第25話 友達だから
共和国軍
REV開発会議室。
中央ホログラムに白い機体が浮かぶ。
REV-IV。
二重コックピット構造。
神経分散中枢ユニット内蔵。
ユユが前に立つ。
「接続値上限は35%です」
ざわめき。
軍技術局長が低く言う。
「35%は危険域だ」
ユユは頷く。
「承知しています」
ホログラムが切り替わる。
LNS負荷分散機構、展開。
一本の波形。
25%。
次の瞬間、波形が二つに分かれる。
主接続:15%
副接続:10%
「分散神経伝達構造により、残響振動を二系統へ拡散」
「合算値は25%。しかし個体負荷はそれぞれ15%と10%に抑制されます」
上層部の一人が眉を寄せる。
「なぜ抑制を強めない」
空気が止まる。
ユユは迷わない。
「接続値は、ある種性能値とも言えます」
沈黙。
「抑えれば安全です」
「ですが、同時に機体応答性能も下がる」
「帝国は接続値を引き上げている」
「こちらだけ下げ続ければ、戦術的劣勢は避けられません」
理論としては正しい。
だが声の奥には感情がある。
「残響は消しません」
「軽減はする。でも、消さない」
局長が問う。
「副接続者は誰だ」
間。
ユユは視線を上げる。
「私です」
ざわめき。
「君は技術士だ」
「問題ありません」
一言。
揺れない。
「接続者としての適性値は基準内」
「理論上、運用可能です」
会議は数分続き、
最終的に条件付き承認が下りる。
「実証試験後、正式採用を判断する」
ユユは頭を下げる。
⸻
深夜。
整備棟。
白いコネクションスーツに袖を通す。
呼吸が浅い。
理論は完璧。
だが身体は正直だ。
訓練用REVのハッチが開く。
接続開始。
表示:5%。
沈む。
微弱な残響。
他者の恐怖。
断ち切られた感情の断片。
「……っ」
吐き気が込み上げる。
視界が揺れる。
5%。
たった5%。
それでも胸が締めつけられる。
涙がこぼれる。
ハッチの外。
フィーナが駆け込む。
「ユユ!」
接続解除。
ハッチが開く。
ユユはコックピットの中で震えている。
涙が止まらない。
「やめて!」
フィーナが震えた声で言う。
「無理しなくていい」
「35%くらい、私一人でやってみせる」
「あなたは乗らなくていい」
ユユは首を振る。
声が震えている。
「こんなに……」
息が荒い。
「こんなに辛いの」
「フィーナは、ずっとこれを」
言葉にならない。
涙が落ちる。
フィーナの顔が揺れる。
「だからやめろって言ってるの」
強い声。
でも本当は怖い。
ユユは歯を食いしばる。
「止まらない」
「フィーナは止まらない」
「なら私も止まれない」
視線を上げる。
涙で滲んでいる。
「一緒に抱えるって決めた」
「背中は、私が守るって決めた」
沈黙。
フィーナの喉が動く。
言葉が出ない。
ユユは小さく笑う。
「5%で分かるよ」
「あなたがどれだけ無茶してるか」
静かな決意。
「だから二人乗りなんだよ」
フィーナは目を閉じる。
そして、ゆっくり頷く。
「……ずるいよ」
ユユが笑う。
「友達だから」
再びハッチが閉まる。
表示:5%。
震えはある。
涙も止まらない。
それでも。
「...うん、いける」
二人で立つための機体。
帝国は上へ伸ばす。
共和国は分けて支える。
壊れないために。
戦争の形が、静かに変わり始めていた。




