「ナイキ」のシュッとした線
前回、「仏の顔も三度まで」という話をしたので、今回も「顔」つながりで。
アウトドアのグッズやファッションなどで世界的に有名なブランド、アメリカのノースカロライナ州に本社を置く「|The North Face」。
1966年、ダグラスとスージーというハイキング愛好家の夫婦が、わずか数千ドルの貯金で登山用の商品を扱うショップをオープンしたのが始まりでした。
登山用具の販売として出発したブランドですが、デザインと機能性の両面でも人気を兼ね備えており、私個人も持っているお気に入りのウェアやバッグなどがあったりします。
その界隈に詳しくない友人が「ノース・フェイスってどういう意味? 北の顔って? この虹みたいなマークは何?」と聞いてきました。
確かに、単純に「顔」と翻訳した場合、意味が通じないかもしれません。
「The North Face」は、北半球の山岳地帯で、登山をする際に過酷なルートとされる山の北側部分にちなんで名付けられました。
そんなルートでも果敢にチャレンジしていくというスピリッツが、同社の命名に込められたのだそうです。
山の北側部分で有名なのは、スイスのアイガー北壁。
クリント・イーストウッド主演の1975年の映画「アイガー・サンクション」では、実際のアイガー北壁で、CG合成やスタントマンなしにクリント・イーストウッド自身が挑んだシーンが見られます。命がけであんな絶壁、見ていてヒヤヒヤしますが……。
「The North Face」のロゴマークには、友人の言うとおり、虹みたいな三本のラインがあります。
これは、世界三大北壁である、スイスのアイガー北壁、マッターホルン北壁、フランスのグランジョラス北壁の三つを意味しているそうで、ラインの形状はアメリカのカリフォルニア州にあるヨセミテ国立公園のシンボル「ハーフドーム」をモチーフにデザインされたものです。虹じゃなくてドームなんですね。
ブランドのロゴマークといえば、「ナイキ」のシュッとしたあのマークを思い出しました。
「NIKE」は、ギリシャ神話に登場する勝利の女神「ニケ」を読み替えたことが命名の由来。
女神ニケは、背中に鳥の翼を生やした有翼の女性として描かれることが多いです。古代ギリシャ彫刻「サモトラケのニケ」が有名ですね。
あのマーク(スウッシュと呼ぶそうです)は、ニケの翼をイメージしたそうです。
デザインしたのは、当時デザイン学校に在籍した女子学生で、その報酬はたったの35ドル。
その後、「ナイキ」が大企業に成長した際には、彼女に同社の株券を贈ったという話。いいエピソードだ。




