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第10話 あれが人間ってことかもな

地下試験棟、管制通路。


演習区画の照明は落とされている。


整備音が遠くで響く。


ネストは無言で歩いている。


足音は一定。


背後から、軽い声。


「どうだった?」


アインスだ。


ネストは振り返らない。


「機体は悪くない」


「それは良かった」


「だが」


足が止まる。


ゆっくり振り向く。


「DC1stを基準にするな」


空気が静まる。


アインスは肩をすくめる。


「基準? 違うよ」


「これは観測だ」


ネストの目が細くなる。


「お前はあれを兵器として見ているな」


「セルド研究所のDCだからね」


あっさり言う。


「それも成功体だ」


ネストの声が低くなる。


「俺にやらせた理由は何だ」


アインスはすぐには答えない。


少し楽しそうに考える。


「人間の最高値と、設計体の最高値」


「どんな差があるか見てみたかった」


「俺は道具じゃない」


「知ってるよ」


柔らかく。


「でも今日は、いいデータが取れた」


ネストの眉がわずかに動く。


「ブレイバーのか?」


「それもあるけど」


アインスは指で空中に波形を描く。


「接続値10%。残響反応あり。精度維持」


「揺れながら崩れない」


「きれいな波形だったよ」


ネストは睨む。


「俺を観察対象にするな」


アインスは笑わない。


ただ静かに言う。


「キミは人間だ」


「だから面白い」


沈黙。


ネストの拳がわずかに握られる。


「DC1stは揺れていなかった」


「うん」


「……気に入らない」


アインスは首を傾げる。


「人間らしくないから?」


ネストは即答する。


「兵器らしいからだ」


通路に冷たい空気が落ちる。


アインスは小さく息を吐く。


「だから壊れない」


「キミも壊れない」


「違いはどこにあるんだろうね」


ネストは視線を逸らす。


「俺は人間だ」


「あいつらとは違う」


言い切る。


そして歩き出す。


背中は真っ直ぐ。


通路の奥へ消える。


アインスは一人になる。


「うん、そうだといいね」


独り言のように。


だがその目は、まだ演習区画の方を見ていた。



地下居住区


簡素な部屋。


ルクはベッドに寝転ぶ。


「悪くなかったな」


レイは端末を見ている。


「ネスト・アーヴィン」


「残響反応あり。精度維持」


「接続値10%で揺れる」


ルクは天井を見る。


「所詮人間だからだろ」


レイは小さく首を振る。


「残響は音だ」


「揺れる理由がない」


沈黙。


ルクが横目で見る。


「気になるのか?」


「異常値だ」


即答。


だが視線は波形から離れない。


揺れていた。


それでも止まらなかった。


ルクが笑う。


「お前、あいつとやってみたいんだろ」


「戦術的価値はある」


「素直じゃねぇな」


照明が白い。


静かな夜。


レイは目を閉じる。


ネストの波形が浮かぶ。


揺れながら、崩れない。


兵器ではない。


だが、壊れない。


ルクが小さく言う。


「あれが人間ってことかもな」


レイは答えない。


だが、その言葉は消えなかった。


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