4 女神さま 3
魔獣、 それにダンジョンかぁ。なかなか大変な世界なのかもな。
ちょっと浮かれていたが気を引き締めたほうがいいよな。――よしっ!
「それでは、付与するスキルに何か希望はございますか?」
「あっ、はい。その前にもうひとつ、言葉などはどうなるんでしょうか?」
「言葉に関しては言語理解が身体に組み込まれますので問題ありません。共通言語のほか亜人族言語もカバーできますし、文章も特殊なもの以外は読むことが出来るでしょう」
「組み込まれる?」
「はい、高月様の身体はこちらでお造りしますので、そちらの身体のほうに標準設定いたしました」
――お造りって、魚かよ。
俺の身体どーなっちゃうの? 大丈夫だよねぇ。ちゃんと人間だよね。(汗)
「はい、大丈夫です。身体的にも緩やかに老化していくはずです。もちろん整理面に於いても問題ありません。ただ病気や状態異常に耐性を持ち、それらには強くなっています」
今、サラッとすごいこと言ったよね。それに俺の心読んでます?
「はい、今は いわゆる魂だけの状態でありますので。それはもう……」 ――ニコッ。
わっちゃー、マジか! マジなのか。いろいろごめんなさいです。(汗)
「いえいえ、以後 気をつけていただければ。それから、身体が新しくなりますので それに合わせて年齢も若返ります。これについては現地にて確認なさってください」
「それでは希望をお聞きしていきますね」
「じゃ、まず鑑定ってあります?」
このような感じで話が進んでいき、俺は3つのスキルと『女神ユカリーナ』さんの加護を手に入れた。
それと当座の資金と身の回りの品などを頂くことになった。
そして、なんでも女神さまにお会いしたい時はユカリーナさんが祀られている教会にシロを伴って訪ねよとのこと。
さすれば、短い時間ではあるが話をしたりアドバイスなどもできるそうだ。
ただ、直接の干渉は出来なくなっているみたいだ。
まぁ、主役は聖獣のシロで、俺はおまけみたいなものだしねぇ。
なんか俺って『ヒモ』まっしぐらじゃん。(笑)
「それでは、すべての準備が整いましたので転生シーケンスを開始いたします。高月玄様、どうぞシロさんと仲良く、この世界での生活を楽しんでくださいね」
女神さまは満面の笑みを浮かべながら見送ってくれた。
――女神さま、どうもありがとうございました。
シロは聖獣だから、たぶん俺のほうが先に旅立つだろうけど。
それまではずっと傍にいよう。ずっと撫でてあげよう。
お前にもらったこの命で精一杯生きていこう。―― 一緒にな。
だんだん意識が遠のいていき…………。
涼しいそよ風にあてられて、ゆっくりと覚醒していった。
森で目を覚ました俺は、シロをもふりながらステータスの確認をしようとしていた。
「う~ん、どうしたらステータスが見られるようになるんだ? シロ、何かわかるか?」
シロは伏せの体制ままで ワン! と一吠えしただけで、ブンブン尻尾を振っているだけだった。
俺は右腕を正面に伸ばし掌を開きつつ、
「ステータスオープン!」
と叫んでみた。――まるで変化なし。
自分でも少し恥ずかしくなりシロの背中に顔を埋めてしまった。
「はぁ、わからん? 何でじゃ~」
ここ30分程いろいろとチャレンジするも、どんどん黒歴史が積み上がっていくばかりだった。
「あぁ~もう、止めだ止め!」
そして、俺はその場に立ち上がった。
『んん~』と伸びをしたあと、
「よし、シロ行こう!」
お座りしているシロに声を掛けると、バッグを肩に掛け森の中を歩き始めた。
「女神さま曰く、西の方角に行くと森を抜けられ街道が通ってるから、なんてこと言っていたよなぁ」
呟きながらも太陽の位置を確認していく。
「たぶん、こっちだな」
俺たちは森の中をゆっくり進みはじめた。
西の方角は森の中にしては割と開けていて容易に抜けられそうだ。
「この獣道を辿っていけば良さそうだな」
シロは、たまに止まっては後ろを振り向き俺が追いつくのを待って、また軽やかに進んでいく。
そうこうしてるうち、1時間ほどが経過しただろうか。
森の終わりが近づいたのか、周りが少し明るくなってきた。
「おっ、だいぶ明るくなってきたな。そろそろ森を抜けられるのかな」
呟くように言っている間に森を抜けきっていた。
目の前には大きな草原が広がっている。
そして、その草原を横切るように一本の街道が通っているのが見えた。