第28話 怖かった
共和国軍
REV開発区画。
白い機体が静かに立っている。
REV-IV。
前後二座式。
前席が操縦主接続席。
後席が副接続席。
ハッチが開く。
フィーナが先に乗り込む。
白のコネクションスーツが光を受ける。
その後ろに、ユユ。
同じ白。
前後に並ぶ二つの影。
二輪の白百合のようだった。
ハッチが閉じる。
接続開始。
表示:
主接続:25%
副接続:5%
合算:30%
エレジアがゆっくり立ち上がる。
滑走。
応答、良好。
分散ユニット作動。
波形、安定。
その直後。
緊急命令。
亡命貴族、帝国領へ接近。
通常機では追いつけない。
「エレジアなら間に合う」
フィーナは迷わない。
「出ます」
後席。
ユユは深く息を吸う。
「うん」
⸻
荒野。
亡命部隊が最大出力で滑走している。
距離は遠い。
エレジア、加速。
地面を削りながら白い機体が伸びる。
主25%。
副5%。
ユユは操縦しない。
ただ、接続を受ける。
残響が流れ込む。
逃げる焦燥。
裏切りの決意。
恐怖。
「……っ」
たった5%。
それでも胸が締めつけられる。
前席。
フィーナが一機を斬る。
残響が弾ける。
濃い。
重い。
スーツが汗で肌に張り付く。
呼吸が荒くなる。
歯を食いしばる。
涙をこらえる。
接続は切らない。
ユユは後席から感じる。
フィーナの振動。
筋肉の強張り。
呼吸の乱れ。
25%で受け止める重さ。
もう一機。
斬撃。
残響。
強い。
フィーナの声がわずかに震える。
「……まだだ...!」
それでも操縦桿は離さない。
ユユの喉が熱くなる。
こんなに。
こんなに辛いものを。
ずっと一人で。
後席の表示を見る。
副接続:5%。
守られた数字。
それが急に軽く感じる。
「上げる」
小さく呟く。
副接続:10%。
振幅が跳ねる。
視界が揺れる。
吐き気。
背中に冷たい汗。
スーツが張り付く。
「ユユ!下げて!」
フィーナの声が前席から飛ぶ。
「無理しなくていい!」
ユユは震えながら首を振る。
「いいから!」
声はかすれている。
残響が流れ込む。
恐怖。
絶望。
断ち切られた未来。
涙が止まらない。
それでも接続は維持する。
主25%。
副10%。
波形が揺れながら、崩れない。
亡命機が帝国境界へ迫る。
フィーナが踏み込む。
最後の斬撃。
停止。
静寂。
遠方に帝国GRASP部隊の影。
だが間に合っている。
エレジアは減速する。
主25%。
副10%。
ユユの呼吸は荒い。
背中が震えている。
それでも。
「……いける」
フィーナは前席から後方モニターを確認する。
副波形、維持。
震えながらも、落ちていない。
帰投。
白い機体が滑走する。
後席でユユは肩で息をしている。
「怖かった」
正直な声。
前席。
フィーナが静かに答える。
「怖いよ、私も」
ユユは涙を拭う。
「でも」
スーツが汗で張り付いている。
身体は限界。
それでも。
「止まらなかった」
エレジアが整備床に戻る。
前後に並ぶ二つの白。
帝国は50%。
共和国は35%。
だがここには、
二人で耐える構造がある。
エレジアは壊れない。
そして。
二人も、まだ壊れていない。




