「千鳥足」は、立派な父の姿かも?
酒に酔った人が、おぼつかない足取りで、フラフラとあっちに行ったりこっちに行ったり、まっすぐ歩けないような様子を「千鳥足」と言い表すことがあります。ネクタイ姿のサラリーマンが、赤ちょうちんの居酒屋から出てくるタイミングでの目撃例が多いようですね。
「千鳥足」は、鳥の「チドリ」の歩き方に由来します。
一般的な鳥の足には、後ろに支える指がありますが、「チドリ」には前指が三本あって後ろ指がなく、内股で交差するように、足をジグザグにふみ出して歩くという特徴的な歩行をします。
一見、ふらふらとよろめいているようにも見える、このユニークな足取り・足踏みが、酔っぱらった人の歩き方に似ていることから付けられた……というのが一般的な説です。
チドリの種類の一種、コチドリやシロチドリの生態として「擬傷」があります。
他の動物に、卵のある巣が見つかりそうになると、親鳥は、傷ついてうまく飛べないフリをしてヨタヨタとよろめきながら、卵のある巣から離れていき、自ら「おとり」になるのです。
片方だけ翼を折り曲げて震わせ、「ケガして折れている」ポーズをしてみせることもあるそうです。
そして他の動物の目を引き付け、巣からある程度の距離が開くと、ケガしているフリをやめて、一気に飛び立って逃げる。
その頃には、追っていた他の獣も、元あった「巣の位置」を見失っているという案配です。騙されたと気づいた時には、もう遅い。
下手すると、そのまま獣に襲われかねないのに、命がけで「傷ついて弱っているフリ」をしてみせるのです。
卵を守りたいという親鳥の本能がなせる業でしょう。
この「擬傷」状態のチドリを見て、「千鳥足」の命名の由来とした、という説もあるようなので、「お父さんは職場でも酒場でも、家族を守るために戦っているのかもしれない!」と考えましょう。そして、少しは尊敬しましょう。ほんの少しでいいから。




