表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/41

第12話 撃つのは私たちだ

王城・外交応接室。


白い天井。

磨かれた長机。


カルネア交易連邦の使節団が整然と並ぶ。


黒を基調とした簡素な正装。

胸元には金の紋章。


共和国側代表の隣に、

フィーネリア・ルミナリアは軍服姿で座っている。


王女ではなく、軍人の顔。


使節代表が微笑む。


「西方戦線の交戦記録、拝見しました」


「REVの基礎フレームは元より我々カルネアの設計」


「REV-IIメイルは非常に優秀に仕上げられている」


ユユの指先が、僅かにタブレットを握り締める。


“仕上げた”のは自分だ。


「ガンズ中距離制圧編成への対応も、お見事です」


感情のない称賛。


「さて、次期供給予定のREV用中距離強化砲ですが」


「現行単発式長銃に比べ、貫通力は1.4倍」


「ただし発熱量は増します」


淡々とした説明。


フィーナが口を開く。


「帝国にも売っているのですか?」


室内が静まる。


使節代表は笑みを崩さない。


「我々は均衡を維持する立場です」


答えになっていない。


フィーナの声が一段強くなる。


「均衡のために、人は死ぬと?」


代表の側近が僅かに眉を動かす。


「戦争は両国の問題です」


「我々は需要に応えているだけ」


「需要?」


フィーナの瞳が揺れる。


「あなた方にとっては、撃墜数も“需要”なの?」


空気が硬くなる。


外交の場だ。


感情は持ち込まないはずだった。


それでも止まらない。


「撃つのは私たちだ」


「聞くのも、私たち」


残響という言葉は出さない。


だが、その重みは滲んでいる。


隣から小さな声。


「フィーナ」


ユユだ。


静かだが、強い。


「ここは交渉の場」


一瞬。


フィーナの呼吸が止まる。


自分の声の熱に気づく。


視線を落とす。


数秒。


そして、ゆっくりと言い直す。


「……失礼しました」


王女の顔に戻る。


使節代表は微笑んだまま。


「お気持ちは理解します」


理解していない。


それでも穏やかだ。


「我々は戦争を望んでいません」


「しかし均衡が崩れれば、より多くが死にます」


冷たい理屈。


否定はできない。


フィーナは短く息を吐く。


「分かっています」


それは本音だ。


会談は続く。


数字。

供給。

納期。


命は単位に変わる。



廊下。


重い沈黙。


ユユが先に口を開く。


「はぁ、怒ると思った」


「怒ったよ」


即答。


少しだけ自嘲気味。


ユユは立ち止まる。


「あれがカルネアの本質だよ」


「あいつらは感情を挟まない」


フィーナは窓の外を見る。


「嫌い、あんな国」


素直な声。


「でも、使わなきゃ戦えない」


ユユの肩が落ちる。


「私が仕上げたREVも、カルネア設計」


「……後悔してないけど」


「片棒担いでるとは思う」


フィーナは小さく笑う。


「私も担いでる」


ユユが顔を上げる。


「私は撃ってる」


それだけ。


「あなたが仕上げて、私が撃つ」


「一緒だよ」


ユユの目が揺れる。


「慰める側でしょ、普通」


フィーナは少し困った顔で言う。


「友達だから」


沈黙。


やわらかい。


フィーナは白いREVを思い出す。


「カルネアは嫌い」


「でも、REVは嫌いじゃない」


「私が乗るから」


ユユが小さく笑う。


「じゃあもっと良くする」


「残響、少しでも軽くする」


フィーナは首を振る。


「軽くしなくていい」


ユユが驚く。


「え?」


「消したら、撃ったことも消える気がする」


静かな決意。


「私は受け止める」


ユユは数秒、何も言えない。


そして苦笑する。


「……ずるいなあ」


二人は並んで歩き出す。


カルネアは均衡を売る。

共和国は武器を買う。

フィーナは撃つ。


その全部を知った上で。


それでも、立つ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