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64 植物油

 いや~、裸足(はだし)って実に気持ちいい!


 最近では裸足で過ごすこともなくなったからなぁ。


 この海の家というのもすごくいい。たまの息抜(いきぬ)きには持ってこいだな。


 うぅ――――ん! 伸びをしたあとサラに問いかけた。


 (サラ、植物(しょくぶつ)から油を抽出(ちゅうしゅつ)することってできるか?)


 [はい、可能(かのう)です。どのような植物でしょうか?]


 (まず、人体に無毒(むどく)で香りもあまり強くないものだな。粘度(ねんど)においても違うものを(そろ)えてほしい)


 (それじゃあ今からイメージを送るから、このイメージに近い植物をダンジョン内やダンジョン周辺から探してみてくれ)


 (木の実で色はグリーン、(すず)なりに実をつけ葉っぱはシュッとしてるオリーブの実。 次は草花(くさばな)で川の近くの土手(どて)などに()えており色は黄色・高さ1m~1.5mぐらい、この植物 (菜の花) の(たね)から取れる油。次は ひまわりの種・トウモロコシ・大豆(だいず)・ピーナッツ。だいたいこんな感じだが()たような植物はあったか? その中から5種ほど油のサンプルを作ってくれ。量はこのゴブレットぐらいあればいい。どうだ?)


 [はい、植物さえ選定(せんてい)できれば抽出(ちゅうしゅつ)にはさほど時間はかかりません。少々お待ちください]


 ………………


 [無毒(むどく)でイメージに近い植物を順に5種類(しゅるい)選定しました。抽出した油はゴブレットに1杯ずつお出しいたします。参考(さんこう)に使用した植物片(しょくぶつへん)も一緒にお出ししています]


 (それと、もう1つ作ってもらいたい物がある。イメージとしては弾力のある針金をいくえも………………卵とか小麦粉とかを空気を入れながら混ぜる器具。泡立て器(あわだてき)というものだ。できるか?)


 [はい、お(まか)せください。………………これでいかがでしょうか?]


 おうおう、さっそく試作してくれたのか。秒で!


 (う~ん、針金の金属にはもう少し弾力(だんりょく)をもたせてくれ。そして持ち手はこんな感じでたのむ)


 [はい。ではコレなんていかがでしょう?]


 (ほうほう、うん上出来だ。これを3本作ってくれるか)






 ここは海の家にある調理場(ちょうりば)。(ダンジョンリビングです)


 テーブルの上には3本の泡立て器(あわだてき)とゴブレットに入った5種類の油が並んでいる。


 その横にはサンプルとして使用した植物片(しょくぶつへん)が置かれていた。


 さっそく油の色・(かお)り・味・粘度などを一つひとつ吟味(ぎんみ)していく。


 う~ん、なかなかどうして。どれもそれなりに良い油だと思うけど。


 最終的にはその中から3種を選び、それぞれ10リッターの(たる)()めてもらった。


 「…………!」


 ――そうだ!


 これを低階層(ていかいそう)でドロップさせて迷宮産(めいきゅうさん)として流通させてもいいかもしれない。


 入れる容器(ようき)さえ考えれば十分に喜ばれるのではないだろうか。


 それにあわせて、揚げ物(あげもの)なんかを一般に広めてもいいしな。


 「!!!」


 おっといかんいかん。本題を忘れそうになっていた。


 まずは小麦粉だよな。


 あまり色が良くないんだよなぁ。ふるいにかけたけど、肌理(キメ)のほうもこの程度か……。


 うぅ~ん、


 (サラ、お願いがある。この小麦粉の再製粉(さいせいふん)とキメを細かく均一にしてくれないか?) 


 [はいマスター。………………できました]


 って早! ホントに秒だよ。


 おおっすごい。手で(にぎ)るとキュッキュと音がするし色も真っ白だ。


 やはり小麦粉はこうでなくっちゃ。






 さ~て、クレープの生地(きじ)作りだな。


 小麦粉1ジョッキ・砂糖1/10ジョッキ・塩少々をボールに入れて混ぜる。


 別のボールに卵5・溶かしバター・ミルクを1ジョッキ入れ混ぜる。


 これにさっき混ぜた粉を入れて泡立て器でダマがなくなるまで混ぜる。


 さらにミルクを1ジョッキ分を数回に分けて入れながら生地をかき混ぜていき、最後に香り付けとしてメイプルシロップをスプーン2杯加える。


 こんな感じで、混ぜて、混ぜて、混ぜて、ひたすら混ぜ合わせて。


 クレープ生地(きじ)の完成で――す!


 って疲れたな。(お付き合い頂いた皆さん、どうもありがとう!)


 これでクレープ生地が出来たわけだが、最低でも1刻 (2時間) 程は生地を寝かせたいところだな。


 (サラ、この木のボール入っているクレープの生地だが、時間を進めたりとかはできるか?)


 [はいマスター。その大きさでしたら可能です。どのくらい進めますか?]


