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81 転生者

 奥の扉が開くと、パタパタとおばちゃんがやってきてカウンターについた。


 「待たせたねぇ、依頼(いらい)は終ったのかい」 


 依頼完了のサインが入った木札を冒険者から受けとると、


 「今回はなかなか早かったじゃないか。はい報酬(ほうしゅう)だよ。お疲れさん、また頼むね」


 報酬を受け取った冒険者はカウンターを離れ出入口の方へ向かっていく。


 「これで一つ片付いたねぇ……」


 後処理だろうか、ブツブツ言いながらおばちゃんは何やら書き込んでいる。


 「はい次! おや、あんた見ない顔だねぇ。何かの依頼(いらい)かい?」 


 「俺はゲン、こっちは従魔のシロ。今日はこちらのギルマスに手紙と報告があって来ました」 


 冒険者証を見せて手紙を提出する。


 するとおばちゃんは目の前で手紙の(ふう)を切り読み始めてしまった。


 怪訝(けげん)な顔をして俺が見ていると、


 手紙を読み終わったおばちゃんは俺の視線に気づき、


 「ああ、他所(よそ)からの人だったねぇ。私はここのギルド長のミヤだよ。それで話ってのはなんだい?」


 (おおぅ、ギルマスでしたか)


 「ここから北の山脈にダンジョンがあるのはご存知ですよね。実は今、そこの開発をしていまして…………カクカク・シカジカ・マルマル…………なんですよ」


 あらかた説明した上で協力を求めた。


 ギルマスのミヤさんは俺と手紙を交互に見やって、うんうん(うなず)いている。






 すると ハッ! として何か思い出したのかミヤさんはいきなり立ち上がると、


 「あとは作業をしながら聞くことにするから、こっちこっち」 


 右手をブンブン振って手招きをしている。


 (まね)かれるままに付いていくと、そこはギルドの解体場だった。


 作業台の上にはウルフやラビットが積んであるが、依然(いぜん)として他の職員は見当たらない。


 結構(けっこう)な量があるなぁ。これを一人でやっているのか?


 不思議に思って(たず)ねてみると、


 ここの解体場で働いてる職員が昨日からギックリ腰で寝込んでいるそうだ。


 それならポーションで何とかならないのかと再度(たず)ねると……。


 ちょうど切らしているんだと!


 「明後日にならないと届かないんだよ」


 気まずそうに答えてくれた。


 「…………」


 切れる前に発注しとけよな~。


 いや、天候(てんこう)などの影響で遅れているのかもしれない。


 (それにしても、この量では……)


 現状を見かねた俺は解体を少し手伝ってあげることにした。 






 ウルフもラビットも今日あがってきた物らしく新しい。


 内臓はシロに与えてもいいかと尋ねると、どうせ処分(しょぶん)するんだから問題ないと言われた。


 「じゃあ、こっちの分は俺がやりますね」


 ウルフが積んである作業台へ向かった。


 期せずして、ご馳走(ちそう)に有りつくことができてシロも大喜びだ。


 ブンブン(せわ)しなく尻尾を振っている。


 さて、ちゃっちゃと片付けますかね。


 俺のインベントリーには解体機能が(そな)わっている。


 ウルフをインベントリーに収納、あとは解体して排出するだけの簡単なお仕事なのだ。


 8匹のウルフも30秒程で終わってしまった。


 今はお座をりしているシロの前に木の皮を()き。


 その上にウルフの内蔵を出してやってるところだ。――グロい。


 ………………


 旨そうに内臓を(たい)らげるシロ。満足げに口の周りをペロペロしている。


 (あ~あ、口の周りが真っ赤じゃん)


 浄化をかけさせ、俺はキレイになったシロに頭を()でていた。


 すると一段落(ひとだんらく)ついたのか、こちらに振り返ったミヤさんと目が合ってしまった。


 「なーに遊んでる…………、んん、もう終わったのかい? あの数を?」


 俺はゆっくり(うなず)いてやった。


 「えっ、えええっ、なんで……。それにしても見事な解体だねぇ」


 驚きながらもしっかりと確認していた。


 その後も解体は順調に進んでいき、シロの顔は再び赤く()まっていた。


 シロちゃん大満足の一人勝ち……、ではなく一匹勝ちであった。(笑)


 返信する手紙を預かり、


 「これからは忙しくなると思いますので、よろしくお(はか)らいください」 


 そう言い残し、俺とシロは冒険者ギルドをあとにした。


 ダンジョン・デレクから、ここモレスビーの町までは馬車なら3日たらずか……。


 (のんびりとしたこの町も変わっていくんだろうなぁ)


 そんなことをしみじみと思いながら、俺たちは町門をくぐり帰路(きろ)についた。






 トラベル! とダンジョン転移を併用(へいよう)して、一瞬でデレクの町に戻ってきた俺とシロ。


 お昼を食べるために温泉施設(おんせんしせつ)の横にある管理用ログハウスへ寄ることにした。


 ナツと子グマ姉弟(きょうだい)は王城でお留守番をしているので、ここには居ない。


 せっかくなので、帰る前にひとっ風呂浴びさせて頂きます!(SKEは関係ありません)


 ログハウスのキッチンを使い、ささっとスープと肉野菜炒めを作る。


 お昼を食べたあとは隣の温泉施設へ移動。


 脱衣場(だついじょう)で服を脱ぎ身体を洗った俺は露天風呂へと向かった。


 すると……、ううん? 


