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第2話能無し少女の鉄の夢 その2

「チェスカちゃん、そのお金……どういう事かしら?」あたしを見下ろし、継母の睨む目に思わず委縮してしまう。


「ご、ごめんなさい」と謝るが彼女の怒りは収まらず、身体を蹴られ、床に倒れたあたしの耳に継母の罵声が響き、身体は踏みつけられるが必死に堪えて我慢する。


「コブ付きで情けをかけて置いてあげてるのにねぇ。 あんたは娘と違って出来損ないなのよ。 しっかりと弁えなさい」と頬を何度も殴られ、髪を掴まれ、頬にテーブルからのキスを受ける。鉄の味と痛みにあたしはとっくに慣れていた。


「これは…… あたしにっておかみさんが」


「ふぅぅん? 全く、いい訳なんかしてこの子は!」 胸倉を掴みあげられ、腹部の激痛と共に嘔吐した胃液の不快感から涙が滲む。

 あたしは蹲り呻き声をあげるしかなかった



「いい、よくおぼえてね。あなたはケイトと違って、魔法もろくに使えないタダ飯食らいのなのよ。だからせめてお金を稼ぐくらいじゃないと存在価値すらないの。あなたを置いているのは、金を運んでくるからと、あなたのお父さんの結婚の条件だったから」


 あたしが粗相をすると彼女(ケリー)にいつも言われる言葉だ。あたしが我慢すればすべてが丸く収まる。

 そう考え罵倒に耐え続けている。

 殴り返しては決していけない、殴り返したら父さんが悲しむからと思い我慢する。



「まぁ、適当に時が来ればアンタを売ることだって出来るのよ。魔法は使えないけど、見てくれは良いし、きっと高値で買ってくれるわ。 早く、その汚物を掃除しなさい」 継母がそう言い、あたしの黒髪をそっと触る。


(逃げたい…… でも……)


「さぁ あなたが誤魔化したお金も早くわたしなさい!」あたしはこの家の平和の為、家族として居続ける為に、言われるがままにお金を全て差し出す。

 そして彼女はあたしに手をかざし魔力を込める。

 腫れた顔や身体の痣は、彼女が面倒臭さそうに回復魔法を掛け治癒される。

 回復しているはずの傷口に虫が這うような痛みに思わず顔を少しゆがめる。


「これで大丈夫ね。まったく、あなたがいるから助かるわ。だってこんなに良い道具があるんだもん。お金は稼いでくれるし、ストレス解消にもなってくれる」と腫れが引いた事を確認するとそそくさと買い物に出かけた。

 表面上はあくまでも仲のいい家族を演じる為。傷が残っていては、面倒なことになる。

 決してあたしの為などではないことは昔から理解している。

 表面だけ治ってはいるが完璧に回復していない傷の痛みは耐えるしかなかった。


 掃除や洗濯が終わるころには、継母が買い物から帰ってきた。

 あたしは何も言わず痛みに堪えながら夕飯の手伝いをする。ちょうどその頃には妹も学校から帰宅した。


「あら、ケイトおかえりなさい。いっぱい学べたかしら?」あたしとは違う、母親らしい暖かい笑顔で継母は彼女を出迎える。

「ママ、今日、先生から呼ばれて成績が良かったから――」頭をなで照れつつも嬉しそうな妹を見ながら、あたしは少しホッとする。

 だって妹がいると本性を見なくても済むし、暴力も無いから。



「ママ、わたしもお手伝いしようか?」


「ケイトはいいの。 学校から帰ってきて疲れたでしょ」


「でも……」


「学校で疲れてんだろ、あたしと継母さんが作っとくから休んどきな」


「う、うん」


「ただいま」夕飯が出来る頃には父親も魔石鑑定の仕事から帰って来た。

 食卓を囲みながら神に祈りを捧げ、夕食を食べるのが日課だ。

 あたしは神なんか信じてはいないが一応は祈るふりをする。

 妹が学校での話をしながら両親はニコニコとしながら聴いている。

 妹からあたしの話を振られるも当たり障りのない話をして終わり、パンを取る為、腕を伸ばす。



「お姉ちゃん…… その痣、どうしたの?」


「確かにどうしたんだ、その痣は?」と父さんが言うと一瞬ではあるが継母もギクリとした表情が見える。


「こ、転んだんだ。あたし、ドジだからさ」と笑いながらとっさに転んだ事を伝えると義母が、「もうドジなんだからチェスカちゃん気をつけるのよ」、と笑った。

「チェスカ、お前はケイトとは違って魔力が使えないんだ。ケガをすれば自分で回復も出来ない。気を付けなさい」と言う。心配と言うよりかはまるで厄介ごとを増やすなと言われているように感じた。


「はい、ごめんなさい」といい、あたしは袖を引き、痣を隠す。一瞬、回復魔法をかけてくれると思ったが考えるだけ無駄だったのかもしれない。


「それとあなたこれ……」と継母がポケットから袋を出してお金をテーブルに出す。


「ケリー、このお金は!?」


「私とチェスカちゃんで用意したの。少しでも生活の足しになればってもって。」


「そ、そんな、僕の稼ぎが少ないばっかりに――」


「いいえ、あなたは頑張っているわ。魔石の鑑定のお仕事だってそれにケイトは――」


「ケリーそれは!?」


「あ、ごめんなさい。さぁみんなで食事にしましょ」


 あたしは継母が何を言おうとしていたのか理解はしてた。

 ケイトにはこんな村の学校より風の国の中央都市シルフウィンドの学校に行かせたいのだ。

 行かせたいなら行かせればいいと思っていたが、なぜそれをしないのかがわからなかった。


読んで頂いてありがとうございます。

面白そう、続きが気になる。そう思っていただけましたらブックマークや評価をして頂けると、とてもうれしいです。


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