「月にウサギ」はアジアだけ
明日、2025年の10月6日は中秋の名月。いわゆる「十五夜」です。
月といえば「ウサギが餅つきしている」というのが日本の言い伝え。
月の影になっているクレーター部分がそう見えた、というところに由来するようで、世界の国々では違った見方があります。
中国では、「餅つき」ではなく「薬草をこねているウサギ」。
アメリカでは「ワニ」。
南アメリカでは「ロバ」。
アラビアでは「ほえるライオン」。
南ヨーロッパでは「カニ」。
東ヨーロッパでは「髪の長い女性」。
北ヨーロッパでは「本を読むおばあさん」。
ノルウェーでは「バケツで水を汲む男の子と女の子」。
ベトナムでは「大きな樹木と、その下で休む男」。
オランダでは「悪行の報いとして幽閉された男」。
韓国では、日本と同じく「餅つきするウサギ」だそうです。
決して手の届かない、夜空に高く輝く月を見上げて、昔の人は様々な想像力を働かせたのでしょうけど……世界各国の動物シリーズのバリエーションはともかくとして、何があったんだ、オランダ。
罪人の島流しではなく「月流し」?
そもそも、月にいるウサギの伝説は、仏教に由来するようです。
インドの「ジャータカ神話」の中で、善行を積んだウサギが登場します。
空腹な老人をもてなすため、ウサギは食べ物を探しに行きましたが、何も得ることができず、自らの肉を食べさせるために焚き火の中に身を投じました。
この老人の正体は神様で、ウサギの行動に感謝して、永遠に月に住まわせてあげた、という話です。
ウサギは、月に行っても「老人への食べ物を準備するために」せっせと餅をついて支度している……なんとも健気ではありませんか。
月にいるウサギが餅をついている、と日本で見なされるようになったのは、18世紀前半(江戸中期)頃だと推測されています。
江戸時代になると、中国の書物に見られる杵と臼を使って餅をつくウサギの戯画が日本の書物にも現れ、記録に残っています。