 シロは何をしているんだ? 他に誰か来ていたのだろうか。


 先に行ったシロが誰かに(つか)まってもふられているのだ。


 よく見てみると、マリアベル……だよな。


 「…………?」


 露天風呂ブースに居るのだが、何故か服を着たままだ。


 周りを見渡してみるが他に誰もいない。


 (また、やっちゃったのか?)


 この前みんなで来ていたからなぁ。転送陣の場所も覚えていたのだろう。


 普段(ふだん)は人が入らないように施錠(せじょう)してあるが、時空間魔法(じくうかんまほう)を使う彼女には無意味なんだよな。はぁ~。


 まぁ何事もなくて良かったが……。


 俺はデレク (ダンジョン) に頼んで王城の部屋にナツが居るかを確認した。


 続いて羊皮紙(ようひし)の切れ端に伝言を書いて、部屋のリビング机の上にクナイと共に飛ばしてもらった。


 んんっ、そういえばナツは字が読めたのかな? 


 まあ、分からなければメイドか誰かに聞くだろう。


 そのあとはマリアベルも混ぜて露天風呂を楽しむことにした。






 お風呂をあがった俺たちは、その足でこの前建てた教会(きょうかい)に来ていた。


 建てたというだけで司祭もいなければシスターもいない。まだ教会としては機能していないのだが。


 礼拝堂(れいはいどう)へ進んだ俺たちは女神像へ祈りを捧げた。


 すると周りに(かすみ)がかかり……、久しぶりに天界に呼ばれたようだ。


 いつものように(まぶ)しい光と共に女神さまが顕現(けんげん)される。


 「お久しぶりです、ユカリーナ様」


 「シロさん、高月……もう違いましたね。ゲンさんとお呼びしましょう。共に(つつが)なくお過ごしのようで嬉しく思いますよ」


 「ありがとうございます。女神さまにはいつも感謝しております。ところで今日は何かございましたか?」


 「今お連れくださっているその子についてなのです。故あっての転生者(てんせいしゃ)なのですが特に使命などはございません。この世界を自由に生きてほしいのです」


 「しかしながら、未だに目覚めていないその子は(いた)不安定(ふあんてい)な状態にあります。そこでシロさんとゲンさんに、もうしばらく(みちび)いていただけると幸いなのですが」


 「それは大丈夫です。元々そのつもりでしたし、シロも問題ないよな!」


 『みてる、たのしい、あそぶ、いっしょ、おにく、おふろ』


 「では、そのようにお願いします。そろそろ時間のようですね。あと、その子に使いま……」


 女神さまが帰られると周りは元の礼拝堂へと戻る。


 (なるほどねぇ、この娘は転生者だったのか)


 では、ちょっと確認。 ――鑑定!



 マリアベル・クルーガー Lv.1


 年齢     3

 状態    通常

 HP    10/10

 MP    30/30

 筋力     2

 防御     1

 魔防     5

 敏捷     1

 器用     1

 知力     7


【特殊スキル】 時空間魔法(U)

【スキル】   魔法適性(光・風・水・雷・土) 魔力操作(1)

【魔法】    光魔法(1)

【称号】    王の三女、転生者、

【加護】    ユカリーナ・サーメクス



 ほうほう、えっ、適性が増えてるのは女神さまから加護を(さず)かった為だろうか?


 それとも隠してあった?


 パラメーターは低いなりにも魔法特化型(まほうとっかがた)のようだ。


 (しかし、これでは心もとないよな。年齢相応とはいえ)


 せっかくダンジョンの(そば)にいるのだし。ちょっと(きた)えていくかな。


 そういうことで俺たちはダンジョン・デレクの2階層にやってきた。


 相手はおなじみのスライムとコボルトだな。


 マリアベルはシロの背に乗せている。キャッキャ言ってとても楽しそうだ。


 さっそくコボルトが現れたので、


 「さぁマリアベル。あれに向かってデビルカッターだ。シロと一緒に練習するぞ」


 3m位まで近づいていき魔法で攻撃させる。


 マリアベルは無詠唱(むえいしょう)ながらコボルトを一撃で倒した。


 もちろん、シロのアシストが有ればこそなのだが……。


 「おお、マリア凄いぞ! よくやった。さぁ次いくぞー」 


 休憩を多くはさみながらスライムやコボルトをバシバシ倒していく。


 『おいおい、幼女に何やらせてるんだよ――』


 そう思わないでもないが……。


 本人も楽しそうにやってるし大丈夫、大丈夫。……だよね。



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プチ プチ(。・・)σ|ω・`)ノ おっ押して。押して~!
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