「エポニム」という概念
前回、「ギロチン」について取り上げましたが、人名由来で道具や事象に命名されることを「エポニム」というそうです。
サンドイッチ伯爵が「賭博を中断したくないから、片手で食べられる手軽な食事を」とパンの間に食材を挟んで食べ始めたから、その料理を「サンドイッチ」と呼ぶようになった、というのが有名ですね。
イギリスのカーディガン伯爵が、セーターを前でボタンを留められるようにして、防寒のために重ね着をしたことから「カーディガン」だとか。
経費節減のために肖像画を黒一色の影絵で描かせた貴族、エティエンヌ・デ・シルエットから影絵が「シルエット」と呼ばれるようになったとか。
犬の種類「ドーベルマン」も、ドイツのフリードリヒ・ルイス・ドーベルマン氏が優秀な警備犬の必要性から品種改良で生み出したから、だとか。
「ボイコット」というのはイギリスの軍人、チャールズ・ボイコット大尉が名前の由来ですが、ボイコット氏は「排斥する側」ではなく、圧政を強いたため民衆から「排斥される側」だったのに、その名前が残っているというのが少し面白いです。
ギリシャ神話からも「アキレス腱」などが知られています。
意外なところでは、台所の必需品「包丁」なんかもそうです。
古代の中国、魏の恵王の御前で、牛一頭を素早く解体して、見事な刃物捌きを見せ、王を感銘させたという料理人がいました。
この時の料理人の名前から、使用した調理刀を、のちに「包丁」と呼ぶようになったといいます。
いつか、「エポニム」しばりで雑学エッセイを書いてみるのも、面白いかもしれませんね。
日常の中には、人名由来の名前の物が、きっとまだまだあります。
「名前」で思い出しましたが、傷だらけの顔、頭にはネジ、容貌魁偉な大男……モンスター映画にも登場する「フランケンシュタイン」という名前が有名ですが、メアリー・シェリーの原作によれば、「ヴィクター・フランケンシュタイン博士が作り出した、名無しの怪物」というのが正しいようで。
「フランケンシュタイン」というのは、作った博士の名前なんですね。
怪物自体に「名前はない」のが正解で、「名無しの怪物」らしいです。
藤子不二雄の「怪物くん」に出てくる「フランケン」などで、誤解が広まったのでは?と個人的には思っています。別に藤子先生を責めてるわけではないんですけど。