日傘と雨傘、どっちが古い?
雨が降る日に、「穴が空いた傘」なんて差したい人は、いないでしょうけれど……。
宮内庁御用達、天皇・皇后両陛下が園遊会で使う傘は、意図的に穴が空けてあります。
軽くて丈夫なグラスファイバー製で、1本8000円以上するビニール傘「縁結」。
中央部付近に開けられている折り返しつきの穴は、向かい風の強風の時に負担を感じたり、傘自体が強い風で壊れたりしないように、風が抜ける仕組みとなっています。
内側からの風の抵抗だけが抜け、もちろん、外側からの雨は防ぐようにちゃんと工夫してあるとのこと。
さて、今回は「傘」の話。
傘を意味する英語の「umbrella」の語源は、ラテン語の「umbella」で、「日よけ」という意味。
英語では、「parasol」も「傘」の意味で、一般的には「日傘」がパラソル、「雨傘」は「アンブレラ」と使い分けがされているようですが(ビーチパラソルはあれど、ビーチアンブレラなどは無いですし)、元を辿れば同一。「傘」の歴史は「雨傘」ではなく「日傘」がスタートでした。
紀元前600年、古代のエジプトやアッシリアでは日傘自体が“権力の象徴”とされており、屋外にいる王様に、側近の者が日傘を差している壁画が幾つも見つかっています。
「日傘」に動物の骨や皮を使っていた時代では、「傘」自体がかなりの贅沢品でした。
「雨傘」として使われるようになったのは、18世紀に入ってから。
イギリスなどでは、男性は帽子とコートで雨を防ぎ、女性は雨傘で雨を防ぐ、というのが文化として根付いていて、男性が雨具として傘を使うと、変人扱いされて笑われた時代もあったそうです。
女性の持ち物だった「雨傘」を、旅行中の商人だったジョーナス・ハンウェイが男性ながらロンドンで使用しました。
しかも独自に防水加工まで施して使ったので、これは便利だと男性の間にも普及していきます。
そして男性が雨傘を差す姿も、見慣れたものとなっていたそうで……さすがは雨と霧の町、ロンドン。
ちなみに、「ビニール傘」というのは、日本の発明品。
昭和二十年台、傘の雨漏りや色落ちに悩まされていた商店の社長が、進駐軍が持ち込んだ「ビニール製のカバー」を傘につけることを考えます。
傘を守るための、傘専用のビニールの耐水カバー。これが飛ぶように売れたのだそうです。
そして昭和三十年代に入り、「この耐水カバー自体を、骨に張って、傘にしたらどうかな」と大胆な発想で、ビニール傘が誕生しました。
発売当初は、安く見られて「カバー素材をそのまま傘にしてどうする」「このビニール傘屋風情め!」と蔑まれたこともあり、小売店や傘売り場で見向きもされないスタートでした。
少しずつ味方を増やしながら、地道に販売を続け、1964年の東京オリンピックで「ビニール傘」に外国人のバイヤーが目をつけ、一気に世界に広まったそうです。




