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45 台座の玉(ぎょく)

 なるほど、そうだったのか……。


 ダンジョン・カイルの行動はわからないこともないけれど、根本が違っているよなぁ。


 ――人間相手だと。


 状況は理解することができた。


 (まずは、鉱山(こうざん)からミスリルを全部引き揚(ひきあ)げろ。そして、小指大 (9mm角) の物を宝箱やフロアボスを倒した報酬として10回に1個ずつ混ぜるんだ。ダンジョン・カイルにはそのように伝えろ!)


 [イエス、ボス!]


 ボスじゃなくてマスターな。


 (それから、ここから西に少し行ったところに町があるだろう。

 そこでも、今のようにサラやカイルと話せるのか?)


 [はい、すぐそこの人間の町であれば地脈(ちみゃく)が通っておりますので、お話しすることやダンジョン内に転移することも可能です]


 (それでこれからの事なんだが、俺たちは一応ダンジョンの調査でここに来ている。それでダンジョンモンスターと戦えないのでは話にならん。よって、これから明日ここを出るまでは普通に対応してくれ)


 [ここのモンスターはダンジョンマスターを襲うようには出来ておりません。ですが同行者であれば可能です。それでよろしいでしょうか?]


 (うん、それで頼む)


 そして、長いインターバルを明けた俺たちは軽く食事をとったあと再び階層攻略(かいそうこうりゃく)へ乗りだした。


 今回はアーツを先頭に進んでいる。


 まだ低階層なので罠などはない。


 聞かれた時だけ、『ある・なし』の指示を出すようにして攻略を進めていった。






 俺たちは早くも5階層までやってきた。


 出現するモンスターがスライム・コボルト・ゴブリンに加えホブゴブリンやウルフ系が出るようになった。


 「こっ、ここはなんだ? デカい扉があるぞ!」


 先頭を行っていたアーツが扉に驚いている。相変わらずオーバーである。


 はいはい、ボス部屋ね。


 そこには高さ3mはある鉄製の扉が鎮座(ちんざ)していた。


 中にはボスである『ゴブリンジェネラル』の他、お付きのゴブリンが3匹配置してある。


 ――初心者向きでごぜえます。


 この程度なら下級冒険者が立ち向かったとしても、頑張ればなんとか倒せるだろう。


 それに、ここのボス部屋にはエスケープゾーンが新たに設置されている。


 無理だと思った時点でそのエスケープゾーンに飛び込めば、一瞬で迷宮入口に転送されるようになっているのだ。


 まさに至れり尽くせりの親切設計である。


 ゴブリン3匹とゴブリンジェネラルはアーツがサクッと倒した。


 そこで俺たちは転移陣(てんいじん)のテストを兼ねて、一旦迷宮の入口へ戻ってみることにした。






 5階層のボスを倒すと出口の扉が勝手に開いていく。


 俺たちはモンスターが落とした魔石を拾い集めるとボス部屋をでた。


 そこは階段の踊り場(おどりば)になっており、結構な広さがある。


 左手には6階層へ下りる階段が見えている。


 そして、フロアの中央には黒曜石を思わせる真っ黒な石の台座(だいざ)があり、その上には大理石のような乳白色の(ぎょく)が乗っていた。


 (おお、これがダンジョンの入口と階層を結ぶ転移装置だな)


 上の玉はホワンと淡く光っている。


 これに手を置くことで階層の攻略(こうりゃく)が記録され転移が可能になるのだ。


 さっそく一人ずつ玉に触れていく。


 触れると(ぎょく)の放っていた光が少し強くなった。


 しばらくすると頭に【0】・【5】選択できる2つの数字が浮んでくる。


 今俺たちは5階層に居るため【0】の数字のみが選択可能だ。


 そこで頭の中で【0】を強く意識すると次には Yes/No と浮かんできた。


 とりあえず今は No を選び玉から手を離した。


 【0】というのはダンジョンの入口を表しているらしい。


 なるほどね、一般的にはこのようになるのか……。


 そして、シロを含めた全員が転移装置への登録を終えた。






 ちなみに、俺の場合はリストに関係なく全80階層とリビングに行けるようになっている。


 リビングルーム?? ――今度行ってみよう!


 それで転移装置の操作なのだが、せっかくなので皆で順番にやってみることにした。


 まずはコリノさん、ダンジョン入口への転移をお願いした。


 コリノさんは台座の(ぎょく)にそっと手を置くと目をつぶった。


 しばらくすると台座の前に魔法陣が出現したので、皆でその魔法陣の中に入ると迷宮入口まで戻ってくることが出来た。


 アーツはおっかなびっくり、キョロキョロと周りを見まわしている。


 シロは後ろ足で耳のうらをカキカキしている。


 (無事に転移できたみたいだな)


 次回、ダンジョンを訪れた際は迷宮入口より記録した階層まで任意(にんい)に転移出来るようになるのだ。


 ただ、その階層に到達(とうたつ)していない者が含まれている場合は転移陣は作動しないようになっている。


 ズルは出来ないようになっているのだ。


 帰ってきた場所はダンジョンの階段前広場であり、迷宮入口に向かって右隅のエリアであった。


 反対側の左隅(ひだりすみ)のエリアにもいつの間にか転送するための台座が設置されている。


 なるほど、あちらが入場用になるのだろう。


 耳をカキカキしていたシロだが、立ちあがり体をブルブルさせると軽快な足取りでこちらに寄ってきた。


 「シロおいでー」


 撫でてやろうとその場にしゃがみ込んでシロを呼ぶ。


 シロは俺の前まで来てお座りをすると、口からペッと何かを吐き出した。


 んっ、なんだ? 銀歯か?


