とにかく不運なパウリ効果
世の中には、どうにもこうにも「運の悪い人」というのがいて、この人が使うとパソコンの調子がおかしくなったり、機種交換したばかりのスマホでエラーが起きたり、指定席を取っておいた新幹線は機器故障で遅延したり、チケットを購入したコンサートはアーティストの不祥事で中止になったり……。
イベントにおいて「雨男」とか「晴れ女」とか、「なぜかこの人が一緒だと、こういうことが起きる……」というのは、不思議ですけど、実際によく聞く話です。
物理学において「パウリ効果」というのがあります。
ノーベル物理学賞の受賞歴があるオーストリア出身の物理学者、ヴォルフガング・パウリは、実験が不得意で、実験機材をよく壊していました。
時には、パウリが触れたり、近づいたりしただけで、機器が故障するという謎現象まで発生します。
ついには、「パウリが近寄っただけでまた機械が壊れたぞ。パウリ効果だ」と揶揄されるようになり、物理学会で有名なジョークとして浸透していきました。
パウリの友人で同業者の学者たちは、この効果を恐れて、自分の実験室に入れたがらなかったり、実験結果が失敗に終わると「きっとパウリが近くにいたんだ」と原因を押しつけたと言います。
あるパーティーで、主催者がパウリを脅かそうと、会場のシャンデリアに仕掛けをしておきました。
パウリが部屋に入った時にシャンデリアが落ちて、「ほら、君のせいだぞ」と笑おうという算段でしたが、パウリが来た時にシャンデリアが落ちることはありませんでした。
なんと、その仕掛け自体がなぜか不具合を起こして、作動しなかったのです。
護身のためにもパウリ効果は使える、ということでしょうか。
パウリ自身も、実験の不得手さや、周囲の皆が言う「パウリ効果」について、自覚的だったようです。
私も、機器の故障というわけではないのですが、セミナーに行って全員に配布された資料で、
「次に32ページのグラフを見てほしいのですが……」
「あれ、乱丁でページが抜けてる!? 31ページの次が34ページになってる! 周りの様子を見ると、普通の顔してるぞ? 焦っているのは自分だけ!?」
みたいな、「紙資料の不備」の不運は、経験があります。
こんなこともありました。
「この資料には最後にアンケート用紙がついているので、最後は記入して、提出して帰ってください」
「あれ、自分の資料にだけ、アンケート用紙がついてないっぽいぞ!? ま、めんどくさいから、やんなくてもいいか……黙って帰ろう」
「このアンケートで参加の有無の実績確認となりますので、アンケート用紙の提出が無いと後日郵送予定の参加記念品もキャンセルになります。ご注意ください」
「すみませーん! アンケート用紙が無いです! くださーい!」
正直に言うのって大事。無料の記念品欲しさに参加したセミナーで、貰わない訳にはいかない。
運と勇気の無さを、物欲が越える瞬間が、今!




