「セピア色」は、イカスミの色
茶色く、色あせた昔の写真を片手に「ふっ、セピア色の思い出さ……」なんて、格好良く決めたことはありますか。
ないですか。そうですか。……私も、ないですよ? ほんとに。
いや別に相手の反応を見てから「こっちも変えなきゃ」と合わせているわけではないです、決して。
ん? これ、言い訳するほど泥沼に嵌まってどんどん信憑性を補強してしまう自滅パターン?
さて、ほどよく退色した、経年劣化して淡い茶色となった写真や物を「セピア色」と表現することがあります。
懐かしくも“古き良き思い出”の代名詞として使われることもありますが、この「セピア」というのは「イカスミ」のこと。
古代ギリシャ語で「セフィア」または「セピア」といったそうです。
イカは食料として使われるだけではなく、イカの墨はインクの代わりとして重宝されました。
もっとも、イカスミはそのまま使うとニオイがきついし色褪せしやすいしで使い難かったらしいので、アルカリで溶かし、塩酸を使って沈殿してから乾かし……といった手順を踏んでから、ようやく使用したようですが。
イカスミは、真っ黒なパスタ「イカスミのネーロ」など、味付けとしても使えます。
ちなみに、あまり聞かない話ですが、タコのスミを集めても、ネーロとしては一応使えるそうです。
ただ、タコって、体内に墨を蓄えている「墨袋」がイカよりも小さいので、料理一皿分に使う量を集めるだけでも相当数のタコを用意しないといけないらしいです。
某テレビ番組では、頑張ってタコを集めて「タコスミのネーロ」パスタを実際に作っていました。
タコスミは加熱すると固まったり、もともと水っぽかったり、あまり料理には適していないようですが、味はそれなりらしいです。
ちなみに、イカのスミと、タコのスミでは、役割が若干異なるのを御存知でしたか?
もちろん、「敵に襲われた時、身を守るため」ではあるのですが。
イカのスミは、粘度が高い特性があり、放出したあとは拡散せずに、しばらく「塊」として水中に残留します。
自分と同じサイズの「影」を作り出し、イカを捕えようとした敵は、その墨を「イカ」だと認識して襲うわけです。その隙に、イカは逃げる、と。
いわば、身代わりを作る「分身の術」です。
タコのスミは、イカのスミより粘度が低く、サラッとしていて、水に放出すると濛々と広範囲を黒く染め、敵の視界を覆います。
こちらは、煙玉をぶつけて逃げる、「煙幕」のイメージ。
こう書くと、イカもタコも「海のニンジャ」という感じですね。




