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56 大興奮

 メアリーが謎の角笛で眠ってしまうというハプニングもあったが、ご飯をたべてお昼寝をしたら再び探索(たんさく)スタート。


 階段はすでに見つけていたらしくそのまま7階層へ移った。


 ここも主力はゴブリン・ウルフ・ホブゴブリンだ。それに(まれ)にホーンラビットが出るくらいか。


 ………………


 後半にホーンラビットの遭遇(そうぐう)が少し増えただけで一刻 (2時間) 程で8階層に入った。


 って、攻略速度がめちゃくちゃ早い。


 主にシロの案内によるものだが、メアリー (子供) が居ようとお構いなしにどんどん進んでいくのだ。


 シロちゃんって割とスパルタだよね。


 ここで誤解のないように言っておきたい。


 実際 (一般) のダンジョン探索は|このように甘いものではない《・・・・・・・・・・・・・》ということだ。


 ダンジョンは階層を追うごとに広がりをみせる。


 地図がない状態だと俺たちのようにはサクサクとは進めないのだ。


 1~3階層ならDランクの冒険者で60日もあればなんとか単独でクリアできるだろう。


 しかし、4階層からはフロアもかなり広くなるしモンスターも強くなっていく。


 ここからはしっかりとパーティーを組んで(のぞ)まなくてはならない。


 それが6階層以上ともなるとCランク以上のパーティーでも攻略するのは一苦労。


 ひとつの階層をクリアするのも何カ月もかかってしまうだろうし、攻略自体を(あきら)める者もでてくる。


 それでもメンバーに『攻撃魔法』が使える者が居ればかなり楽にはなるのだが……。


 魔法が使える者は一握り。そのほとんどが貴族である。


 冒険者で攻撃魔法が使える者なんて皆無(かいむ)に等しいのだ。


 この世界で魔法の素養(そよう)がある者は(わず)か1%しかおらず、さらに攻撃魔法が使える者となると0.1%、1000人に1人という事になる。


 しかし、身体強化が使えるものは冒険者の中にも(まれ)にいる。


 こちらは魔力操作だけだからね。


 ただし、このスキルを取るまでが難しいのだ。独学では無理だし、周りに魔法が使える者なんていないのだから。






 まぁ、苦戦しているわけでもないし、どんどん行けばいいさ。


 しかし、出てくるモンスターがゴブリン主体から『ホーンラビット』や『ブラックウルフ』へと変わってきた。


 ブラックウルフはウルフを一回り大きくした個体で動きも素早い。


 モンスターの動きが速くなったせいでメアリーもすこし手こずっているようだ。


 そこでシロとメアリーを呼び戻し、一旦休憩を入れることにした。


 シロには水をメアリーには果実水をそれぞれ配る。


 「いいかメアリー、これからは動きの速いモンスターとの戦闘もあるんだ。だから魔法で牽制(けんせい)しながらの戦いになっていく。そこでだ、メアリーは風魔法を覚えてほしい。ウインドカッターやエアハンマーは広範囲(こうはんい)の牽制にはうってつけだからな」 


 そのように話してみるが、まだ子供のメアリーは理解できずに首を(かし)げている。


 「つまり、風魔法をおぼえてみんなまとめてドッカーンだ」


 「うん、わかった。ドッカーンだね!」


 これにはメアリーもニコニコしながら(うなず)いてくれた。


 しばらく休んだあと、


 シロに魔法発動のアシストを頼み、この場で風魔法のレクチャーを行っていく。


 ………………

 …………

 ……


 しばらくの間、ダンジョンの壁や岩に向かって魔法の練習をしているシロとメアリー。


 うんうん、いい感じだ。風魔法は無事習得できたみたいだな。


 まだレベル1だが、シロと共に魔法を発動していればすぐレベル3ぐらいにはなるだろう。


 ホント、シロ様様だよなぁ。


 聖獣であるシロは魔力や魔法の制御(せいぎょ)がとてもうまい。


 一緒に使っていると魔力をどのように(あつか)えばいいのかが手に取るように理解できるのだ。


 これはもう『シロの加護』だといってもいい程だよな。






 無理だけはしないようにと注意を(うなが)し探索を再開させた。


 メアリーはシロと共にテテテテッと元気よく駆けていく。


 俺はゆっくりその後を追っていった。


 後方よりメアリーの戦いぶりを見ているのだが、なかなか上手に戦っているようだ。


 わらわらと集まってくるホーンラビット。


 先ずは、シロと一緒にエアハンマーで攻撃だ。


 ──ドウォォン! 