 シロを見ると、ブンブン尻尾を振っていて何だか得意げだ。






 キラリと白銀色に光っている金属粒を拾い、(てのひら)にのっけてよく観察する。


 小指の爪ほど大きさである。


 「おおっ、これってミスリルじゃないか? そうかボスを倒した際にドロップしていたんだな。よく見つけたなぁ」


 そう言って前足のつけ根あたりを両手でもふもふしながら褒めてあげる。


 それを聞きつけたアーツが顔色を変えてこちらに寄ってきた。


 「今のはホントか? 本当にミスリルなのか!」


 必死のアーツに俺は、


 「ああ本当だ。――ほれっ!」


 その小指の爪ほどの金属粒を下手投げでホイッと投げてやる。


 「ばっ、ばか。投げるなぁ~」


 アーツはワタワタとお手玉しながら受け取っていた。――おもしろい。


 あまりに小さくて掴み辛かったのだろう。なにせアーツはデカいからなぁ。


 今回、魔石と共にミスリルが出たのは初到達(はつとうたつ)のボスだからだ。


 これより後は3%の確率で出るようにしている。


 ただし、これにも制約がある。


 一度、その階層のボスと戦ってクリアした者がメンバーに入ってるとボスは出ないようになっている。


 みんなチャンスは1回きりなのだ。






 ――ミスリル鉱石。


 3%の確率とはいえかなり話題になるだろう。


 それに、あちらこちらで少しずつ出るようにしたから、冒険者がこぞって押し掛けてくるだろうな。


 これからも、まだまだ特典(とくてん)を考えていかなくては……。


 ここの広場でクレープの屋台とか出したら売れるんじゃないか?


 孤児院(こじいん)の子供たちなんかを売り子にしたら教会も助かるだろうし。


 それぞれのダンジョンが(にぎ)やかに盛り上がってくれると嬉しいなぁ。


 ただダンジョンでは掛け金として命をレイズしていくのだ。


 当然、その中には失う者も出てくる。


 身近な者がそうなる可能性だってある。


 ……やるせない事だが覚悟はしておかないとな。






 そのようにいろいろと考えを(めぐ)らせていると、


 「おお~~~い! おお~~~い!」


 目印の(はた)が立っている辺りから手を振りながらこちらに近づいてくる者がいた。


 「先発されてた冒険者ご一行様ですかぁ~?」


 そう言って近寄ってきたのは冒険者ギルドの制服を着た元気な女の子だ。


 「ああ、そうだ! 私はアーツという」 


 アーツが短く答えている。


 「いきなり現れたからビックリしちゃいましたよ~」


 と、ハイテンションのギルド職員。


 「まぁ、今しがた5階層から戻ってきたところだな」 


 アーツはちょっと引き気味に答えている。


 「えっ、ええぇぇえええぇええ。5階層!? 凄いです。素晴らしいです。かっこいいです~」 


 さらにテンアゲになってヒートアップする職員。


 そこで俺はゆっくりとした口調で語りかける。


 「ちょっと待ってくれ。俺たちは今ダンジョンから戻って来たところなんだ。少し休みたいのだが良いか?」


 「ご、ごごごめんなさい。わたしは新人ギルド員のエリカといいます! いま副ギルド長を呼んできましゅのでゆっくり休まれてお待ちください」


 自分で新人ギルド員(・・・・・・)といってしまったエリカは、俺たちにペコリと頭を下げると走ってどこかへ行ってしまった。


 カミカミながら、『エヘッ!』っと言って自分のこぶしで頭をたたく姿が少しあざとかったが……。


 元気がいいので許すことにした。






 それから俺たちはお茶でも飲んで一服しようということになった。


 ここ、ダンジョン前広場でだ。


 (お茶を沸かすため、ちょっと散らかしてしまうけど、いいか?)


 [どうぞご自由になさってください。後はそのままで放置して頂ければこちらで片付けはやっておきますので]


 だそうだ。まったく良く出来たダンジョンだよ。――お前さんは。


 サラに断りを入れた後、インベントリーから適当な石を出していき(かまど)を組んでいく。


 「おっ、おい! ここでそんなことして大丈夫なのか?」


 「ああ、大丈夫だと思うぞ。許可はとってあるから」


 「はぁ? 許可?」


 「まあまあ、いいからいいから」


 階段前のフロアは30m真四角、900㎡程の広さがある。


 ざっと見た感じだが、なかなかに広い。


 床は大理石(だいりせき)のようにツルツルだし、(ちり)ひとつ落ちてないのだ。


 普通はこんな綺麗な床の上で竈も何もない(・・・・・・)と思うが、サラがいいと言うんだ問題はないだろう。


 お湯が沸いたので茶こしをつかって紅茶を入れていく。


 今回はポットで淹れているので丸い球形の茶こしだな。


 皆に紅茶を配りシロには美味しい水を与えて、また~りティータイムを楽しんだ。


 それから四半刻 (30分) 程過ぎた辺りでようやく2人のギルド員がでやってきた。


 その内の一人は先ほどの新人の子で、もう一人はナイスミドルな女性だ。


 おそらく、こちらが副ギルド長なのだろう。


 「いやぁ、お待たせして済まない。私はモンソロの冒険者ギルドで副ギルド長を務めるジョアンという者です」 


 そのように自己紹介されたので、こちらも挨拶かたがた名乗っていく。


 「私達はダンジョン調査隊の後続部隊です。今より1刻ほど前にこちらへ到着し、ダンジョン周辺の地形や状況を調査していたところです」


 ジョアンさんはこちらに来てからの経過を話してくれた。



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