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71 えっとここは?

 本日、いよいよ王都(おうと)に入る。


 まあ、王都や町といったところでダンジョンには判別がつかないわけだが。


 では何故、王都だとわかるのか?


 俺が努力したからである。


 まず、地図を手に入れるのにだいぶ苦労をした。


 こちらにはネットもスマホないし、書店でマップルも売ってない。


 マクベさんら行商人の伝手(つて)でようやく手にした手書きの全国地図。


 所々に穴があいており文字もつぶれて読みにくい。そしてなんだ、この×印。


 まあ、無いよりかましだろうけど……。


 江戸期に日本地図を完成させた伊能忠敬(いのうただたか)さんは本当にすごいよ。


 とにかく、この地図を見ながら3つのダンジョンの位置、結んだ地脈上にある町や村などを照らし合わせていったのだ。


 そして地脈のライン上に王都があると分かった時はかなりテンションがあがったことを覚えている。


 決め手になったのはズバリ人間の数だった。さすがに町や村では何万という人口にはならないからね。


 それに、モンソロの町に居ながらにして各ダンジョンとのやり取りが出来たことも大きかった。






 何のかんので8日程ディレクに留まっていたのだが、けして真実(・・)を追い求めていたからではない。


 あくまでも日数の調整であったことを忘れてはならない…………よね。(汗)


 朝から子供たちを連れ散歩と訓練を行ったあと、汗を流しに温泉に入っている。


 やっぱ朝風呂は最高でしょ!


 そして朝食を終えたら旅の準備をしていく。


 持っていく物などは昨日から準備しているので俺とメアリーは装備(そうび)を身に着けるだけだな。


 クマ親子は普段着(ふだんぎ)のままだ。


 しかしブーツだけはデレクに頼み、しっかっり良いものを作ってもらった。


 それはそれは何回も試作を重ねて納得(なっとく)いくものにした。


 この世界って靴は一日中履いてるから、とても大事なんだよね。


 それから子クマ姉弟(きょうだい)には護身用(ごしんよう)にとミニクナイとホルダー付きベルトを作ってもらった。


 クナイのレクチャーは昨日の内に終わっている。


 ディレクに温泉施設(おんせんしせつ)とログハウスに認識阻害(にんしきそがい)の結界を張ってもらう。


 あと手荷物は俺のインベントリーに入れているのでみんなはダミー用のバッグを背負っている。


 それと何かトラブルがあった時のためにナツには金貨を1枚預けることにした。






 まず、俺とシロが先行して町の様子などを見てくる。


 そして拠点(きょてん)となる宿屋を確保したのち、みんなを(むか)え入れるように計画をたてた。


 「じゃあ行ってくるな!」


 そう言って王都に向け出発 (転移) しようとしているのだが……。


 メアリーが俺の服の(すそ)を握ったまま放してくれない。


 なんど説得しても顔を横に振るばかり。


 う~ん、困ったなぁ。……どうしよう。


 ナツを見ても、無言で顔をよこに振っている。


 ハァ~、もう仕方がない。


 結局メアリーも連れていくことになってしまった。


 「ぜったい、俺やシロから離れたらダメだからな」


 「うん、だいじょうぶ!」


 ニコニコ笑うメアリーを腕に抱いてシロと共に転移させた。


 (んんっ、来たか)


 周りの状況を確かめる。


 デレクには王都の壁の内側(うちがわ)で人気のない所に飛ばすように頼んでおいたのだ。


 後ろには高い壁がある。


 確かに壁の内側のようだが、この目の前に広がる青々とした芝生(しばふ)はなんだ。


 あれは東屋(あずまや)か? いや、ガゼボと言ったほうが正しいのか。


 って事は、どこか貴族様のお屋敷? 


 面倒な事になる前にすみやかに撤収(てっしゅう)しようとしていたのだが……。






 ガゼボに誰か居るようだ。


 気になったので木陰からそ~と(のぞ)いてみる。


 そこには年の頃は30手前ぐらいだろうかブロンドの髪にドレスを身に(まと)った貴婦人(きふじん)がひとりお茶を飲んでいるところであった。


 席の後ろに立っているのは執事やメイドだろうか? 数人控えているのが見える。


 「あらぁ、どちら様かしら。そこにいらっしゃるのでしょう?」


 えっ、なんでバレた?