 魔法の発動と同時に四散(しさん)するウサギたち。


 この時点で半数が魔石へ変わり、残ったウサギもヘロヘロの状態だ。


 あとは短槍(たんそう)で止めを刺していくだけの簡単なお仕事だ。


 「…………」


 やっぱ魔法って反則(チート)だよね。


 魔法が使える人間、そのほとんどが貴族なのか。


 圧倒的な力を前に逆らうことって難しいだろうな。


 ()まらない格差と選民思想(せんみんしそう)……か。


 その辺りにも深い闇がありそうだよな。






 シロとメアリーの快進撃(かいしんげき)は続いていく。


 そして8階層も中盤に差しかかったところで。


 んんっ、なんだ?


 メアリーがこちらを向いて手を振っている。


 (そして何あれ、めっちゃ可愛いんですけど)


 あたかもリンクしているように、二つの尻尾が(そろ)って右左にふられているのだ。


 ――シンクロ尻尾だ!


 つい、ほっこり見つめてしまっていた。


 それで、待っていた所へ近寄ってみると……。


 ああ~、ここね。


 この先のルームを覗いてみると例のコロシアムがそこにあった。


 ウサギ共が集結(しゅうけつ)して(ひし)めきあっている。


 その数50匹! 


 不思議なことだが、ここのホーンラビットはコロシアムに足を踏み入れない限り(おそ)ってはこないのだ。


 なので、俺たちはここで再び休憩を入れることにした。


 シロとメアリーには串焼きと水をそれぞれ配る。


 俺も一本頂くことにした。


 みんなで一息入れ、気合を入れ直す。


 (さて、どうしたものか……)


 ウサコロ(・・・・)はまだ早いだろう。(ウサコロ = ホーンラビット・コロシアム)


 『ダメだ!』 と言ったら()ねるだろうか?


 旅に出るのにギクシャクするのも困るしなぁ。


 もう少し機動力があれば…………。






 そこで俺はひとつの案を提示した。


 「メアリー、シロに乗ってみないか?」


 メアリーは中型犬サイズのシロを見て、『えっ?』という顔をしている。


 当然だな、メアリーはシロが大きくなれることをまだ知らないのだ。


 そこで俺は鑑札(かんさつ)の付いた首輪を外し、


 「シロ、フェンリルになってくれ!」


 するとシロは、


 スッスッスッスッスッスッス――――と、みるみる大きくなり4mを越えるフェンリルへと変化した。


 それを真横で見ていたメアリーは目をキラキラと輝かせ、


 「シロ(にぃ)すごーい! かっこいい!」 


 シロの前足にしがみついて大興奮(だいこうふん)の大騒ぎ!


 (うん、まぁ、そうなるよねぇ)


 ………………


 そうして、未だにキャッキャといって興奮冷めやらぬメアリーをシロから引き()がし、


 「シロ、大型犬ぐらいになれるか?」


 シロはコクと頷いてサイズチェンジしてくれた。


 そしてメアリーをシロの背に乗っけてやる。


 メアリーは嬉しさのあまり顔をシロの背中にくっつけてスリスリしている。


 俺はシロの頭に手をのせると、


 「いいかシロ、座席はこう、(あぶみ)はこうだ。そして、両手を放しても落ちないように前にも安全ベルト的にこんな感じか。……できるか?」


 メアリーの安全性を考え、結界魔法によるサポートを提案していく。


 『いっしょ、わかる、おにく、うれしい、あんぜん、いもうと』 


 そのようにシロが念話で伝えてきた。


 (うん、大丈夫そうだな)


 それじゃぁ、行ってみますかね。


 興奮が収まるのを待ってメアリーに短槍を渡してやる。


 「シロが落ちないようにしてくれるから両手でも戦えるぞ。でも基本は相手の首に沿()わす形だぞ。いいな!」


 メアリーが頷くのを確認してからみんなでルームに入っていった。






 メアリーを背に乗せたシロはゆっくりとコロシアムに近づいていく。


 さすがに今回は俺も隣に付いている。


 「まずは魔法だ、エアハンマーでいくぞ。そして、ウサギがかたまっている所にウインドカッターを叩き込むんだ。シロはメアリーの魔力を考えて抑え気味(おさえぎみ)に調整をたのむ」


 メアリーとシロに最終的な指示を出し、そのままコロシアムへ突入した。


 「――エアハンマー!」


 魔法を発動する声がとなりから聞こえてくる。



 ──ドウォォンッ! 



