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85 覚醒

 考え込んでしまっているガンツを放置して、俺たちはそっと工房をあとにする。


 俺はシロとメアリーを連れ、そのままデレクへと転移した。


 そう、出てきたのは温泉施設である。叙爵(じょしゃく)のゴタゴタで中断していたマリアベルの指導を再開するためだ。


 そこで待機して (遊んで) いたマリアベルとお付きのメイドさん達、それに一緒に遊んでいた子ぐま姉弟にも集まってもらった。


 「ナツまでダンジョンに入って、仕事の方は大丈夫なのか?」


 「これも仕事の内だから問題ないわ。それに今日の予約はマリアベル様一行だけだから」


 ええっ――? と思いはしたが、すでに従業員 (熊人族) も2人(やと)っているし、仕事がまわっているのなら問題はないのか……。






 早速、みんなで10階層へ移転する。


 冒険者ギルドとの()ね合いもあり、他の冒険者と出合わないように進まないといけないのだが。


 デレクに調べてもらったところ、5階層に到達している冒険者もまだいないらしい。


 だよねぇ。10階層ともなればトップクラスの冒険者パーティーでも一年は掛かっちゃうからね。


 地図がない手探りの現状ではとくに……。


 まあ、そうでなくても俺やシロが居るかぎり人と出会うことは有り得ないのだが。


 俺たちはフォーメーションを組んで10階層を攻略中である。


 久しぶりのダンジョンだから、みんなテンションが高く楽しそうだよな。


 もちろんマリアベルもはりきっている。今のステータスがこちら、



 マリアベル・クルーガー Lv.6


 年齢     3

 状態    通常

 HP   22/22

 MP   62/44 +20

 筋力    11

 防御     9

 魔防    18

 敏捷    11

 器用     9

 知力    19


【特殊スキル】  時空間魔法(U)

【スキル】    魔法適性(光・風・水・雷・土) 魔力操作(4)

【魔法】     光魔法(1) 風魔法(3) 雷魔法(2)

【称号】     王の3女、転生者、

【加護】     ユカリーナ・サーメクス



 どう考えてもステータスの伸び方がおかしいよね。とくに魔法関係。


 メアリーと比べても成長が早いって……どうなの?


 女神さまから授かる加護にも違いがあったりするのだろうか?


 いや、転生者(・・・)だからかもしれないな。


 このまま伸ばしてもいいのだろうか? ――まだ3歳だぞ。


 MPリングを付けたことで、かなり自由に魔法を放つことが出来るようになった。


 もう、その辺の魔法士なみだ。


 新たに雷魔法も覚えているんだよな。


 最近はマリアベルと一緒にシロまでデビルアローを放っているし。


 威力(いりょく)()えるとパラライズのように使えるんだよね。


 敵を麻痺(まひ)させることができるから、対人戦でも重宝(ちょうほう)しそうだ。


 そして最終奥義(さいしゅうおうぎ)は全身を使って熱光線を撃つ【デビルビーム】だよな。


 これは光魔法なるのか、火魔法になるのか、しばし研究が必要だろう。


 【かめはめ波】とどっちが強いのか気になるところではあるな。


 フフフッ♪ 俺もそのうち使ってみようかな。






 しかし、ものすごい勢いで進んでいきますなぁ。


 このままでは……、


 ――ですよね~。


 みんなが止まっているのは鉄の大扉の前だ。


 なんで俺を見てるの? 無理に決まってるでしょーが。


 わかるでしょう。マリアベルは3歳児だよ。


 「…………」


 「…………」


 はぁ――――っ、


 一応、いつも近くで見ているシロに聞いてみますかね。


 「やっぱり無理だよねぇ。危ないよな」


 シロを()でながら(たず)ねてみると、


 『いける、かみなり、むてき、あそぶ、やる、てんい』


 つまり、雷魔法と時空間(じくうかん)魔法があるから無敵だとおっしゃっているようです。


 う~ん、どうする?


 チラリとマリアベルの方を見ると、魔法ステッキをブンブン振りまわしてアピールしている。


 ――つもりらしい。可愛い。


 それに今日はお付きメイドさんも2名同行しているんだよなぁ。






 まあ、防御結界の付与(ふよ)もあるし行けるかな。


 ダメなら俺が手を出して即刻中止することもできるしな。


 よし、いったれ! いったれ!


 ………………


 結局、挑戦させてみることにした。


 綿密(めんみつ)なブリーフィングのあと、マリアベルとお付きメイドさん2名は鉄扉の前に立った。


 扉が奥へ開いていき3人がボス部屋の中へと進んでいく。


 もちろん俺も後ろから付いていく。


 入口の扉が閉まると同時に動き出したのはゴブリンライダー。


 半数の5()がこちらへ突っ込んでくる。


 前衛を務めるお付きメイドの一人は槍を、横に並ぶもう一人はレイピアを装備している。


 今日見てきた感じではそれなりに戦えるようだが。


 すると前を警戒ていたメイドが後ろに下がり、横一線マリアベルの両脇(りょうわき)についた。


 ゴブリンライダー共は脇目も振らず猛然(もうぜん)と突っ込んでくる。


 その距離15m程か。


 マリアベルは魔法ステッキを前に突き出すとエアハンマーを無詠唱(むえいしょう)で叩き込んだ。


 ──ドウォォンッ!


