デニムが青い理由
カジュアルなファッションの定番として愛されているデニムパンツ。
「デニム」は、あの生地の名称であり、それが衣服そのものを指すようになったのは最近のこと。
ひと昔前は、青いデニム地のズボンを「ジーンズ」(あるいはジーパン)と呼びました。
「デニム」の語源は、フランス語で「ニーム地方の機織り」を意味する「セルジュ・ドゥ・ニーム」から。
「ドゥ・ニーム」の部分だけを残す形で短縮され、「デニム」に変わっていったと言われています。
この生地はイタリアのジェノヴァから主に輸出されたので、「ジェノヴァ」の当時の中世フランス語「ジェーヌ」という発音になり、これが英語になって「ジーン」という表現になりました。
英語では、靴下は「ソックス」、靴は「シューズ」というように、二本の足を通すもの=複数形の「S」がつく、という慣習があり、「ジーン」のズボンが「ジーンズ」になった、という次第です。
元々は、ゴールドラッシュで盛り上がっていた北米の鉱山で働く炭鉱夫たちの作業着だったそうです。
炭鉱夫たちの労働の中で、作業中にすぐにズボンが擦り切れて、破れてしまうのが悩みでした。
そこで、既に設立されていた「リーバイス社」が、破れないような厚手の生地と、擦り切れてポケット部分が取れないように、金属のリベットでポケットの両端を補強した仕事用ズボンを発売し、好評を博します。
炭鉱で働く中で、蛇や虫除けのためにインディゴ染料でズボンを青く染めた、というのが青い色の始まりです。
天然のインディゴにはピレスロイドという防虫成分が含まれており、虫や蛇が嫌うニオイだと言われています。
(現在の殺虫剤にも、合成ピレスロイド系薬剤が使用されています)
それからは、カジュアルなファッションとして普及していきました。
1950年代では、映画でマーロン・ブランドやジェームズ・ディーンが「格好良い不良」を演じ、その時にジーンズを着こなしていたので「反抗的な若者の象徴」として見なされ、アメリカでは私服の学校でジーンズの着用を禁止したりしたそうです。
そういえば、日本の昔の映画でも、ノースリーブのジージャン(デニム地のジャンパー)を着ている不良キャラをよく見かけたような気がします。
ちなみに、ジーンズには、小さいポケットがついていますが、これは懐中時計を入れるために付けられたものだったそうです。
今では懐中時計なんて持ち歩いている人はいないでしょうから、この「ウォッチポケット」は、小銭を入れる「コインポケット」と呼ばれています。
1970年代の日本では、ファッションとして若い女性もジーンズを履くようになりましたが、「アメリカの作業着は女性に似つかわしくない」という講師によって、ジーンズを履いた女子大生を教室から退室させ、論争になった、という事件もあったそうです。
「ジーパン」と聞くと、ドラマ「太陽にほえろ!」で、松田優作が演じた通称・ジーパン刑事が悪党に銃で撃たれて、出血した自分の血を見ながら「なんじゃこりゃあ~!」と絶命していく殉職シーンが真っ先に思い浮かぶんですが、これは世代の差でしょうかね……。




