スノッブとバンドワゴン
商店街の中で、一軒の手作り弁当屋さんがあったとします。
これを書いている人間にちなんで「雲条商店街」の「うんじょうや」という名前だったとしましょう。
「うんじょうや」では、期間限定・数量限定で
「カロリー爆上げ!マヨネーズからあげ大盛り弁当」
を新たに販売しました。
(例え話なので、同名の弁当が実在したとしても、一切関係ありません)
これは美味しい、とお客さんに大人気。
カロリーだけではなく、そのメニューのおかげで売り上げも爆上げです。
客層に、太った体型の人が増えましたが、それはそれとして。
最初から「限定」と銘打ってスタートしたので、一定期間が終わったらメニューも終了させるつもりでいたのですが、あまりの人気ぶりに、
「やめるのをやめます! レギュラーメニューに加えることにしました! 数量限定もやめます! ずーっと、いくらでも食べてね! これからもこの弁当をよろしく!」
と、変更したのです。
その方がお客さんも喜んでくれる、と店主が考えたからです。
ところが、そうしてから……売り上げが下がってしまいました。
人には、「限定」という言葉に惹かれる心理現象があります。
この期間限定・数量限定だけではなく、この「カロリー爆上げ!マユネーズからあげ大盛り弁当」は町の手作り弁当屋、つまり「全国チェーンの店でどこでも食べられる」のではなく「ここに来ないと買うことが出来ない」、「地域限定」要素もあったと言えます。
「期間限定」という時間の縛り、「数量限定」という販売数の縛り、「地域限定」という販路の縛り。
それがあったから、買う難易度が上がり、購入できた時には「他の人が買えなかったものを、自分だけ買うことが出来た」という喜びに繋がるでしょう。
アメリカの経済学者、ハーヴェイ・ライベンシュタイン氏が発表した、心理学で「スノッブ効果」といいます。
「スノッブ効果」は「他の人が持っていないものが欲しくなる」心理で、「値段が高く品薄なブランド品」など希少性に惹かれるのも、これに含まれます。
プレミアムな商品に、なんとなく惹かれてしまう気持ち。
「残りわずかです! 買うならお早めに!」とか煽られると、「なくなる前に買わなきゃ!」と焦る感覚。
分かる気がします。
「他の人が持っていないものが欲しくなる」のではなく、真逆に、「他の人が持っているものは、自分も欲しくなる」という心理も同時にあります。
そちらは「バンドワゴン効果」といいます。
流行の店に行列を作ってまで食べに行く、みんなが持っているスマホの機種は自分も揃えたくなってしまう……「流行に乗っかる」というのは、まさに「バンドワゴン効果」と言えます。
自分だけ「置いてきぼり」にされたくない!と考えてしまうのでしょうか。
人間には相反する特性があるのですねえ……矛盾をはらんだ複雑な生き物、その名は人間。