 けっこう離れていると思ったんだけど。


 まあ見つかったところで何てことはないか。逃げちゃえば良いんだし。


 バレているのならと、メアリーを抱いたままシロを(ともな)ってガゼボの前へでた。


 ――ザワっ!


 ガゼボの中がにわかに色めき立った。


 「いいのよ、静かにして」


 貴婦人は片手をあげることでそれを制すと、(すず)やかな青い瞳をこちらに向けてくる。


 「すみません。この辺りは不慣(ふな)れなものでして、早々に退散いたしますので」


 「ふーん、そうだったの。まったく問題なくってよ」


 「…………」


 「あら――――っ、そちらはアラン様のところのメアリーちゃんではなくって? まぁ、そうなの遊びに来てくれたのね嬉しいわ~。ささっこっちよ座って座って!」 


 あれよあれよと手招きされてガゼボの中に引き込まれてしまった。


 今更(いまさら)逃げるわけにもいかず、空いている椅子(いす)に腰かけメアリーを(ひざ)の上にのせた。


 「あの……、俺はゲンといいます。こっちは従魔のシロ。それでメアリーをご存じなのですか?」 


 疑問に思っている事を尋ねてみた。


 「えぇえぇ知ってますとも。以前見えられたのが4年前でしたわねぇ。大きくなられてお母様そっくりですよ」


 やはり知っているようだ。


 大公(たいこう)さんが(たず)ねてくる程だから、こちらもかなりのお(えら)いさんなんだろう。


 「そうなんですか。それで大変失礼なのですが……、あなたはどちら様なのでしょう?」


 素直(すなお)(たず)ねてみた。


 すると後ろの使用人たちの肩がふるえている?


