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第16話 兵器は揺れない

地下格納区画。


青いブレイバーの前に、ルクが立っている。


「うっし、これで行くか」


整備士が振り返る。


「また壊す気か!」


「お前のブレイバーは脚部修復中だ! 三日は動かすな!」


ルクは肩をすくめる。


「レイのGRASPで出るって」


「二体とも壊れるじゃねーかよ!」


工具が飛びそうな勢い。


少し離れた場所で、アインスがそのやり取りを眺めている。


「今回の任務はレイくんにお願いしようか」


柔らかい声。


ルクが振り向く。


「単独で?」


「ネストくんとだよ」


ルクは青い機体を見る。


「レイ、やれるか?」


レイは静かに答える。


「問題ない」


即答。


迷いは見せない。


「決まりだね」


アインスは満足げに頷く。


「まだまだ実戦データも欲しいし」


ルクは鼻で笑う。


「壊すなよ?」


レイは答えない。



夜。


丘陵地帯。


共和国西部駐屯拠点。


暗い。


灯りは最低限。


先に到着していた機体がある。


GRASP-05《ルーヴ》。


黒灰色の装甲。


無駄のない輪郭。


背部に装備された、長い黒槍。


振動機構内蔵の突撃用主兵装。


帝国第零機動隊《黒槍》の象徴。


ネストが青い機体を一瞥する。


「青い方か」


レイは何も言わない。


接続値。


レイ 30%。


ネスト 10%。


「分断する」


静かな声。


命令ではない。


確認。


「了解」


侵入。


最初のREVをレイが撃ち抜く。


夜に閃光。


残響。


――嫌だ


明確。


二機目。


――まだ


三機目。


――助けて


重なる。


夜は音を逃がさない。


30%。


波形に微細な遅延。


引き金が、ほんの一瞬遅れる。


ルーヴが踏み込む。


黒槍がREVを貫く。


静かに。


正確に。


四機目。


レイが撃つ。


残響が重なる。


“やめろ”


視界が歪む。


白い閃光。


“あなたはこの声に何を感じるの”


一瞬、指が止まる。


敵機が照準を上げる。


ルーヴが割り込む。


黒槍が振るわれ、敵を断つ。


「前を見ろ」


短い。


それだけ。


戦闘は続く。


残響は重なり続ける。


だが任務は達成される。


共和国駐屯拠点、制圧。


炎が沈み、夜が戻る。



帰投途中。


暗い空の下。


二機が並ぶ。


ネストの声が通信に乗る。


「おい、青いの」


間。


「お前、揺れているぞ」


静かだ。


断定ではない。


事実確認。


レイは答える。


「揺れていない」


わずかに間がある。


ネストは続ける。


「兵器は揺れない」


沈黙。


「揺れるなら」


一拍。


「そいつは人間だ」


押しつけない。


感情もない。


ただ置く。


レイは前を見続ける。


何も言わない。


だが。


今夜、


“何も”と即答できなかった。


それだけは、確かだった。


黒槍の影が、静かに夜を裂く。


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