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78 町づくり

 そして翌日。


 ――なぜ? どうして俺の部屋に集まるの?


 今、俺の部屋には王族(おうぞく)が10名、そしてメイドさんがおよそ30名集結している。


 護衛の騎士さんも4名、申し訳程度にいらっしゃってますが……、


 男女の比率がおかしな事になっている。


 とにかくギューギューなのです。


 やめてよ、本当に考えようよ。


 これでは収集(しゅうしゅう)がつきそうにない為、とっととデレクへ転移する。


 (は――――い、着きましたよぉ。散って散って!)


 もう、暑苦(あつくる)しいったらありゃしない。


 ………………


 と思ってた時期が俺にもありました――――っ。


 ポヨヨン、バインバイン、ミーンミーンなんですよぉー。


 ここはパーラダイス! はいもう一度、 パーラダイス!! 


 露天風呂(ろてんぶろ)が大変なことになっております。


 もうね、女の人大杉(・・・)だって。


 仕方がないので男湯 (内湯) も女性陣に開放しました――――っ。


 そして数少ない男性陣はというと、


 露天風呂の(はし)の一角を何とか確保。ひそひそと話をしながら周りを(なが)めていた。


 「しかし、ここは(すご)いねぇ。外の雄大(ゆうだい)な自然を見ながらの入浴とは格別だよ」


 「いや……、確かに。そして、こちらの方も絶景(ぜっけい)ではないかね。かね」


 アランさんもカイゼル王もそれぞれ温泉を満喫しておいでのようだ。


 「この施設(しせつ)がダンジョンの前にあるのも良いね。ダンジョンでの疲れを(いや)すには持ってこいだよ」


 とアランさん。 続けて、


 「もしかしてだけど、他のダンジョンの近くにもここのように温泉施設(おんせんしせつ)を作くったりできるのかい?」


 「こればかりは掘ってみないことには何とも言えないですね。ただ、可能性(かのうせい)はあると思いますけど」 


 そのように返答するとアランさんは腕を組んで考えだした。


 「しかし、お主もおばば様に気に入られて大変よのう。お陰でこちらは大助かりなんだが」


 カイゼル王はしみじみこぼしていた。


 まあ、おばば様もあの性格だからね。いろいろと突っ込んでくるんだろね。


 「なんとか頑張ります!」


 そう答えておいた。






 俺たち男性陣はいったんお風呂からあがり、休憩(きゅうけい)室にて美味しい甘味(あまみ)堪能(たんのう)していた。


 二人して凄い()いつきぶりである。


 男性でも好きな人は本当に好きだからなぁ。(甘味の話です)


 シュガードーナツ・プリン・クレープも何種類か。


 そして、只今研究中(けんきゅうちゅう)のアイスクリームだ。


 これには二人も大絶賛(だいぜっさん)! カップを手に大騒(おおさわ)ぎしている。


 まぁ秋口でもまだ暑いし、温泉あがりでもあるからね。


 あっと、そろそろ不味いんじゃないかな……。


 騒ぎを聞きつけてメイド隊が集まりだしたよ。


 「あらぁ~、男性だけで楽しそうですわね~。それになにか美味(おい)しそうな物をコソコソ食べてるみたいですけど~。わたくしも呼んで頂きたかったですわぁ~」


 と王妃(おうひ)様、見事なジト目攻撃です。


 「い、いや、コソコソなどしておらんぞ。セシリア達にも知らせねばと今話していたところだ。なあアラン」


 アランさんは『えっ、ここで振るの』といった顔だ。


 「は、はい。こんなに美味しい物があるのなら、キシ○ア様……あ、いえ、セシリア様にお伝えせねばと申し合わせておったところです」


 そうして、みんなで顔を見合わせてコクコクと頷く。


 「あらそうなの? ごめんなさいね~。じゃあ、もうここには用はないのでしょう。またゆっくり温泉を楽しんでいらしてぇ」


 男性陣はそそくさと撤収(てっしゅう)していく。 すると後ろから、


 「ゲン(・・)は残っててねぇ~」


 「…………」


 その言葉にカイゼル王とアランさんは、


 【健闘を祈る】的にサッと右手を上げると速やかに退出されていった。


 ………………


 それからしばらく、俺は湯舟に戻ることができなかった。






 そして次の日。


 『ダンジョン・デレク』の扱いについて協議(きょうぎ)が始まった。


 転移陣(てんいじん)何処(どこ)に設置するのか。


 ダンジョン前の広いスペースをどう活用していくか。


 近くの町まで街道を通すだとか、現地にも冒険者ギルドがあった方が……。


 などなど多岐(たき)にわたっている。


 事を起こすというのは、すごく大変な事だが、


 『これがなれば王国の未来は明るい』


 みなさんやる気満々の様子だ。


 俺はオブザーバー的な立ち位置なので王城に戻ってさえいれば特に会議に出る必要はないそうだ。


 なので薬草採取(やくそうさいしゅ)に出かけたり温泉に行ったりと、お城での悠々自適(ゆうゆうじてき)な生活をおくっていた。





     ▽





 ……あれから20日程がたち、周りはすっかり秋めいてきた。


 日本にいれば、さんまでも焼いて食べようかって感じだな。


 転移陣(てんいじん)の話はだいたい固まってきたようだ。


 使用する転移陣は全部で4組。



 ・冒険者。 これは王都の東にある冒険者ギルド内に、行き用と帰り用の2つを設置する。


 ・馬車用。 貴族街にほど近い大きめの広場を使用。馬車寄せなどの他にかなりのスペースを必要とするようだ。


 ・一般用。 これも馬車用の近くに設置する予定だ。一般人用とはいえ通行料は結構(けっこう)高額となる。使用は貴族(きぞく)関係者や大商人といった富裕層(ふゆうそう)が中心となるだろう。 


