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53 パワーレベリング

 それにしてもシロによるアシストは完璧(かんぺき)だな。


 まったく危なげない。


 よし、そろそろ休憩をいれるか。


 シロとメアリーを呼び戻し毛皮のシートの上に座らせる。


 中央広場の露店(ろてん)で買っておいた果実水(かじつすい)をコップに入れて出してやる。


 ――シロにはにお水だ。


 「メアリー、どうだ。すこしは慣れたか。怖くないか?」


 「うん、怖くないよぉ。シロ(にぃ)もいっしょだから」


 「それでも、槍の扱いには気をつけるんだぞ。ケガするからな」


 「うん、気をつける」


 「ちょっと手を見せてごらん」


 メアリーの(てのひら)を見るとマメがけっこう出来ていた。


 槍の()を力いっぱい握っているのだろう。


 俺はポーションを取り出すとちっちゃな手のマメに塗ってやる。


 「いいかメアリー。はじめは軽く握っておくんだ。そして相手に当たる瞬間に力を入れ、そして少し(ひね)る」


 その場でメアリーを立たせてやらせてみる。


 「そうそう、そこでクイっとだ。うまいぞ」


 俺なりにアドバイスはしておくが槍の先生を早目に探してあげないとな。






 それから再びスライムとコボルトを狩っていき、夕刻前には町へ戻ってきた。


 モヒカン男の防具屋によってメアリーの赤いローブを受け取りにいく。


 (そで)(すそ)は折り返しで処理してくれている。


 これなら再び伸ばすこともできるので、成長(いちじる)しい子供であっても2~3年は着れるだろうとのことだ。


 さっきまでうつらうつらしていたメアリーがついに眠ってしまった。


 そんなメアリーを抱っこしたまま表通りを歩き、


 中央広場の屋台にて串焼きや果実水を補充したのち俺たちは家路についた。


 「シロ、浄化を頼めるか」


 「ワン!」


 自室に入るとシロにお願いして浄化を掛けてもらった。


 すると汗ばんでいた首筋や張り付いていたシャツもサッパリ。


 メアリーをベッドにおろし、木窓を開けて風通しをよくする。


 「シロはメアリーに付いててやってくれ。ついでに虫除けの結界も頼むな」


 俺は裏庭にでると日課になっている素振(すぶ)りをおこなった。


 ………………


 夕食をみんなでいただきリビングでくつろいだあと部屋へ戻ってきた。


 このあとは魔力操作の訓練だが、今日からはメアリーも一緒にやらせるかな。


 「メアリーは魔法を使ったこはあるか?」 


 率直に聞いてみた。


 するとメアリーは少し困ったような顔になり、


 「うん、お部屋をちょっとだけ明るくできるよ。あと、お水も少しだけど出せるの。でも言っちゃダメなんだって、悪い人たちに捕まっちゃうの」


 そう言って(うつむ)いてしまった。


 んん~、誰かに追われていたとか……かな? おそらく貴族(きぞく)がらみだろうな。


 その辺のいきさつは分からないのだが絡んでくるなら蹴散(けち)らすのみ。


 それが誰であろうと……。


 「大丈夫だよメアリー。魔法なら俺もシロも使えるからな。みんな一緒だよ」


 と言って安心させてあげる。


 「じゃあ、シロ(にぃ)も……?」


 シロはコクコクと頷きながらそれに答え、微風を起こしてみせる。


 「ふわぁ~、みんな一緒。みんな一緒だね!」


 仲間がいるとわかって元気が出てきたようだ。


 「じゃあ、今から魔法をもっともっと使えるように練習するからな」


 メアリーは笑顔で頷いてくれた。






 メアリーは身体に流れる魔力をまだ上手く(つか)めていないようだ。


 そこで俺がやっていたみたいにシロにお願いして魔法を使わせてみることにした。


 メアリーは聖魔法にも適性がある。


 (この適性はユカリーナ様の加護と共に増えていたもので、女神さまから授かったのだと思う)


