「ラピュタ」とガリバー旅行記
先日、地上波の「金曜ロードショー」で、ジブリアニメ「天空の城ラピュタ」を放送していました。
何回も見ている気がするなあ、「バルス!」で実況サーバーが落ちたのは記憶にあるんだが……と調べてみると、もう20回近くも地上波で放送しているんですね。
この「空に浮かぶ都市・ラピュタ」に元ネタがあるのを御存知でしょうか?
それが、18世紀にアイルランドの作家、ジョナサン・スウィフトが発表した『ガリバー旅行記』です。
『ガリバー旅行記』というと、小人の国に流れ着いたガリバーが、起きたら小人たちに縛られているシーンが有名ですが、あれは第一章からの引用。
実は、『ガリバー旅行記』は全部で四章仕立てになっています。
海に出たガリバーは、船が難破して、ある島に辿り着きます。
そこは小人の国・リリパット国。これが第一章の話。
このあたりは、見栄えがするので児童向け絵本などにもなっていますし、映画化される中でもよく使われます。
第二章は、今度は巨人の国・ブロブディンナグにガリバーが辿り着き、小人の国とは逆の扱いを受けて「周りが巨人で、自分だけが小人」な環境に置かれます。
第三章は、再び航海に出たガリバーが、浮遊するラピュータの科学者たちと出会います。
磁力で操作され、空に浮いている飛行島ラピュータの都市では、おかしな発明をしていたり、不死の薬も完成させていますが、不老ではないので偏屈な性格になっている人間たちもいたり。
他にも第三章の中ではいくつもの国を巡る短いセンテンスがあり、日本にも寄っています。
隠れキリシタンを見つけるために、キリストの絵を踏ませる「踏み絵」を強制している頃の長崎のお話です。
(『ガリバー旅行記』の中では、いくつもの国が登場しますが、ガリバーの訪れた旅行先で実在する国は、当時鎖国中だった日本だけです)
第四章は、知性を持って言葉を話す馬・フウイヌムの一族と、野蛮な猿の獣・ヤフーの国。
ここでガリバーは「馬」を主人として、飼われることになります。
高貴で落ち着いたフウイヌムたちの思考や生き方に感銘を受け、
「自分は、愚かなヤフーの側にすぎない。知的なフウイヌムになりたい」
と強い影響を受けます。
旅から帰ってきて、家に戻っても人間社会になじめず、引きこもりみたいになってしまう……という、ある種のバッドエンド?
第三章で登場した「浮遊する島」の名前が「ラピュータ」であり、宮崎駿監督はそこからのインスピレーションで舞台設定やネーミングを思いついたようです。
ただ……実は『ガリバー旅行記』の原作小説というのは、社会風刺や倫理・哲学、その他もろもろの事情で「これを子供に読ませるには、ちょっと……」という内容となっています。
国の検閲を受けた際に「これでは〇〇国のことを書いているようではないか」と削除された部分もあるのだとか。
人間というものに対する批判的で斜めな視点や、負の側面を誇張して描かれており、スウィフトの皮肉で意地悪な見方が窺えます。
SF空想小説としては、ユニークで面白いんですけど。
そうそう、「ラピュータ」という原作の浮遊する島のネーミングも、スペイン語で「売春婦」を意味する「ラ・ピュタ」からとったそうですよ。
(そのせいか、宮崎アニメの海外版タイトルは変更されています)
第四章で登場する、野蛮な猿「ヤフー」の名前は、アメリカのIT企業「Yahoo!」の名前の由来となったとされています(自虐的な意味を込めて創業者がつけたそうです)。




