3 女神さま 2
そっかぁ、シロがそんなことを言ったのか。
ダメだ、また涙が止まらなくなった。どうすんだよ。
何言ってやがるんだシロ。こんなに泣かすなよな、バカやろうが。
よし、こうなったら追っかけて行くしかないよな。
待ってろよシロ。今行くからな!
まずは向こうがどんな世界か聞かないことには何も始まらないよな。
異世界か……。
若干の憧れもあるしな。
魔法もあったりするのかな? ラノベに書いてあるような所なのかもな。
ドラゴンいるかな?
お金はどんなかな? 金貨や銀貨だったりするのかな。
人間以外にも亜人とかいたりするのかな?
勇者とか聖女さまなんかもいたりして。
ご飯は、黒パンは、エールも…………
「高月様。高月様。たかつきさ~ま~! 大丈夫ですか?」
女神さまは椅子から立ち上がって叫んでいた。
「はい、私が高月です。いろいろすいませんでした~」
またしても、もの思いに耽っていたようだ。女神さまごめんなさい。
「どうかなさったんですか? 涙を流したかと思えば、先程は何やらニヤニヤされていたようですけど」
ひぇ~。ジト目、ジト目ですよ!
そのスジの方にとってはご褒美かもしれません。
しかし、美人さんだとどんな顔をしても許されるものだよな。
おっといけない。いろいろ聞いておかなくては。
「すいません、こちらの世界は具体的にどのようなところなのでしょうか?」
すると女神さまは、今なおジト目を崩さないまま話しだした。
「こちらの世界サーメクスは地球とほぼ同じ球型の惑星になります。惑星には大きな大陸が4つあり、交易が盛んなところもあれば、閉鎖的なところもございます」
さらに続けて、
「聖獣であるシロさんが転生された地域はもっとも大きな大陸にあたります。その大陸には大小様々な国があり。そこでは人族をはもちろん、いろいろな種族の亜人たちが共に生活しております。それからこの地域の文化水準ですが、地球でいいますところの『中世のヨーロッパ文化』と、いったところでしょうか」
時間が経過いるのに何故だか冷めない紅茶をすすりながら、俺は女神さまの説明に耳を傾けていた。
「それに、こちらの世界は大気の中に魔力が豊富に含まれています。このことから魔法や魔道具なども積極的に研究され使われております。魔法に関していえば、適性にもよりますが、人族ですと100人に1人ぐらいの割合で使えるようです。亜人族に於いても、妖精族のエルフは魔法適性を有している者が多くいるようです」
おお、やっぱり魔法があるのか。俺も使えるようになれるといいな。
それに魔道具もあるのか。男にはロマンだよな。
「ざっとですが、このような感じになります。それから、あちらで困らない程度のものは用意させて頂きます。シロさんにくれぐれも宜しくと言付かっておりましたので」
うぅ、シロ。おまえどんだけ優しいんだよ。――あなたが神!
いやいや聖獣さまだったよな。早く会いたいなぁ。
「それでは高月様、地球かこちらのサーメクスか、お決まりになりましたか?」
「はい! 俺はシロを追いかけて行こうと決めました」
「そうですか、それはシロさんも喜ばれることでしょう。では、これより諸手続きのほうを行って参ります」
ようやく元の笑顔に戻った女神さま。あまり困らせないようにしないとね。(汗)
女神のユカリーナさんはテーブルの向こうでタブレット端末みたいなものをカチカチと操作している。
しばらく端末の操作をやっていた女神さまだが、ようやく視線をこちらに向け話し始めた。
「諸手続きのほうは概ね終了いたしました。後はスキルをいくつかお付けいたしますが、希望があればお聞きします。ただし希望に添えない場合もございますので予めご容赦くださいね」ニコッ。
うお~、これまた眩しい!
じゃない。いろいろ質問しなくては。
「女神さま、いくつかお聞きしたい事があるのですが宜しいですか?」
「はい、何なりとお尋ねください」
「まずはですねぇ、今から行く大陸には魔物みたいなものはいるのですか?」
「いますね。動物や獣が魔力の澱みにより魔獣化したものや、あとはダンジョンですね。あまり人が入らないダンジョンでは魔獣が外まで出てくる場合もあります」
うわぁ、やっぱり魔獣とか居るのか。
これは相当気を付けないと危険だぞ。
それに、ダンジョンまであるのか。あまり近づきたくはないな。
「なるほど。次はですね、俺の他にも転生者や召喚者っていたりするのですか?」
「転生してくる方はたまにいらっしゃいますが、召喚者は私を通してはいませんねぇ。ただ違法な召喚陣を利用して地球から召喚している国が僅かですがあるようです。見つけ次第、潰すようにはしているのですが……」
ニコッと微笑む女神さま。目がまったく笑ってない。怖ッ!
ちょっとブラックなそんな顔もなさるんですね。おお、くわばら、くわばら。




