「ちちんぷいぷい」は何の音?
幼い子供の頃、走っていて転んだりすると、泣き始める前に
「あー痛くない痛くない、ちちんぷいぷい、痛いの痛いの飛んで行けー」
などと、大人が「痛みが消えるおまじない」を唱えて、赤くなったヒザをさすってくれると、なんとなく痛みもやわらいだような……そんな経験がある人、多いのでは。
神経の中でも「痛みが伝わる回路」に、別の新しい刺激を与えると、最初の痛みの伝達が抑制される、という医学的に根拠のある対処法だとされています。
(ゲートコントロール学説と呼ぶそうです)
さて、この「ちちんぷいぷい」というおまじない、なにやら不思議な響きですが、この由来には諸説あります。
江戸時代には、男の赤ん坊をあやすときに「智仁武勇は御世の御宝」と言い聞かせたという記録があり、その「智仁武勇」が変化して「ちちんぷいぷい」になった、という説。
「ちちんぷいぷい」に続きがあった、というのが面白いですね。
子供の頃に泣き虫だった徳川三代将軍・徳川家光を、乳母であった春日局がこの言葉であやした、という俗説もあるとか。
もうひとつは、茨城県ひたちなか市に伝わる「千々乱風伝説」から。
長期間の暴風雨で集落が砂に埋もれてしまい、辺りの景色を一変させてしまう異常気象から、「おまじない」の名称として残り、「ちぢらんぷう」が「ちちんぷいぷい」に変化した、という説。
最後に紹介するのは、「ちちんぷいぷい」は「おならの音」という説です。
「屁こき爺」という昔話のあらすじを紹介します。
「あんたには何も自慢するものがないだろう」と馬鹿にされたお爺さんが「わしは自由自在におならが出せる。日本一の屁こき爺だ」と出まかせを言ってしまいます。
その噂が広まって殿様の耳に入り、「目の前で披露してみせよ」と呼び出されました。
元々は咄嗟に言ってしまった出まかせですし、偉い殿様の前では緊張して、おならが出そうもありません。
それでもなんとか必死に頑張って、様々な音色のおならを出して、その中でもっとも見事なのは「ちちんぷいぷい」という音色のおならだった、というもの。
笑って喜んでくれた殿様は、お爺さんに褒美をくれました。
そこから、「ちちんぷいぷい」は「良いことを招くおまじない」の言葉として残った、という説なのですが……。
ふと冷静に考えると、「ちちんぷいぷい」と聞こえるようなおならって、どんなん?
前回の「へっぴり腰の「へっぴり」って何?」から続けて読んでくれた方には、容易に想像できると思いますが、「おなら」からの連想で今回のエッセイの内容を思いつきました。
どの説を信じるか(あるいは信じないか)は、読んで頂いたあなた次第なのですが、どれもこれも「屁理屈」だなんて言わないで!




