人口がたった五人の国がある
小さい国と言えば、イタリアのローマ内にある「ヴァチカン市国」が有名です。
日本の皇居の半分ほどの面積しかない小さい国で、サン・ピエトロ大聖堂の高い位置からヴァチカン市国すべてが一望できると言われています。
ひとつの国の、国土すべてが肉眼で見える、ってあまりないですよね。
ですが、もっと小さい国があります。
そこは、オーストラリアのシドニー郊外、モスマン市に存在します。
時は、2004年のこと。
ポール・デルプラットという男性がいました。
彼の家の前まで繋がる舗装道路がなく、ポールは市役所に「市の方でなんとかしてほしい」と申請をしたそうです。
ところが、行政のミスが重なり、申請が却下され、モスマン市で「道路を敷設する」という対応ができませんでした。
この事態に、ポールは「なにをやってるんだ!」と激怒。
彼はオーストラリアからの独立を決意し、「ワイ公国」という国を立ち上げました。
ポールの「行政に対する怒りの意志の表明」だったこの行動ですが、モスマン市に独立を宣言すると、なんと市長から許可されて、申請が受理されてしまったのです。
国民は、ポールと、彼の妻、三人の子供たち。計五人。国土は、家の敷地だけ。
元々、芸術学校の経営者であったポール氏は、国旗や国歌まで作ったといいます。
個人で国を作り上げてしまう……というと、個人的には子供の頃に読んだ、星新一の『マイ国家』という話を思い出します。
サラリーマンが営業で個人の家に飛び込むのですが、そこの家の主が「この家は俺の国であり、お前は他国に侵入してきたのだ」と主張してきて、監禁されてしまう……こちらの理屈がまるで通じないヤツを相手に必死に説得する絶望感が、妙に怖かった記憶があります。