 なので無難(ぶなん)に『クリーン』でいいだろうか。


 この魔法は身体には作用しない浄化の簡易版(かんいばん)だな。


 クリーンのイメージを分かりやすくメアリーに説明したのち、左手をシロの背に置かせる。


 メアリーは右掌(みぎてのひら)を俺に向け、


 「クリーン!」


 すると俺の身体は優しい光のベールに(おお)われ、そして消えていった。


 ――成功だな。


 良かったと思う間もなくメアリーが倒れこんできた。


 「お、おい、メアリー!?」


 少し慌ててしまったが俺はすぐに気づいた。


 (あ~、これって魔力切れだぁ)


 MPの少ない子供のメアリーにはまだ早かったのだ。


 メアリーをベッドに寝かせ俺は反省した。


 (もう少し考えろよ俺。何やってんだよ!)


 とんだ幕切れになったが今日の魔力操作の訓練は終了した。


 そして、――鑑定!



 メアリー・クルーガー  Lv4


 年齢    5

 状態    低迷

 HP   20/22

 MP    1/15

 筋力    9

 防御    5

 魔防    7

 敏捷    11

 器用    7

 知力    11


【スキル】    魔法適性(光・風・水・聖) 魔力操作(3)

【魔法】     光魔法(1)  水魔法(1)  聖魔法(1)

【称号】     大公の庶子、シロの妹、ゲンの家族、

【加護】     ユカリーナ・サーメクス



 おっ、Lv4。またレベルが上がったんだな。


 たしかに、後半はかなり張りきってモンスターを狩っていたからなぁ。


 驚いたことにメアリーは聖魔法(せいまほう)を覚えていた。


 (俺だってまだなのに……、すこし悔しい)


 MP切れを起こしても失敗判定にはならなかったみたいだ。


 聖魔法はいいな。


 アンデッドなんかは一発だし、女の子だからクリーンは助かるだろう。


 魔力操作(まりょくそうさ)も3に上がっている。


 (こちらはシロのお陰だな)


 これならちょっとした攻撃魔法も試していけそうだな。


 その前にレベルを上げてMPを増やしていかないとな。


 とにかく、また明日だな。






 ぺしぺし! ぺしぺし!


 ううん~、もう朝かぁ? 木窓を開ける。


 暗いなぁ。雨がパラパラ降っている。


 するとメアリーも目をこすりながら起き出してきた。


 散歩には出れないが朝食の時間まで魔力操作の訓練をみんなでやった。


 昨日はあの一件で訓練も途中だったからな。


 しかしメアリー、魔力回路が広がった?


 魔力の循環(じゅんかん)がスムーズになっているよな。


 朝食を済ませると、俺たちはローブを羽織り家をでた。


 赤いローブ姿のメアリーがかっこいい! そして、なにより可愛い! 


 ――買って正解だったな。


 そのまま俺たちは人のいない路地裏へ入り、


 (サラ、3階層へ頼む)


 [はいマスター。了解です]


 すぐに3階層の階段下に転移してきた。パワーレベリング2日目のスタートだ。


 「さあ、今日は3階層からいくぞ。ゴブリンも出てくるから慎重(しんちょう)にな」


 メアリーに注意を(うなが)短槍(たんそう)を渡してやる。


 するとシロと共に元気に駆けていく。


 まぁ、シロに任せておけば大丈夫だな。


 ………………


 ダンジョン・サラと情報交換(じょうほうこうかん)や打ち合わせを行いながら、俺はボッチらボッチらと(かまど)を作っていた。


 すると、半刻 (1時間) 程してシロとメアリーが戻ってきた。


 まずは水分補給だな。インベントリーから水筒を出して渡してやる。


 それを両手で受けとってグビグビ飲んでいるメアリー。


 一呼吸おいてから、


 「ゲンパパ宝箱があったよ。いっしょに来て!」






 ちょっと待った! 宝箱は……、まあいい。


 でもゲンパパ(・・・・)ってなんだぁ? 


 (俺はパパなのか?)


 あ~、これはきっとカイアさんだなぁ。


 うう~ん、と考えてる間にもメアリーに手を引かれる。


 「へいへい、行きますよぉ~」


 セ○ラさんにおだてられた訳ではないがメアリーについていく。


 連れてこられたのは少し広めのルーム。奥の方にそれはあった。


 木製の宝箱だ!


