第14話 この声に何を感じるの
整備区画。
赤いブレイバーの装甲に光が走る。
ルクは機体を見上げたまま言う。
「最近、遅いな」
レイは青いブレイバーの脚部を点検している。
「誤差だ」
「誤差ね」
ルクは笑う。
「残響、変わったか?」
一瞬。
レイの手が止まる。
「変わらない」
即答。
ルクは深く追わない。
「濃くなるのは悪くねぇぞ」
「証明になる」
兵器である証明。
レイは答えない。
出撃警報。
二人は同時に機体へ乗り込む。
接続開始。
30%。
視界が拡張する。
駆動系が身体と一致する。
赤と青が発進する。
⸻
丘陵戦域。
帝国側攻勢。
ガンズ部隊が前進するが、
白い閃光が戦線を止めていた。
REV-IIP。
純白の機体。
緑の副光が細く走る。
両手に振動刃。
「白百合だ!」
帝国側通信がざわめく。
ルクが笑う。
「面白ぇのがいるな」
踏み込む。
赤いブレイバーが弾幕を抜ける。
フィーナは単発式長銃を撃つ。
正確。
だが当たらない。
ルクは読んでいる。
弾道を外す。
距離が詰まる。
振動刃と振動切断刀が衝突。
火花。
フィーナは受ける。
二刀で防ぐ。
押される。
重い。
純粋な出力と踏み込みで上を行かれる。
ルクは笑っている。
「おいおい、守るだけか?」
フィーナは答えない。
後退。
部下機へ指示。
「隊形維持、焦らないで!」
その瞬間。
別の方向で青が動く。
レイ。
短銃三射。
一機のREVが崩れる。
残響。
フィーナの胸が締まる。
部下。
考えるより早く動く。
ルクの刃を弾き、
反転。
青へ。
刃が交差する。
接触通信。
ノイズ。
その中に、声。
「あなた達が20%…!」
レイは即答する。
「今は30%だ」
フィーナの呼吸が一瞬止まる。
「30%...!?」
限界域。
再び刃が触れる。
火花の中。
「あなたはこの声に何を感じるの!」
一瞬。
レイの視界が揺れる。
“まだ”
脳裏を過る。
“嫌だ”
胸の奥が波打つ。
だが口は動く。
「何も」
切断。
その瞬間。
別方向から銃撃。
ルクへ集中砲火。
複数のREVが赤へ照準を合わせる。
ルクは舌打ちする。
「いい連携だな」
斬撃で一機を押し返す。
だが数が多い。
フィーナの方へすぐ戻れない。
戦場が二分される。
赤対多数。
青と白。
フィーナは撃たない。
斬らない。
ただ、止める。
レイを。
再接触。
刃越しに視線が合う。
揺れているのは、
どちらか。
増援の信号。
アインスの声が入る。
「はーいデータは十分だよ。撤退」
ルクが不満げに笑う。
「もう少し遊べたろ」
青が後退を始める。
白は追わない。
部下機の回収を優先する。
丘陵の上で、
赤と青が去る。
白は立ったまま。
通信が切れる。
静寂。
レイの耳に残る。
“あなたはこの声に何を感じるの”
残響ではない。
問い。
ブレイバーの駆動音の中で、
その言葉だけが消えなかった。




