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59 工藤の手紙

 まず洞窟(どうくつ)奥行(おくゆき)だが、思ったほど長くもなく大体30mといったところだろうか。


 それからこの洞窟を掘った (作った) 者が、日本からの召喚者(しょうかんしゃ)、もしくは転生者(てんせいしゃ)であることが判明した。


 何故わかったのか?


 それは洞窟の最奥に(かざ)られていたある物を目にしたからだ。一対(いっつい)で。


 (しかし、よく再現(さいげん)してあるなぁ)


 その物とは、ズバリ『門松(かどまつ)』だったのだ。


 まぁ、なんともめでたい(・・・・)ことか……。


 とりあえず(おが)んどこ!


 「…………」


 やっぱり、ちょっと疲れた。


 せめて鳥居(とりい)(ほこら)ぐらいにしとけよなぁ。


 そうか……、望郷(ぼうきょう)の念というやつなのかもしれない。


 そう考えると、やるせない気持ちにもなる。


 しかし門松といえば、普通 家の玄関や店の入口に飾ってあるよな?


 「メアリー、光魔法で明るくしてくれ」 


 「はーい!」


 お願いするとメアリーは天井の近くに光球を上げ、周りを明るくしてくれた。


 やはり門松の奥には何もない。ただの壁…………。


 「…………」


 そこに文字が彫りこまれていた。


 あ~~~、日本語(・・・)ですやん。


 【上を見ろ!】


 ??? 天井を見る。するとデカい文字で、


 【下を見ろ!】 


 今度は下か? 足元を見ると何か文字が彫ってある。


 その文字をなぞっていくと、


 【ひだりをみろ!】


 ハハ~ン! だいたい分かってきたが最後までつきあう事にする。


 で……、しゃがんだ状態で左を見た。


 すると、そこには小さく、


 【すぐ下を見ろ!】 


 そう書かれており目線(めせん)を落とすと一ヶ所だけ2㎝程の丸い岩が飛び()ていた。


 しかしその岩スイッチの下には、


 【押すな 危険!】


 の文字が……。


 「…………?」


 これはフリか? フリなのか? いや待てよ……、


 しばらく考えたのち、俺はその岩を引っぱってみた。


 すると ――カチン! と音がして岩スイッチの左側に縦長の隙間(すきま)が生まれた。


 おおおおおっ!?


 ――ビンゴだったようだ。


 ちょうど引き戸(ひきど)のように横にスライドさせて開けるタイプのようだ。


 その隙間に指を()け開けようとしていると、


 「みんな――――――! ご飯ですよ――――――! 戻ってきてぇ~」 


 「「は――――い!」」


 カイアさんの呼びかけに返事をかえし、取りあえずみんなの所へ戻ることにした。






 そして、みんな揃って美味しい夕食を頂く。


 「洞窟の奥には何かあったのかい」


 「あ、はい。まだハッキリしませんが不思議な遺跡(いせき)のようですね」


 「へー、そうなのかい。何かお宝でも出てくるのかねぇ」


 「許可(きょか)が頂けるなら、もう少し調べてみたいのですが……」


 「今日はどうせここに泊まるのだから納得(なっとく)がいくまで調べてみるといいよ」


 「そうですか。では1刻だけ時間を頂きますね」


 「そうだね。そのくらいなら明日に影響することもないだろうから」


 そして夕食を済ませた俺とシロは、再び洞窟の奥へ向かった。


 メアリーは気持ちよさそうに舟をこいでいたのでカイアさんに預けてきた。


 最奥までいくと(かべ)の隙間はピタリと閉じていた。


 (へぇ、自動で戻るんだ)


 壁の文字が変わってないことを確認して再び岩スイッチを引いてみる。


 ――カチン!


 さっきと同じように音がして、縦に細長い隙間(すきま)ができる。


 そこに指をかけ左にスライドさせると、岩壁がススーと引き戸のように開いた。


 「おじゃましますよ~」


 そう呟きながら中へ足を踏み入れると、パッと周りが明るくなった。


 (人感センサーライトか? 魔法でもこんな事もできるんだな……)


 そこは一つの部屋になっていた。






 俺は松明をインベントリーに戻し、部屋の中を見渡してみた。


 10(じょう)程の部屋には(ちり)蜘蛛(くも)の巣といったものもなくキレイに片付いている。


 中にある物といえば、割とがっしりとした机と椅子、その横に本棚(ほんだな)があるくらいか。


 本の数はそれ程多くなく、並んでいるのは30冊程だ。


 そして右側と奥には扉が見えている。


 「…………」


 何て言うんだろう。


 ここの洞窟に入ったときにも感じたが……。


 ――やはり生活感がない。


 この部屋の主はもういないような気がするんだよな。


 さて、部屋の中を見ていきますか。


 取りあえず右側の扉から開けてみる。


 ここは寝室(しんしつ)だな。


 ベッドとクローゼットがあるが、特に大した物はないようだ。


 次は奥の扉を開けてみる。


 ドアノブに手をかけるが……開かない。


 押しても引いてもダメ。鍵穴(かぎあな)も見当たらない。


 「…………?」


 仕方がないので戻って机をの中を見てみることにした。


 机には引き出しが2つ並んでおり下の方から開けてみる。


 すると中には綺麗な化粧箱(けしょうばこ)が入れられていた。


 その箱を机の上に取り出してみる。


 つるんとした光沢のある木目はマホガニーを彷彿(ほうふつ)とさせる。


 (立派な化粧箱だな。さて中身はどうだろう)