 耳を張る音と共に前方に待機状態(たいきじょうたい)であった20匹程のホーンラビットが後方へぶっ飛んでいく。


 コロシアムの内壁に叩きつけられたホーンラビットは魔石に変わってパラパラと落ちていく。


 「――ウインドカッター!」


 今度は右側の観客席にいた10匹程のホーンラビットが見えない風の(やいば)で切り刻まれていく。


 うんうん、短期間の練習だった割にはなかなかに使いこなしているな。


 ほとんどがシロのお陰であるが……。


 そして戦いは乱戦(らんせん)に突入していく。


 シロはメアリーを乗せて縦横無尽(じゅうおうむじん)に駆けまわる。


 ホーンラビットはその動きについてこれない。


 奴らが突撃しても、その先には(すで)にシロたち姿はない。


 これでは勝負にならないだろう。


 それにシロは(たく)みなポジション取りで、短槍の(やいば)が届く最適な場所へウサギ共を誘導している。


 面白いようにホーンラビットの首が()ねられていく。


 はじめは俺も戦うつもりでいたのだが、どうも出番はなかったようだ。


 まぁ、モンスターが俺を襲ってくることはないので、ゆっくり見物はできるのだが。


 そうこうしている間に残りのホーンラビットも一掃(いっそう)され、コロシアムでの戦闘は終わっていた。


 やはり今回も『銀の宝箱』が出現しているようだ。






 前回ウサコロをクリアしている俺やシロが居たのになぜ?


 そう思われがちだが、ここホーンラビット・コロシアムは『ボス部屋』とは判定基準が違っているのだ。


 では何が判定基準になっているのかというと、コロシアム内でのホーンラビットの討伐数(とうばつすう)である。


 今回でいうと、俺0匹・シロ0匹・メアリー50匹。


 つまり、初挑戦のメアリーが全て倒しているのだ。


 これにより宝箱の出現条件は満たされたことになる。


 ………………


 今は散らばった魔石をみんなで集めているところだ。


 ふ――っ、これで最後だな、ポイっと。


 やっとのことで魔石を集め終えた。


 一息入れたいところだが、みんなの興味はやはり銀の宝箱に向いている。


 いつものようにシロにお願いして(ふた)を開けてもらう。


 そしてみんなで宝箱の中を覗きこんだ。


 すると中からはポーション・20㎝角の麻袋・ブレスレットの3つが出てきた。


 それぞれ鑑定をおこなう。



 ・中級治療ポーション


 ・マジックバッグ小小


 ・”シルバーブレスレット:敏捷+5:サイズフリー”



 なるほど、身体のパラメーターが上がる付与(ふよ)付きのアクセサリーもあるんだな。


 しかし、今回も使える品で良かった。


 マジックバッグはメアリーの腰に、ブレスレットは左腕に付けてやる。


 そしてマジックバッグの中に低級ポーション・中級ポーション・マジックポーションを1本ずつ入れさせた。


 あとは万一に備えて水筒や干し肉なんかも入れさせるかな。


 よし、少し早いが今日のパワーレベリングはこんなところだろう。


 サラに頼んで家の近くに飛ばしてもらった。


 自室に入り、ベッドにメアリーを下ろすと俺もその横に腰掛ける。


 みんなに水を配って一息いれた。


 腰のマジックバッグからインベントリーへ魔石を移す。


 おおっスゲー、今日だけで137個か。


 ちょっとやり過ぎではないだろうか?


 いや、こんなもんだろう。――シロも居るわけだし。


 だんだん常識(じょうしき)から かけ離れていってるよなぁ。(汗)



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