部隊長が制す。


「……いや、六対六で測る」


その時。


もう一人が口を開く。


静かな声。


「二対十でいい」


全員が見る。


表情は変わらない。


「その方が分かりやすい」


部隊長の目が細まる。


一瞬の沈黙。


「……いいだろう」


「十機出せ」


GRASP-03《ガンズ》が展開する。


十機。


包囲。


開始のブザー。


ルクが前に出る。


射線を踏み越える動き。


一機が沈む。


「囲め!」


三方向からの射撃。


その隙間を、レイが埋める。


正確。


無駄がない。


脚部。


関節。


センサー。


撃破。


「連携してるのか?」


「違う、合図がない!」


崩す。


刈る。


干渉がない。


最初から役割が決まっているような動き。


十機。


カウント三十。


全撃破判定。


沈黙。


誰も笑わない。


「同じガンズで、あれか……」


「化け物じゃねえか……」


二人は機体を降りる。


当然のように。


ルクが言う。


「遅いな、この機体」


レイは淡々と返す。


「人間用だからな」


それが説明。


自分達は兵器であると。



格納庫後方。


視察に来ていた二人。


帝国第零機動隊《黒槍》 所属。


ネスト・アーヴィン。


無言で観ていた。


隣には、眼鏡の男。


帝国GRASP特別開発部主任。


アインス・クラウス。


ネストの視線は二人に固定されている。


解析は終わっている。


反応。


判断。


空間制御。


異常。


十機が弱いわけではない。


それでも。


ネストの眉が、僅かに動く。


「連携ではないな」


副官が振り向く。


「と、言いますと?」


「あれは一体だ」


短い評価。


その奥に、わずかな苛立ち。


帝国は人が戦う軍だ。


あんなものに頼る必要があるのか。


隣で、アインスが小さく笑う。


「いやあ、興味深いね」


眼鏡を押し上げる。


「いい兵器を見た」


ネストは視線を向ける。


「兵士だ」


アインスは穏やかに首を傾げる。


「いいや、兵器だよ。ネストくん」


声は柔らかい。


楽しそうに。


「これは過渡期だ」


ネストの眉が、再び僅かに動く。


「次は、もっと美しくなる」


格納庫のざわめきは、消えない。


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