 「あらっ、わたくしとした事がとんだご無礼を」


 彼女はそう前置きしてから、


 「わたくしはセシリア・ジ・クルーガー。この国の王妃(おうひ)です」


 次の瞬間、俺は椅子から立ち上がり貴族礼(きぞくれい)をとった。


 メアリーは横でポカンと口をあけている。シロはおすわりして尻尾を振っていた。






 俺は今、ニコニコ顔でプリンを食べている王妃様(おうひさま)と一緒にお茶を飲んでいた。


 メアリーも俺の膝の上でプリンを笑顔で食べている。


 そしてシロは硬めの干し肉を美味しそうに食べていた。


 「…………」


 この状況を(かんが)みる中で、俺は認識(にんしき)(あらた)めた。


 ここは王都の内側であって、かつ王城(おうじょう)の内側なのだと。


 少し離れたところから見れば尖塔(せんとう)などもあってお城だと気づいたはずなのだが、こう近いとなかなか分からないものである。


 まあ、飛ばしたデレクを責めたところで仕方がないだろう。ダンジョンなんだし。


 でもこれって、いい機会だよな。


 この際だから、いろいろと聞いてみることにしよう。


 ………………

 …………

 ……


 ふんふん、なるほどねぇ。


 まず、メアリーのお父さんは大公であるアランさん、お母さんはエレナさんというらしい。


 エレナさんは3年前に亡くなっているそうだ。死因 (理由) については子供の前ではちょっと……らしい。


 アランさんはとても子煩悩(こぼんのう)でありメアリーはすごく大事にされていたそうだ。


 俺の方からもメアリーとどこで出会ったのか、今までどうしていたのか、など色々とお話しさせてもらった。


 すると、さっそくアランさんに連絡を取ろうということになった。


 メアリーを引きとる際、何か(かく)たるものは持っていなかったかと尋ねられたので、銀の(こしら)えの短剣をお見せした。


 すると、どこからともなく黒服の執事(しつじ)が現れ、短剣を確認すると何やら王妃様に向かって頷いている。






 結局、そのあと王妃様の指示で15日程王城にてご厄介(やっかい)になることに決まった。


 「まだ他にも連れがいるんで……」と俺は断ろうとしたのだが、


 「では、みんな連れていらっしゃい!」


 とゴリ押しされる始末。


 「ホントに連れてきますよ良いんですか?」


 王妃様にそう確認したのち俺はクマ親子を王城へ転移させた。


 「…………」


 状況がわからず、あたふたしているナツ。子供たちは笑いながらメアリーと手を取りあっている。


 それを見ていた王妃様は、


 「これじゃぁ、警備も何もあったものじゃないわね~」


 「まあ、出来るのは俺ぐらいですから……」


 半分(あき)れ顔の王妃様。まぁそこは……と俺は軽く流すことにした。


 ダンジョン・デレクの勘違(かんちが)いからこのような事態になってしまったのだが、まぁ結果オーライだろうと前向きに考えることにした。 


 王城でご厄介になるとはいっても軟禁(なんきん)ではないので、外への出入りも自由にできる。


 しかし服装については直されてしまった。


 まあ、これは当然だわな。


 それに城への出入りは馬車で行って欲しいそうで、特別に馬車と馭者(ぎょしゃ)を手配してくれた。


 仕方がないので貴族街の検問所まではそれに乗っていき、馬車寄せがあるので戻ってくるまで待機してもらうようにした。


 まずは冒険者ギルドからだな。


 王都には冒険者ギルドが東西に2ヶ所ある。


 貴族街からは東のギルドが近いのでそちらに顔を出すことにした。


 ついでなので、ナツの冒険者登録(ぼうけんしゃとうろく)も行うことにした。


 どのみち身分証(みぶんしょう)は必要だろうし、これからもダンジョンに入るだろうしな。






 馬車を降り大通りを20分程歩いたところに冒険者ギルドはあった。


 いつものようにメアリーを腕抱(うでだ)きにし、ナツたちを連れてギルドに入った。


 視線(しせん)一斉(いっせい)に集まり、そして霧散(むさん)していく。


 (どこのギルドも同じ感じだなぁ)


 ――しかし、


 「よーよー、ここはいつから託児所(たくじしょ)になったんだぁ~?」


 そのように言ってくるバカ(・・)が一人いたが俺はスルーして通り過ぎる。


 すると後ろから、


 「おい! ちょっと待てよ!」


 肩に手を伸ばされ(つか)まれそうになったので、


 それをギリでかわし相手がつんのめったところで足をかけて転ばしてやった。


 「…………」


 やれやれ、こんな所でテンプレなんて要らねーよ。


 素知(そし)らぬ顔で受け付けカウンターの列に並ぶ俺たち。


 「おい、何てことしやがるんだ! 待ちやがれ!」


 転ばしたヤツの仲間だろうか3人の冒険者が横から出ばってきた。


 「…………」


 (はぁ~、頭の悪いヤツはどこの世界にもいるもんだな)


 『シロ、身体強化だ。ちょっとばかし()らしめるぞ』


 シロに念話(ねんわ)を飛ばし、振り向きざまに身体強化をかけ威圧(いあつ)してやった。



 その瞬間、周りはしーんと静まり返り威勢(いせい)のよかった4人組の冒険者は共に腰を抜かしていた。


 俺は尻もちをついているそいつらにゆっくりと近づいていき、


 「なんか用なのか? 今日からお前たちは西のギルドに行け。わかったな!」


 そう言うやいなや、冒険者たちは(あわ)てて立ち上がると一目散(いちもくさん)にギルドを飛び出していった。


 「「「…………」」」


 「「「…………」」」


 「「「…………」」」


 身体強化を解いても未だギルド内は静まり返ったままである。


 か――――っ、どうすんだよこの空気。


 俺はなにもかもスルーすることにした。


 そして再び列に並ぼうと振り返ると、人の列がきれいに左右へと分かれた。


 「…………!?」


 あぁ――っ、もう、いったれ いったれ!


 みんなを引き連れてカウンターの前に立った。


 「おっ、おっ、お待たせしました。冒険者ギルドへようこそ。ご用件をお(うかが)いいたしまーす」


 よく通る声が静まり返ったギルドにこだまする。


 悪いの俺じゃないよねぇ。そうだよねぇ。


 ナツと子供たちは笑ってるし、シロは尻尾ふってドヤッてるし……。



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