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第4話 裏切りの門出と砕かれた夢 その2

この4話に関して主人公が性的暴力を含む重い描写があります。

このシーンは被害者の視点から描かれ、加害者を肯定するものではありませんし、決してエロティックに描いたものではなく、抑圧の理不尽さと被害者の絶望を伝えるために必要な描写だと考えています。

しかし、読者の皆様の心身に負担をかける可能性がある為、事前に注意喚起させていただきます。

類似した経験をされた方、または描写が苦手な方はスキップをおすすめします。

物語の本質は、次の話にあります。

ご理解いただけますと幸いです。

 床板に身体を打ち付け、痛みが広がりの意識が覚醒する。匂いで自分の家だと理解するが確認しようにも手首を荒縄で腕を後ろに縛られているので目隠しを取る事が出来なかった。


「んん!?、この嬢ちゃん起きたみたいだぜ。どうする?」


「このまま、にしといてくれないか?」


「と、父さん……」あたしは少し嬉しかった。この人たちは父さんの依頼で探しに来てくれた人で抵抗するから気絶させたんだと思った。

 目の周りの布が肌に触れ、開かれた視界は少しぼやけていたがだんだんとはっきり見えて来た目でぼんやりと誰かが座っているのが見える。


 硬貨同士がぶつかり合う金属音が袋の中に吸い込まれる様子とそれを数える男。

 そして父親とニコニコとした継母が男達に金貨の入った袋を渡しているのが見えた。



(え!?あ、なんで父さんが――)



「よくやってくれた。報酬はこれで…… 知られてしまっては仕方がないね。チェスカ、僕はケイトを学園に行かせる為に、実家に戻ることにした。お前は、もういらない。魔力(スピラ)の低いお前は、邪魔だったんだ。」父親が淡々と告げた。私は息を飲んだ。

(え、なんでケリーがいるんだよ!?それに報酬って!)訳が分からずに混乱する中で目の前にいるのはチンピラだけだったはずが父親の声が聞こえさらに混乱する。



「本当にいいんですか?」



「えぇ、この娘はもう、私の娘でも何でもありません。私の娘はケイトただ一人です。出来損ないにキャラハンの名を少しでも名乗らせたことを後悔している。」その目はもう娘を見るではなくあたしの心を冷たく、刺すような視線に胸が締め付けられ、冷えて行くのを感じた。


「ウォルト、本当に良く決心してくれたわ。これでケイトも安心していい学校に移ることができるわね。あなたもこれで実家に戻れるわ」と継母はいつものように甘ったるい耳に張り付くような声が聞こえる。


「君やケイトには我慢させてすまなかった。僕が決心しなかったばっかりに……」


(売る? 私を? 娘を?)あたしはひどく混乱してグチャグチャの感情が溢れ出す

 私は立ち上がろうとしたが継母があたしの顎を掴み「ふぅん、いいざまね」と一言呟き、右の頬に強い力が加わり、その後、腹部に重量と共に風を切る音と共に両頬を何度も叩かれた。叩かれる度、楽しかった思い出が消え頬が熱くなっていく。



「あんたの存在が邪魔だったんだから! そのせいで!こんな田舎の村まで来て数年を無駄にすることになったのよ!」と腹部に強い衝撃が走り、地面には嘔吐物が染みわたる。


「あんたみたいな能無しは早く死ぬべきだったのよ」と身体を何度も蹴られる度に身体が折れ曲がる。あたしの頬を踏みつける継母の顔は今までとは比べ物にならないほどの憎しみに歪んだ顔に違いないと思う。恐怖すら通り越し、あたしは何も感じなくなってきた。



「おいおい、奥さん、これ以上は商品に傷がついちまう」あわてて男たちが止めに入るが「これでいいでしょ」と銀貨を数枚投げ捨て男がそれを拾う


「チェスカちゃん、今日は大事な日なのよ。これ、あなたが必死になって稼いでくれたお金でお願いしたんだよ。 あなたへの門出のお・い・わ・い。 喜んでくれるかしら?」


(え!?なんだよそれ……)


「それではあとは我々で」


「はい、よろしくお願いします」


「ちょっと待っ――」


 ドアの鍵が閉まる音が、部屋に響き、私は男達と一つの部屋という事実。継母や父親の裏切りよりも、恐怖が一気に襲う。心臓が喉元まで跳ね上がり、息が浅く、速くなる。

 ゆっくりとあたしの肩を触る。不快感からか身体を動かすと「じっとしてろ!!」と耳元で怒鳴られ、頬に拳が打ち付けられる。さびた鉄のような匂うが鼻腔を通り抜ける。

 布が裂ける音と夜風が通り抜け、男達の下品な笑い声がしたと思ったら、ねっとりとした触感と共に何かが這いまわる。何度も乱暴につかまれ、独特の温かい口臭が鼻をかすめ嫌悪感が増す。声をあげようとするが何かが詰まって声が出ない。