 周りには(おびただ)しい数の魔石が転がっている。


 これをシロとメアリーが倒したのか? この数をか?


 ――背中がゾクッとした。


 シロに任せてホントに大丈夫なんだよねぇ。無理してないよねぇ。


 メアリーはニッコニコである。――やれやれ。


 で、宝箱だよな。


 いつものようにシロに開けてもらい、みんなで中を覗き込む。


 宝箱の中にはポーションが1本とシルバーの指輪が入っていた。


 そのまま鑑定してみると、


 ”魔力回復ポーション:MP20” 


 ”シルバーマジックリング:MP20増:サイズフリー” 


 なるほど……。


 ポーションはともかく、このマジックリングは……ミソロジー級かそれ以上だろう。


 こんな低階層で出るような物ではないはず。


 疑問に思った俺がダンジョン・サラに(たず)ねてみたところ。


 このルーム自体が『隠し部屋』になっており、一定以上の強さと幸運がなければ立ち入ることは出来ないとのことだった。


 まあ、こっちにはシロちゃんが居るからねぇ。そりゃ幸運だわ……。


 とりあえずは()めておくか。


 シロもメアリーも頭をいっぱい撫でてあげた。


 一緒に並んで尻尾をシンクロさせている姿は何とも(なご)ませてくれることよ。


 リングはメアリーに付けさせる。


 (午後からは魔法も試していくとしよう)


 シロにもアシストをしっかりお願いしておいた。






 そして俺たちは4階層に入った。


 少し進んだところで昼食をとることにした。


 さっき組んでおいた(かまど)をインベントリーから出し(まき)に火をつける。


 岩塩をまぶした肉を金網の上にのせジュージュー焼いていく。


 はいはいそこの二名! よだれよだれ!


 お肉はみんなでおいしく頂きましたぁー。


 んっ、モンスター? 気にしない気にしない。


 シロがいるから大丈夫なのだ。


 魔力を少し外に()らすだけで雑魚モンスターは寄りつきもしない。


 まあ俺が指示をだせば、このルームにモンスターが入れなくすることだって出来るんだけどね。


 たらふく食べたらお昼寝だ。


 伏せをしているシロにだらんともたれ掛かり眠っているメアリー。


 シロも気にした風でもないし。ホントに兄妹のようだな。


 ………………


 起きたら攻略再開。


 また、シロと並んで駆けていく。


 まるで公園を砂場に向かって駆けていく子供のようだ。


 短槍を手に持っていなければだが。


 俺もサラと駄弁(だべ)りながらゆっくり後をついていく。






 おっ、おおー。


 シロが教えているのだろう。ときどき魔法も使っているみたいだ。


 しっかり間をおいて使っているようだし、これなら問題ないだろう。


 それから一刻 (2時間) 程過ぎたころで……。


 とうとう5階層のボス部屋まで来てしまった。


 まずは本人の意思確認。


 「メアリー、この先にはつおーいボスがいてだな……」


 「つおーいボス、メアリーがやっつける!」


 う~ん。やる気満々(・・・・・)だなぁ。アラレちゃんのようである。


 しかし、今回シロは入れないぞ。


 いや、正確には入れるのだが……。


 そうするとボスも出なければ出口が開くこともないわけで。


 シロはここを一度クリアしているからな。


 一方、俺はダンジョンマスターなので何処にでも入ることができる。


 ただ、俺が手を出してしまうとその時点で戦いは無効。やり直しとなる。


 だから、すべて一人で対処しなくてはならない。


 ――やれるのか? 5歳児だぞ。


 まあ5歳児といっても ここは異世界だし、メアリーは獣人(じゅうじん)ではあるのだが……。



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script?guid=on挿絵(By みてみん)
プチ プチ(。・・)σ|ω・`)ノ おっ押して。押して~!
小説家になろう 勝手にランキング
シロかわいい! と感じたら押してください。シロが喜びます。U•ɷ•)ฅ
挿絵(By みてみん)
作:管澤捻 さま (リンク有)
挿絵(By みてみん)
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