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「不思議の国のアリス」は即興物語

 世界各国で翻訳され、親しまれている、イギリスの作家ルイス・キャロルが生み出した「不思議の国のアリス」を始めとした児童小説「アリス」シリーズ。


 ルイス・キャロルという名前はペンネームで、本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドドソン。数学者だったそうです。

(「アリス」シリーズ以外の著作として、本名で執筆した数学の専門書も多数あります)


 ルイス・キャロルは、当時親しくしていたリデル家の幼い三姉妹、ロリーナ・リデル、アリス・リデル、イーディス・リデル相手に、少女を主人公とした即興物語を話して聞かせました。


 何度か話すうちに、アリス・リデルがルイス・キャロルの話をえらく気に入って、それに応えるように「アリス」という女の子をメインとした即興物語を話すようになります。


「自分のために、物語を書き留めておいて」とアリスにせがまれたルイス・キャロルは、これまでに話した物語を、一冊にまとめた本を作りました。装丁も、挿絵も自分で手掛け、手書きで全部ひとりで作った、アリスのためのオリジナル本をプレゼントしたのです。


 これが、「不思議の国のアリス」の原型となる、「地下の国のアリス」という本でした。


 知り合いの作家に見せたところ、正式に出版することを勧められました。


 原稿をまとめ、書き足すうちに、元の2倍近いボリュームになったストーリーを出版社に持ち込み、出版する運びとなります。

 タイトルは「不思議の国のアリス」にしました。

(さすがに出版化の際は、手書きの自筆イラストではなく、プロの絵師が挿絵を担当しました)


「不思議の国のアリス」はヒットし、続編の「鏡の国のアリス」も執筆。

 これもまた人気を博し、以降、翻訳されて世界中で重版がずーっと続きます(すごい)。

 聖書、シェイクスピア劇と並んで、「地球上でもっとも多言語に翻訳された作品」と言われるほどです。


「不思議の国のアリス」の出版から20年後、原型となった「地下の国のアリス」も世に出したいと思ったルイス・キャロルは、当時結婚して姓も変わっていたアリス・ハーグリーヴスに手紙を送り、「地下の国のアリス」を出版したいので一時的に返してほしい、とお願いします。

 

 大事に保管していたアリスは、快く「地下の国のアリス」を渡し、複製されて出版されました。


 その後、アリスの手元に戻りますが、ルイス・キャロルの死後、生活に困窮したアリスは、残念ながら「地下の国のアリス」原本をオークションに出し、高額で売却しています。

 複数のコレクターの手を経て、「この本はやはり、故郷のイギリスにあるべき」と、アメリカ人有志によって買い戻され、大英博物館に寄贈されました。感動的なエピソードです。


 日本でも、「アリス」シリーズは翻訳され、明治時代に輸入されました。


 当時は、忠実な翻訳よりも、冒険物語としての面白さと、わかりやすさを優先したらしく、主人公の少女の名前は「アリス」ではなく「みいちゃん」など、大胆な翻案の結果、日本名に変更されたそうです。なんかイメージちがうなー。


 翻訳者によっては、「アリス」の名は「愛ちゃん」「綾子さん」など名称も異なるだけではなく、物語展開も大きく異なり、翻案というより、ほぼ創作に近いものもあったとか。


 現代だったら「原作クラッシャー」とかネットで叩かれそうですね……。


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