 助けを求める言葉が、頭の中で何度も繰り返されるだけで、口からは一滴の音も漏れなかった

 痛みより先に、(信じられない)という思いが胸を抉り、(これは夢だ)と何度も繰り返したがそれが淡い期待が幻であったことを身体は知っていた。



「おい…… とけよ……」


「だい…… だって…… ばれ…… しないって」


(あれ? アタシ、何があったんだっけ)と思い返すと、最後に記憶してたのがあたしの前に――

 目を開けると男がアタシの上に乗りになっているのが見えた。

 咄嗟に銃を取り出し男に向けて引き金を引くがカチリッと言う音しかしなかった。


「貸せっ! 何だこれ?」男は銃を持って探るような仕草をし、値踏みするような手つきで銃を触る。


(か、返せよ!そいつはあたしの大切な――)頭に鉄をぶつけた様な衝撃が響き渡り、痛みが暴れ回る。手で頭を押さえたいが縛られてそれも出来ず生暖かい液体が頭部から伝い流れる。

 男はあたしから銃を取り上げた物を、少し見て投げ捨てる。床に落ちた鉄の塊は役目を果たす事はなかった。


「こんなおもちゃで俺達をどうしようってんだよ!」男の顔は怒りに満ち、大きく振りかぶる。必死に手足を動かし抵抗し、痛みと恐怖からやっとの思いで叫び声をあげる。


「静かにしろ!目を開けろ俺はお前の苦しむ顔が見たいんだよ」」男のごつごつとした大きな手が頬を再び打ち、破裂した様な音が身体を通して頭に響きさらに痛みが込み上げる。



「おい、売り物なんだぞ!」


「大丈夫だって! いつもこうした方がおとなしくなったじゃねーか」


「しかし、口調からは想像できねぇ こいつ、いいもん持ってんなぁ」


「勝手にしろ、次は俺の番だからな」


「わかったから、向こうに行ってろ」もう一人が去り、馬乗りになった男と二人だけになる。

 ぼんやりと見える男達は¥は新鮮な肉を見つけた野犬の様な目をして舌なめずりをただ見つめる事しかできなかった。


(助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて……)



 頭の中では何100回も繰り返したが助けは来なかった。幻に見た彼女に憧れて身体を鍛えても、無力だった。力で抑え込まれ体が動かないのはそれだけが理由じゃない。

 不快感と恐怖が混在し、逃れようにも抵抗の気力が消えていくのを感じる。

 いつもと同じで、あたしさえ我慢すれば全てが丸く収まる。

 力のないあたしは、この獣達がその食事が終るのを待つだけしかなかった。


(もし強かったら……誰もあたしを使い捨てのように扱わなかったのに)


(もし魔法が使えたら……こんな奴らをあっという間に殺すことだってできたのに)


(もし物語の様に英雄が助けに来てくれたら……こんな事をされる事は無かったのに)


 あの時見た幻の女性の様に強くなりたくて、身体を鍛えた。でもそれは所詮、独学でギルドの養成所や魔法学園で指導されたわけでもない。男性相手に勝てるなんて夢を見た事が間違いだったのかもしれない。


 時間は永遠。


 身体が震え、冷えきる。


 全てが終わったのか、獣達が立ちあがり、満足げな顔を虚ろに見ると「娼婦より、こっちの方が金は掛かったがいい体験出来たな」と男が笑う。あたしは床に横たわったまま。体温が奪われていくのを感じる。誰も来ない。孤独が、心を刺す。裏切りが、痛みより深い。


「これ、お前の大切なもんだろ?」


(そ、それは!?)あたしの反応を見て、ニヤついた男が手に持っている銃が空中に投げられる。

 必死に手を伸ばすが届く筈も無くもう一人の男が剣を抜き、魔力を込めた剣撃が銃に直撃し、その瞬間、銃がバラバラの鉄の塊に砕かれ、細かい音と共に床に散らばる。男達はその破片に唾を吐きかける。


「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」力を込めると引きちぎられた荒縄はあたしの皮膚を易々と引き裂き血が滲むのも構う事無く、あたしは涙をこらえて破片を集める為に必死になって這いつくばる。


「こいつ、泣きながらこんな汚ねぇもんにまだ執着してやがるぜ」


「女、お前はこれからもっと執着しなきゃいけ事があるんだからなぁ」と下品に笑う姿に「なぜ…」やっと声が出たが、誰も聞いていない。

 怒りで壊された破片を握りしめ、破片が手に刺さり血が流れる。あたしの唯一の誇りや夢は打ち砕かれた。力が無い物は全てを奪われ、尊厳すらも破壊され、道具として成り下がる。これからの自分の人生が絶望に沈む事を感じ、その現実が直視できなくなる。

 やがて視界が狭まり、あたしは静かに目を閉じた。


読んで頂いてありがとうございます。続きが気になると思われたらポイント評価、ブクマをして頂けるとうれしいです。

前書きでも書きましたが体調の方ご自愛ください。

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