シミュラクラ現象について
ちょっとした実験を。
手書きで、「一品」って紙に書きます。「天下一品」の「一品」。
横書きではなく、縦に書いてください。
書き終わったら、ぐるんと上下を逆にしてみてください。
……顔に見えませんか?
四角い部分が「目」と「鼻」、横棒が「口」。
分割すると、単なる記号にすぎないのに、なんとなくそこに「顔」を見い出してしまう。
建物でも、外壁に窓が二つ横に並んでいて、その下にシャッターがあったりすると「ロボットの顔だ」なんて、小学校の時はそんなことを言って笑っていたような気もします。
もっと単純に、黒い丸をふたつ横に並べて描いて、その下にもうひとつ黒い丸を描くと、ハニワっぽい顔の出来上がりです。
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(↑ちゃんと表示できてるかな……?)
図形を「顔」として認識する、脳の働きのことを「シミュラクラ現象」と呼びます。
「シミュラクラ」とは、「シミュラクラム」の複数形。「シミュラクラム」とは、ラテン語で「似ている物」を意味する言葉です。
原始時代から、人は他者に出会った時、相手の行動や感情を読み取り、予測してきました。
目を見て、「この人は味方」「この人はよく分からない、敵かもしれない」と本能的に察知し、危機回避能力に役立てて来たのです。
なので、三つの点の図形でも無意識に「人の顔」を認識する、と遺伝子レベルでプログラムされているのだそうです。
また、「顔」だけではなく、空に浮かぶ雲が動物の形に見えたり、木の幹が人の形に見えたりすることを「パレイドリア」と言います。
似ている別の何かに見える、という現象全般が「パレイドリア」であり、「顔」に限定した「シミュラクラ現象」は、「パレイドリア」の中の一例と言えます。
1992年、日本テレビでは「大相似形テレビ」というバラエティ番組を放送していました。
似ている有名人同士や、モノに似ている顔、顔に似ているモノなど、「似ていること」を取り上げて紹介する番組でしたが……わずか10回という短命で放送終了しました。
いやはや、着眼点の目新しさや企画の珍しさは面白いけれど、こういう実験的な番組は、毎週レギュラーでやる内容では無いと思いますよね。
ちなみに、「煙の影などが人の顔に見える」などの「心霊写真」のほとんどは、この「シミュラクラ現象」で説明できる、と言われています。
「どうしても、天井のシミが人の顔に見えて不気味なんだ……」とお悩みの人は、シミュラクラ現象のことを思い出して「人間の本能なら仕方ないか」と自分を納得させるのもいいかもしれません。