 化粧箱の中身は、(まばゆ)いばかりに輝く金の(こしら)えに入った短剣(たんけん)


 そして、この国のものではない分厚い金貨が12枚入っていた。






 化粧箱は机の上に置いたまま、今度は上の引き出しを開けてみた。


 するとそこには、綺麗に折りたたまれた羊皮紙(ようひし)が入れられていた。


 それを机の上に取り出し丁寧(ていねい)に広げてみる。


 どうやらこれは日本語で(つづ)られた手紙のようだ。


 俺はその羊皮紙を開くと静かに読みはじめた。




 よう日本人。よくここを見つけたな。おまえには幸運の女神がついてるのかもしれないな。どうだ、異世界(いせかい)では楽しくやってるか? 俺は最初大変だったぞ。なんせクソのような国に勇者(ゆうしゃ)だか何だかしらないが勝手に召喚(しょうかん)されてしまった。「お主を召喚するのに国民と魔導士(まどうし)合わせて500人も犠牲(ぎせい)にしたから、そのぶん働け!」だとかぬかしやがるし訳がわからなかった。隷属(れいぞく)される前にさっさとトンズラかまして逃げてやったぜ。俺は城下(じょうか)を抜けて違う町で冒険者になり静かに暮らしていたんだ。だが、あるとき風の(うわさ)を耳にしてしまった。『帝都(ていと)にて(うま)い話にのせられた人が集められている』とな。それを耳にした時はさすがにブチきれたな。俺のことなら『もういいや』って(あきら)めてたのにな。あの帝王(ていおう)だか皇帝(こうてい)だか知らないが頭がイカレてやがる。周りにいるヤツも止めることが出来ないのなら同罪(どうざい)だ。てなわけで帝城(ていじょう)ごと吹っ飛ばしてやったわ! それからはどこかの国に攻められて国自体が変わっちまったようなんだが。そんなことは知らん。


 話しは変わるんだがこの国はまだ『クルーガー王国』のままか? 違う国になっちまってるならどうでもいい。ただクルーガー王国のままなら、困った事があったらちょびっと力になってもらえると助かる。初代(しょだい)王のクレマンにはめちゃくちゃ世話になったんだ。追っ手(おって)が掛かっている俺を(かくま)ってくれたし、家をくれたり、金や女まで用意してくれた。それにアイツ……俺の娘を王子の嫁(・・・・)にくれとか言い出しやがって。まぁ娘 (エミリア) もまんざらでもない様子だったんでくれてやったんだが。そしたら、そいつが2代目になりやがったんだよ。だからよ王族は俺の子孫(しそん)でもあるんだ。何かの時にはよろしく頼むな! なーに(ただ)でという訳じゃねえよ。あのクソのバルタ大帝国(だいていこく)宝物庫(ほうもつこ)から頂いてきたお宝ぜ~んぶやる。俺は身内には甘いんだ。しかしだな、王族自体がクソ野郎に成り下がっているときはキツ――――イやつを一発頼むぜ。遠慮(えんりょ)はいらん。

 まぁ、長々と読んでくれてありがとな。おめえさんと会うことはねえが応援(おうえん)している。あぁ母ちゃんのカレーが食いてぇな~。じゃあな頑張れよ!   工藤しんのすけ 164歳


 P.S お宝は奥の部屋だぞ。マジックバッグに入れて置いてある。その他の武器や防具も良かったら使ってくれ。下の引き出しに宝剣(ほうけん)が入ってる。それを手に持ち ”バルス” だ! (ちな)みに表の岩のスイッチを押すと上から金盥(かなだらい)が落ちてくるからな。押すなよ! ハハハハハッ!




 俺はその手紙……、遺書(いしょ)? を丁寧(ていねい)(たた)むとインベントリーに保管した。


 ふぅ――っ、ため息をひとつ吐きだす。


 金盥(かなだらい)か……。――押さないからね。


 エミリア(・・・・)バルス(・・・)か……。


 同じぐらいの時代からだったのかもな。


 まぁ、時空間の(つなが)がりがどうなっているのかは俺にはわからない。


 非合法の召喚だったようだし。


 ただ、工藤さんもそれなりに苦労(くろう)をしてきたみたいだね。


 くれると言うなら有難く頂いておきますよ。


 王様? 王子様? 困ってるなら助けるぐらいはできると思うけど。


 それにダンジョン・デレクの件もあるしな。


 俺は奥の部屋の前にいき宝剣(ほうけん)をかざし、


 「バルス!」


 と声に出してとなえた。


 すると ――カチン! と音がして扉が20㎝程奥へ開いた。


 その扉を押して中に入ると、照明(しょうめい)()き部屋が明るくなった。


 俺はぐるりと部屋を見まわしてみる。広さは8畳程だろうか。


 ここは倉庫(そうこ)のようだな。


 壁には吊戸棚(つりとだな)が2ヶ所あり、その下には様々な種類の剣・槍・(つち)(おの)などが壁に立て掛けられている。


 そして大振りの黒いトートバッグが目に入る。


 「…………」


 表に思いっきり『宝』と日本語で書いてある。


 しかも金文字でだ。


 はぁ――っ、ため息をひとつ。


 (中身の確認はあとでいいかな)


 俺は黒いトートバッグをインベントリーへ収納した。



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プチ プチ(。・・)σ|ω・`)ノ おっ押して。押して~!
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― 新着の感想 ―
目がぁー!眼がー!メガレンジャー
[良い点] >あ~、母ちゃんのカレーが食いて~。 なんか、分かりますね〜! 食べたくなりました( *´艸`)
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