輪廻転生とスープ伝説
中国の奥地、どういうわけか前世の記憶を持つ人たちが多く暮らす村がありました。
その村には、
「死後の世界で出されるスープを飲むと、前世の記憶が無くなってしまう」
という「スープ伝説」が伝わっており、それを知っている人たちは、死後の世界で不思議な老婆が差し出してくるスープを飲まずに、生まれ変わっても前世の記憶を保ち続けているのだとか……。
生前の記憶を持ち続けたまま、死に別れた家族と感動の再会を果たした者もいる反面、前世の話を現世ですると謎の病気になるとも言われています。
肉体が死んでも、魂は引き継がれたまま、生まれ変わって別の肉体になる。いわゆる「輪廻転生」です。
前世がどうだったか、生まれ変わっても覚えておきたいと思うのか、前世の記憶があると新しい人生に邪魔だと考えるか……。
自分が死後の世界に行った時、スープを飲むか、飲まないか。
思考実験として考えてみるのも面白いかもしれません。
「なろう」界隈でもファンタジー世界に転生する話は多いですが、それはさておき。
実際に「輪廻転生」があるかどうかの真偽は、オカルトめいた領分になってしまいますが、それが「ある」と仮定して、ひとつのユニークな考え方を聞いたことがあります。
前世で悪いことをしたら、人間に転生することができず、動物や虫に転生するのだと。
それは、魂に与えられた「罰」なのだと。
世の中には、みんなが守っているルールを平気で破る迷惑な人がいます。
堂々と行列に割り込むとか……注意しても、逆に文句を言ってきたり。
逆に、誰に対しても親切な人格者もいます。
気配りがうまく、評判が良く、初めてやる事でもそつなくこなす、完璧な人が。
ルールを破る前者をA氏、親切な人格者をB氏としましょうか。
A氏の前世は、動物や虫だったのです。ゴキブリやミミズだったかもしれません。
魂が罰を受け、畜生道を歩んできたので、やっと人間に生まれ変われても、「人間として生きる」ことに慣れていないのです。
人間社会で、周囲との調和を考える余裕もなく、自分のワガママを押し通す。
本能で生きる動物に近いスタイルです。
こういったA氏に対しては「元・動物」あるいは「こないだまで虫ケラだったヤツ」だと思って、大目に見ることにしましょう。
そう考えれば、無礼な行動をされても、腹も立ちません。
そんなヤツに怒ってもしょうがないからです。
「ああ、人間になったばかりで、慣れてないんだな……」
内心で思うことで、少しは寛容な気持ちを持つことができるというものです。
対照的にB氏は、清らかな魂で、前世も前々世も前々々世も、きっと人間だったのです。
「人間として生きる」ことに慣れているのです。
人間としてのコツを掴んでいるので、うまく生きられる。
もしも目の前で、A氏に該当するような人を見かけた時、そんな風に考えてみてはいかがでしょうか。
許す心を持って生活した方が、いい人生になるかもしれませんよ。
徳を積み重ねたあなたは、きっと来世も人間に……。
あ、ここまでの文章を読んでくれた、虫や動物の読者の方はいますか?
大丈夫、まだ来世でチャンスはありますよ!




