車の「助手席」はなんで「助手」?
普通自動車で高速道路に乗り、時速100キロ以上の速度を出すと、
……キンコン、キンコン、キンコン……
と鉄琴を鳴らしたような独特の機械式チャイムが聞こえたよな?と知っている方は間違いなく年配の方。
「パパ、スピード出しすぎだよー、キンコンチャイムがうるさいよー」
「すまんすまん、ちょっと速度を落とすよ。安全運転が一番だからな」
このチャイムをきっかけに家族たちは、ハンドルを握るお父さんに注意したとかしないとか。
1980年代の後半製造分までの日本車には、スピードを出しすぎるのを防ぐために、一定の速度以上になると 「速度警告音」が鳴るシステムが標準装備されていました(法律によって義務づけられていました)。
1986年にこの法律は撤廃されます。
日本車の性能が評価され、海外へ輸出されるようになると、一番の買い手であったアメリカからこの「速度警告音システム」に対して不満の声が出たからだそうです。
これを装備することでコストが上がるからですね。
また、日本国内でも、「単調な警告音の繰り返しは、眠気を誘う」という意見があったと言われています。
速度を出しすぎている人間に対して、睡眠誘発の配慮……謎の心配ではありますが、まあ、自分が高速道路を走っていたとして、周りでビュンビュン飛ばすドライバーに居眠り運転でもされたら、交通事故に巻き込まれる確率が跳ね上がるってもんです。怖い。
交通事故を起こした時に、運転席よりも助手席の方が死亡率が高い、なんて統計もあるそうです。
さて、この「助手席」という言葉。
特に「助ける」わけでもないのに、なぜ「助手」なんでしょうか?
この「助手席」という言葉は、大正時代にタクシー業界から生まれた言葉だとされています。
大正時代は、タクシーはアメリカの輸入車が使われていることが多く、日本人にはサイズが大きくて、段差も高くて乗り降りに苦労したそうです。まだ着物を着ている人が当たり前だった頃の話で、着物の裾を大きく広げて足を持ち上げ……なんて不格好なことをさせないためにも、乗り降りを手伝う「助手」が同乗していたのだとか。
英語だと、「助手席」も「後部座席」も全部ひっくるめて、「パッセンジャーシート(搭乗者席)」ですけどね。「運転席」以外は全部同じ。
「助手席」という呼び方は、日本独自のものなのです。
長距離ドライブだと、助手席に誰かいて、話し相手になってくれたり、カーナビを運転手の代わりに操作してくれると、眠気や注意力の面で、運転手にとっては非常に心強いですし、ありがたいです。
そういった意味では、現代でも「助手」的役割は残っているのかもしれませんね。




