ゆびきりげんまんの怖さ
「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本のーます! 指切った!」
小さい頃、子供同士の約束として、互いに小指を絡めてこんなことを言っていました。
なにげない言葉ですが、実は怖い由来が潜んでいます。
「指切り」というのは、そもそも江戸時代、吉原遊郭の遊女の間で流行した行為でした。
遊女が、お客の中で惚れた意中の相手に、自分の小指の第一関節から先を切断して渡した、という儀式があったそうです。
髪の毛や爪と違い、指は切ったら二度と生えてきません。
これにより「ずっと変わらない愛情」の覚悟の強さを示したと言われています。
受け取った側からすると、「アイツ、そんなに俺のことが好きなのかい」と自慢できるステータス、らしいのですが……。
正直言って、もらった側、怖くない? 指だよ指。
あげる側も、両手の小指を使ったとしても人生で二回しか愛の告白できないの!?
まあ、おっかない話ですけど、当時はそういうのが流行した、ということで。
それから「ゆびきり」は「愛情の強さ」ではなく「信頼や責任の深さ」に変化し、「責任を取らせる」意味合いになっていきます。
ヤ○ザ業界のケジメでも、指を切断、などありますが……。
そして「ゆびきりげんまん」の「げんまん」は、漢字で書くと「拳万」。
ゲンコツ一万回、の略だそうです。
一万発殴る、って結構すごいことだよなあ……一方的に負けたボクシングの試合だって、多分千発も殴られてないでしょ。
連続してボッコボコにするには、殴る側も手を痛めそうだから、十人くらいでローテーションを組んで、ひとり十発ずつ殴って休憩を挟みつつ殴るとしたって、一万発殴るためには百サイクル回さないとだし。
そんだけリンチすりゃ、多分、途中で死んじゃうんじゃないかなあ……。一万発、ずーっと数えるだけでも面倒くさそう。
「針千本飲ます」のだって、かなり大変そうだよ?
一度に千本飲ますのは口の大きさや喉の太さから考えて無理だから、十本くらいずつ小分けにして、喉を傷つけないようにジェル状の「おくすりのめたね」とかで包んで飲ませる手順を百回繰り返すとしても、相当な手間がかかる。
嘘をついたからって、いちいちそんなマフィアの報復みたいなことやってたら、多分地球上の人口が激減しますって。
つまり、子供同士で無邪気にしている約束「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます! 指切った!」というのは、こうなります。
「もしも嘘をついたら、自分の指を切断していいし、ゲンコツで一万発殴られていいし針を千本飲まされてもいい!」
という覚悟で、壮絶な契約をしているのだと。
客観的に考えてみたら、ちょっとイヤですねえ。