 ・王族用。 さすがに王城には設置しなかったが誰かさんの熱い希望により、どこそかの(はな)れの近くに決定していた。



 なお物流トラブルを避けるため、マジックバッグの持ち込みは一切出来なくなっている。


 その代案として、冒険者にはダンジョン内でのみ使えるマジックバッグを貸し出すようにした。


 これらを考慮(こうりょ)して『デレクの冒険者ギルド』はダンジョン入口の階段前に建てられる事となった。


 そして今日はアランさんと共にデレクを(おとず)れていた。


 ダンジョン前に王国の要望に沿()った町づくりを進めていくためだ。


 まず基本となる道路を通し、町門・衛兵(えいへい)()め所・商店・宿屋(やどや)・大きめの共同浴場(きょうどうよくじょう)など。


 民家の方は大半を長屋形式とした。冒険者用だな。


 とはいっても壁は厚くプライベートは守られる。水道・トイレつき。


 トイレは水洗で、生活排水などは地下を通して処理をおこなうようにした。デレクが。


 教会もしっかり建てた。


 礼拝堂(れいはいどう)にはユカリーナ様の像を安置する。


 これは俺が幾日も頑張って創作(そうさく)したもので、すばらしい出来栄えとなっている。


 そしてもっとも重要なのが近隣の町に向かう街道の整備である。


 現在は街道が存在しない為、ダンジョンは有るものの今まで放置されてきたのだ。


 まだ山の反対側 (王都側) であれば是が非(ぜがひ)でも何とかしていたのだろうが、場所も悪かったな。


 この広大な樹海も……。


 王国側としては最寄(もよ)りのモレスビーの町まで街道を通したいそうだ。


 樹海(じゅかい)さえ抜ければ何の問題もないはず。


 ディレクの力が及ぶ限り道幅5mの街道を通していき、以前からある細い道につなげた。


 もちろん途中にある熊人族の集落も経由させている。






 ようやく町の外郭(がいかく)と中心になる建物ができてきた。


 ここまでで、およそ300人規模(きぼ)というところか。


 将来的には4000人規模にまで持っていくのだという。


 とはいえ、たった1日足らずでここまでやってのけたのだ。


 当然のことながらアランさんは絶句している。


 「す、すごい! 凄すぎる。まあ、そこの温泉施設をどうやって建てたのか不思議には思っていたけれど」


 「出来るのはダンジョンの周りだけですけどね」


 「それなら、ミスリルや各ポーションなどの迷宮産(めいきゅうさん)の物資を定期的に(おろ)してはもらえないだろうか」


 「残念ながらそれは出来ないみたいです。あれはあくまでも命を賭けた対価なのです」


 そんな要望を出してきたアランさんに俺はキッパリと答えていた。


 実際のところはもちろん可能だが、


 『過ぎたるは何とやら』で(ろく)なことないと思う。


 人間の欲というのは際限(さいげん)がないからね。


 (さて、今日はここまでのようだな)


 それじゃあテストも()ねて王族専用の転移陣(てんいじん)で帰ってみますかね。


 デレク側の転移陣は最初に作った温泉施設の玄関に設置してある。


 ここは、とうとう王族専用の保養施設(ほようしせつ)になってしまったようだ。


 まぁね、俺たちはそのまんま使えるからいいけど……。


 場所も良い所に建ってるから認識阻害(にんしきそがい)の結界もそのままにしておきますかね。


 騎士や警備の衛兵で物々しくなるのは嫌だし。






 城へもどる途中もアランさんといろいろと話をしているのだが、


 町を管理していく上での人員確保(じんいんかくほ)もなかなか難しいようだ。


 まあ、言うなればここはどちらに転ぶか分からないような未開(みかい)の地だからねぇ。


 敬遠(けいえん)する者も多いのだろう。


 一度、この町を目にすれば考え方も変わるとは思うんだけどね。 


 それならと、


 「役人とかは別にして、町の警備などは地元の熊人族(くまびとぞく)を使うという手もありますよ」


 そのように(すす)めてみると。


 おおっ、なかなか良い反応が返ってきた。


 明日にでもその熊人族の集落に行ってみようということになった。


 なんでも、天候にしても樹海の魔獣や獣についても、現地を知る人間というのは貴重(きちょう)なのだそうだ。


 なるほどねぇ、言われてみれば確かにそうだな。


 ………………


 そして次の日。


 こちらのメンバーは4人と1匹。


 俺とナツは冒険者装備(そうび)。子供たちは普段着(ふだんぎ)の上からローブを羽織(はお)っている。


 メアリーは今日、アランさんの奥方であるアストレアさんとお買い物に行くらしい。


 やっと子供らしい事ができるようになったのだ。目一杯(めいっぱい)甘えて楽しんできてほしいな。


 王国側からはアランさんと従者(じゅうしゃ)が一人、プレートアーマーを着た護衛(ごえい)騎士(きし)が二名同行している。


 おいおい、そんな数で大丈夫なの?  


 (かり)にも大公(たいこう)だよね。


 まぁ大名行列よろしく、ぞろぞろ連れて来られても困るけど。


 それに約束したとはいえ、本人が行く必要もないのでは? と思ってしまう。


 若いから自分で動きたいのは分かるし、今回の『ダンジョン・デレクの件』は王国にとっても重要なんだろうけど。


 ナツたちが住んでいた熊人族の集落は120人程が生活しているという。


 それでは、さっそく向かってみますかね。



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