 そっかぁ、出来るのね。


 まぁ、この場所自体が亜空間(あくうかん)みたいなものだからな。


 それでは乾燥(かんそう)しないように(ふた)をして。


 (外気を5度下げた所にこの状態(じょうたい)で置いて1刻 (2時間) 進めてくれ)


 そう伝えてテーブルに木のボールを置いた。


 すると、パッ! と一瞬(いっしゅん)だが木のボールが消えたように見えた。


 [マスター、処理(しょり)が終わっております] 


 「…………」


 あぁ、ハハハハハッ! 終わったのね。


 ――良かった。うん良かった。






 俺は気を取りなおし、フライパンをコンロで熱していく。


 コンロのガスをどうしてるのかは知らない。


 水道も蛇口をまわせば水が出るし電気も普通に点いている。


 まぁダンジョンの中だし、使えればいいのだし、問題ないない。


 ――考えるな、 感じろ!


 それで熱したフライパンにさっき抽出(ちゅうしゅつ)したキャノーラ油 (菜種油) を(うす)くひき生地を広げる。


 生地(きじ)が薄いので火が通るのもあっという間だ。


 フライパンを作業台の濡れふきんの上に置く。


 あとはアツアツ言いながらヘラと手でクレープをはがしていく。


 フライパンの中でササッと折りたたみパクッと食べてみた。


 おお~、なかなか上手(うま)くできたじゃん。


 ――ヨッシャ! 


 ついガッツポーズをとってしまった。


 このまま食べても(うま)いのだが。さて、どうするか?


 う~ん、生クリームは無いしなぁ。


 果物(くだもの)はリンガにバネネあとキウイのようなものがインベントリーに入ってたよな。


 それじゃあ、クレープシュゼット風にしてみようか。


 果実ソースで煮込むような感じだったよな。


 キウイ2個すり潰して砂糖を入れて煮立(にた)たせ、そこにクレープをそっと入れ馴染(なじ)ませる。


 仕上げにリキュールを注いでフランベ!


 これでアルコールも飛ぶから子供でも大丈夫だな。


 よし、できたぞ!






 それから、しばし奮闘(ふんとう)してクレープとアイスティーを人数分完成させた。


 外で遊んでいたシロとメアリーに声をかけ海の家に呼ぶ。


 みんなでちゃぶ台(・・・・)をかこんで、上にクレープを4皿、アイスティーを3つ準備する。


 メアリーのは砂糖ミルク入りのアイスミルクティーになっている。シロはお水だな。


 しかしメアリーは誰も居ないところに置かれた皿が気になるのか、不思議(ふしぎ)そうに見ている。


 そうか、まだ言ってなかったよな。


 「メアリー、これはサラ(・・)の分だ。この家もそこにある海もぜーんぶサラが作ってくれたんだぞ」


 そう説明するとメアリーは、


 「じゃあ、サラも家族なんだね!」


 と(すご)いことを言ってきた。


 いや、まあ、そうなる……のか?


 「そうだな、サラも俺たちの家族だな」 


 俺はそう宣言(せんげん)した。


 すると、どこからともなく一匹の黒猫(くろねこ)が姿をあらわし、スタッとちゃぶ台の上に乗ってきた。


 [みなさま、わたしがサラです。今はベヒモスの幼体(ようたい)の姿を()しております。これからもよろしくお願いします]


 「それじゃぁみんなで食べようか。おいしいぞ~!」


 (サラも遠慮せずに食べてくれ。家族なんだからな)






 するとどうした事か、いきなりガタガタと家が()れはじめたのだ。


 おおおおっ、なんだ地震(じしん)か? 


 ダンジョン内でも地震が起きるのか?


 突然の地震に戸惑(とまど)っていると、


 [こっ、これは、ななななんですか――――――っ!? こんな美味(おい)しいもの食べたことありません。|凄い、凄いです。さすがマスターです。一生ついていきます。(ささ)げます]


 おいおい、ただのクレープだろう。オーバーだっつーの。


 捧げるって何をだよ? 逆にこえーよ。


 (そうか、口にあったようで(うれ)しいよ)


 メアリーも目を(かがや)かせてフォークを持つ手が止まることはなかった。


 こらこら、お皿をぺろぺろするのはお()めなさい。レディーなんだから。


 まあ、作るのは大変だったがみんなが喜んでくれて本当に良かった。


 また何か作ってあげよう。


 それにサラに頼めば、いろんな食材を調達(ちょうたつ)したり調合(ちょうごう)なんかも出来るということだ。


 ここは料理やスイーツづくりには良い環境(かんきょう)だよな。


 おやつを食べ終わると、シロとメアリーはまた砂浜へ()けていった。


 この解放感(かいほうかん)がたまらないのだろう。


 ここはダンジョンリビング。魔獣やモンスターの警戒(けいかい)も不要だからな。


 俺も今日はのんびりと、海でも(なが)めて過ごすとしますかねぇ。



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script?guid=on挿絵(By みてみん)
プチ プチ(。・・)σ|ω・`)ノ おっ押して。押して~!
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シロかわいい! と感じたら押してください。シロが喜びます。U•ɷ•)ฅ
挿絵(By みてみん)
作:管澤捻 さま (リンク有)
挿絵(By みてみん)
― 新着の感想 ―
何これ可愛いwww
[良い点] サラ、クレープの味を覚えてしまったか。 海や植物油すら作ることができ、輸送も思いのままのサラ。 ここにクレープ自動生産工場が完成した。(笑)
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