 空気を揺らす音と共に四散(しさん)していくゴブリンとブラックウルフ。


 (ほほう、見事にふっ飛んでいくなぁ)


 床に叩きつけられた奴らは次々に魔石へと変わっていく。


 エアハンマーをカウンターで喰らったのだ当然の結果だろう。






 それを目にしていた残りのゴブリンライダー。


 今度は散開(さんかい)しながら迫ってきた。


 しかし、それらもマリアベルが放つデビルアロー (パラライズ) によって動きを封じられ各個撃破(かっこげきは)されていく。


 そう時間もかからずしてボス戦になった。


 (……が、早っ!)


 ――終わってしまった。


 まぁそうよね。瞬間移動(しゅんかんいどう)があるからね……。


 つまりだ、


 お付きのメイドたちがゴブリンキングの正面に立って対峙(たいじ)している間に、小さいマリアベルはヤツの後方へ瞬間移動。


 ()っといデビルカッター (ウインドカッター) を放ち、ヤツの首と胴体を輪切りにしてしまった。


 ……と、そういうことだ。


 (ほんと一瞬だったよ。魔法って(すご)いよねぇ)


 戦い終わったマリアベルがこちらに駆けよってくる。


 「やったなぁマリアベル。かっこいいぞー!」


 俺は両手を広げマリアベルを(むか)え入れると、そのまま抱き上げた。


 こんな小さい()一端(いっぱし)の冒険者でも手こずるようなモンスターを倒したんだよな。


 ――本当に凄いよ。


 ボス部屋を出た俺とマリアベルはそのまま転移台座へと進み、ポヤンと光っている(ぎょく)に手を置き、ボス討伐(とうばつ)を記録させた。


 振り返ると、周りからは惜しみない拍手(はくしゅ)が送られている。


 俺に抱っこされているマリアベルは、ニコニコしながらみんなに手を振って応えていた。






 さて、まだ昼前だけど今日はここまでで良いだろう。


 みんなを連れて温泉施設へ移動、昼食をとる。


 お祝いに、この前倒したドラゴンの肉をおうばんぶるまい!


 肉に塩胡椒(しおこしょう)をして焼き、みんなで美味しく食べた。


 そして、子供たちはお昼寝だな。


 今は静かなものである。


 他に何かご褒美をと考えた俺は……。


 今日がんばったマリアベルのため、露天風呂の(わき)あるもの(・・・・)を制作した。


 ――滑り台(すべりだい)である。


 高さは2.5mで傾斜(けいしゃ)は緩めにし、子供用の浅めのプールへドボン! 


 しかし、滑り台にはお湯が流れるように作ったので意外とスピードが乗るのだ。


 (これなら大人でも楽しめそうだな)


 すると子供たちがぽつぽつ起き出してきた。


 俺が滑り台について説明すると、みんなは目を輝かせている。


 あ――――っ! ダメダメ。遊ぶのは身体を洗ってからだよ。


 一人また一人と洗い上げて送り出していく。


 一応、滑り方のレクチャーもおこなった後、一人ずつ滑ってもらった。


 うん問題ないみたいだな。


 ただし、大人が見てない時はダメだと強く言っておいた。


 下が小さな温水プールになっているのだ。


 子供って遊びに夢中になると本当に怖いからね。


 キャッキャ言いながらみんなで何回も滑っている。


 出口ではメイドさんが待ち構え、(おぼ)れることがないようにアシストしてくれている。


 ――全裸で。


 滑り台を作ってほんとに良かったなぁ。


 そんなことを思いながら、(はた)からその光景を楽しんでいると、


 痛った――――い!(涙)


 脇腹(わきばら)激痛(げきつう)が走った。


 ナツさんである。


 怒り顔なのだがタレ目のせいか可愛い。


 だけど痛いの……。


 とりあえず、後は二人のメイドさんに任せて俺は一時撤退(てったい)である。






 そうしてナツと一緒に露天風呂へ向かっていると、


 キャ――――ッ! 


 メイドさんの悲鳴(ひめい)が聞こえてきた。


 大急ぎで滑り台のところへ戻ってみると、マリアベルとメアリーが二人して頭をおさえ(うずくま)っていた。


 どうやら滑り台の出口でゴッチンコしたようだ。


 ふぅ、やれやれ。


 俺は二人に近づくと、そっとヒールを掛けてあげた。


 メアリーはすぐに復活して、また滑り台の階段に並んでいる。


 しかしマリアベルの方はまだ蹲ったままだ。


 俺は(ひざ)を折り、


 「大丈夫か、なんなら休憩室で休んどくか?」


 そう声をかけたのだが……。


 「えっ、えっ、なに? なんで私……小さい」 


 何やら、うろたえている。


 俺はマリアベルの言葉使いが変わっていることにすぐ気がついた。


 (こいつ覚醒(かくせい)しやがったな)


 インベントリーからバスタオルを2つ取り出すとマリアベルにかけてあげた。


 そして、俺はシロとマリアベルを連れて休憩室へと向かった。


 木製カップに入ったアイスティーを二つ用意し、一つをマリアベルの前に置く。


 しばらくして声をかけた。


 「少しは落ち着いたか? 話しても大丈夫か?」


 「はい、なんとか。記憶(きおく)曖昧(あいまい)なんだけど……。どうしてですか?」


 「まず、ここは地球ではない。 夢と希望があふれるファンタジーの世界だ!」


 「はぁー、なに言ってんの。頭大丈夫? 病院に行った方がいーよ」


 「おっ、なかなか調子が出てきたな。その調子だぞ。結構(けっこう)長い話になるからなぁ」


 「さっきから何言ってるのよ。だったら早く説明しなさいよー」


 そして俺はマリアベルに、事の次第と状況を順に説明していったのである。



 

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