グラビアアイドルはもういない
「雑誌の巻頭グラビアを飾る!」とか「グラビアアイドル」「グラビアモデル」とか、なにやら華やかな響きですが、実はあなたもグラビアに載ることはできるのです。
実は「グラビア」というのは、印刷技法の名前。
フランス語の「gravure」に由来し、「彫る」「刻む」という意味で、元々は金属や石に彫刻を施す技法を指していました。
この言葉が印刷の分野に取り入れられ、19世紀には銅版画や凹版印刷の一種として発展しました。
これが「グラビア印刷」のはじまりです。
発展した技術は世界に広がり、特に雑誌や新聞の高品質な写真印刷に欠かせないものとなりました。
雑誌などでは、白黒の通常のページを「活版印刷」、絵や写真などカラフルで鮮やかなページを「グラビア印刷」で分けて印刷していました。
「グラビア印刷」の方が発色が良く、見た目が綺麗に印刷できるからです。
それらの技法で印刷されたページを「グラビアページ」と呼びました。
立ち読みで最初の数ページをめくった時、読者の興味を惹くようにセクシーな水着アイドルを巻頭部分に配置したら、売り上げが伸びた、ということから「グラビアページ」イコール「モデルを起用した写真のページ」の意味へ変化していきます。
グラビアページに起用されるアイドルやモデルを「グラビアアイドル」「グラビアモデル」と呼ぶ文化も生まれ、「巻頭グラビア」「見開きグラビア」が雑誌の顔になっていきました。
なので、純粋な意味では「グラビア印刷」で印刷されたものは「グラビアページに載った」と言えるわけです。
あなたの写真を印刷会社に頼んで「グラビア印刷」で刷ってもらえば、「私、グラビアに載ったことあるよ」と宣言してもウソじゃないんですね。
まあ、ハッタリには近いですけど。
でも、既に「グラビア」という言葉は、印刷技法とは無関係で「写真のページ」そのものを呼び表すものに変化しています。
たとえ「グラビア印刷」で文字ばかりのページを印刷して、
「明朝体フォントが細部まで綺麗に印刷できました!」
というページが仮にあったとしても、一般的には「グラビアページ」とは呼ばれません。残念ながら。
そして、印刷技術が発達した現代では、「グラビア印刷」で写真ページを印刷している雑誌というのはほぼ無く、「オフセット印刷」という技法だけで白黒ページもカラーページも両方キレイな発色で印刷できるようになっているのです。
つまり、本来の意味での「グラビア」に載っている「アイドル」は、もはや絶滅状態。
これからの時代は「オフセット印刷に載っているアイドル」=「オフセットアイドル」とでもいうのでしょうか。
略してオフドル!
オフの日にオフドルにオファーしたら、今オフロに入ってるからってスマホの電源をオフられた、とか言うわけですね。言わんわ。




