お湯が早く凍るムペンバ効果
同じ量の、お湯と、水があったとします。
両方を冷凍庫に入れます。
どちらが早く凍るでしょうか?
「何バカなことを聞いてんの、そりゃ、温度が高いお湯よりも、水の方が早く凍るに決まってるでしょ」
と思っていた皆さん、ちょっと耳を貸して下さい……。
1983年のこと。
タンザニアの13歳の少年、中学生のエラスト・ムペンバ君が、学校の授業でアイスクリームを作っていました。
他の生徒は、砂糖やミルクなどの原料を冷やしてからアイスクリームの攪拌機に入れていましたが、ムペンバ君はうっかり、熱いままのアイスクリームの原料を攪拌機に入れてしまったのです。
ところが、なんと彼のアイスクリームの方が、他の生徒より早く凍ったのでした。
この不可解な現象を再現するため、沸騰したお湯と、ぬるま湯のふたつを用意し、どちらが先に凍るか実験しました。
なんと、沸騰したお湯の方が早く凍ったのを確認したと言います。
この発見は大学教授に注目され、検証した結果、正式に発表されたそうですが。
条件が非常に限られており、他の人が再現しようとしても、同じ結果にならないことが多かったそうです。
「熱力学の基本法則からあり得ない」と頭から批判する識者もいる一方で、「条件によっては発生し得る可能性もある」と肯定的な意見の研究者もおり、専門家の中でも意見が割れているのだとか。
「○○効果」という名称は適切ではない、という声もあり、「ムペンバ効果」ではなく「ムペンバ現象」(温度に差がある二つの水を冷却した時、特定の条件下において温度の高い水の方が先に凍る、湯と水凍結逆転現象)の方が適切だと「日本氷雪学会」は見解を示しています。
2020年には物理学者のアビナッシュ・クマールとジョン・ベックホーファーの研究により「ムペンバ効果が実証された」と科学雑誌で発表しています。
別の科学雑誌では、この「ムペンバ現象」が確認しやすい条件として、35℃のぬるま湯と、5℃の水で比較実験を行うことを推奨しているそうです。
「ムペンバ効果」の分かりやすい例としては、極寒の冬期の北海道の屋外で、鍋に入ったアツアツのお湯を空中にぶちまけると、一瞬で「白い雲(極小の氷の粒)」に変わるという動画が有名です。
お湯ではなく、水でやろうとしても、同じにはならないそうで。
当たり前だと思っていた常識を一度疑ってみよう、という例でした。




