13 お金
俺たちは今、野営地を引き揚げ、街道を北へ進んでいる。
シロも俺の3歩先を馬と並んで軽やかに歩いてる。
真ん中に1頭の馬が引く幌馬車がありマクベさんが御者をしている。
奥さんのカイアさんは馬車の中だ。コリノさんは今日は外を歩くようだ。
俺とシロが馬車の右側で、コリノさんは左側を歩く。
矢筒を背に、大弓は左手に持ち肩に掛けている。
俺としてはあの耳が気になるのだが、まだ何も聞けてはいない。
まぁ、そのうちだ。今日も天気が良いし元気だして行きましょう!
しかし、野営地を出る前には一騒動あったのだ。
いざ出発しようとしてもマクベさん家の馬が動かないのだ。
この原因はシロにあったのだが。馬はシロに怯えてしまって動けなかったようだ。
ホントに固まってしまって1歩も進まない。
シロはただそこに居るだけだ。お座りして見守っている。
特に威圧とかもしてないようだし、慣れるまで仕方がないのだろうか?
皆もどうしたものか困り果てていた。
う~ん、俺はしばらく考えたのち、シロを呼び寄せた。
「シロ、もう少し その外に出ている魔力を抑えることって出来ないのか?」
実は今日の朝からシロから立ちのぼる靄のようなものが何となく分かるのだ。――たぶん魔力だ。
シロ自身もまったく無意識なのだろうな。
シロは首を左右に振り自分の体を見回すと魔力を抑えるように意識したのだろう、ス~と放出されていた魔力が霧散していった。
程なくして馬は動けるようになったのだ。
まぁ、あのまま町や村へ入ったら大変な事になっていたかもしれない。
その辺も含め、いろいろと確認していかないとダメだな。
因みに、町までは馬車で2日の距離にあるらしい。
今朝の解体作業や出発時の遅れなどもあったので、雨が降らなければ3日で行けるということだ。
それで荷物を積み込む際に、
「こんな大量の革、悪くなったりはしないんですか?」
と気になったので聞いてみた。
するとマクベさんは馬車から茶色のバッグを取り出してきて、
「こいつが有るから問題ないんだよ」
見せてきたのは拡張魔法が付与された魔法鞄だった。
しかも、時間経過が遅くなる魔法も付与されておりとても重宝しているそうだ。
また、革の代金を貰う際にこの国の通貨についても教えてもらった。
ここクルーガー王国の通貨の単位は『バース』で王都の名前にもなっているのだとか。
通用硬貨は全部で7種類。
下から、銅貨 大銅貨 銀貨 大銀貨 金貨 クルーガー金貨 白金貨となる。
それぞれが10枚で上の硬貨へとあがっていく。とても分かりやすいと思う。
町の宿屋で400バースぐらい。通りの串焼きが30バース。安くて固い黒パンは3バース。
まぁそんなものらしい。ということは1バース=10円ぐらいの感覚でいいのかな?
う~ん、まだよく分からん。
クルーガー王国貨幣制度 単位バース
白金貨 1,000,000 バース
クルーガー金貨 100,000 バース
金貨 10,000 バース
大銀貨 1,000 バース
銀貨 100 バース
大銅貨 10 バース
銅貨 1 バース (1バース:10円ぐらい)
因みに革の引き取り価格はカモドオオトカゲが2000バース、グレーウルフが200バース、ブラックウルフが500バース、ハイウルフが5000バースであった。
大銀貨を10枚と銀貨を1枚もらった。
大銀貨はアメリカの『モルガンダラー』 (西部開拓時代) ぐらいの大きさかな3.5㎝ぐらい。銀貨は100円玉ぐらいだな。
なんだかまじまじと見入ってしまった。
大銀貨の表は誰かの肖像の横顔、裏は何かの鳥がそれぞれ彫られている。
ズッシリとしていてかっこいい。
出来れば、いろいろな国のコインも見てみたいものである。
2時間ほど進んで小休止する。
馬もたびたび休ませないとバテてしまうらしい。
マクベさんが馬車から桶を2つ馬の前にならべる。飼葉もこまめに与えるそうだ。
なんでも馬は少しずつしか食べられないのだとか。
俺たちも木陰に入り水を飲んで一息いれる。
この今飲んでる白湯なのだが、
シロに頼んだら良いんじゃね? と言うことで川べりにて浄化してもらった。
鑑定しても、”水:最良 飲水可” と出たのでまったく問題ないようだ。
飲んでみたが凄く美味しい!
こんなことなら早く頼めば良かった。――シロ凄い。
時空間魔法も歩きながら検証している。
まずはインベントリーだ。手に持った銀貨を入れたり出したり。
語呂は卑猥なのだが仕方がない。――検証なので。
右手からインベントリーに入れ左手に出したり。
背中のダッフルバッグからナイフをインベントリーに入れたり、イメージでいろいろ出来るようだ。
最終的にはインベントリーを介さずに出来るようになった。
まあ、実際はインベントリーを通して行っているわけだが、よりスムーズになったということだろうか。
背中のバッグから一瞬で手に出したり、下に落ちている物をバッグに入れたりなどなど。
これで手品し放題だな! ――フフフッ♪
次はやはり出し入れできる距離だよな。
『鑑定』 ではしてやられたが……。
いまはゼロ距離で、足先に触れた小石などを吸い込んでいる。
シュンシュン、シュンシュン、
吸引力を落とさずにどんどん吸い込んでいく様は、まるでダ○ソンだな。
小石ー24個
小岩ー2個
このように割とアバウトにカウントしてくれるので簡単でいいな。
インベントリー内、項目一覧の最後にはゴミ箱アイコンもある。
ゴミ箱使用時に捨てたものはどこに行ってしまうのだろう。
亜空間、それとも原子分解されてしまう?
いささか不安ではあるが。気にしない 気にしない。
それでダ○ソンよろしく検証を続けていると、なんとか2mの範囲までは入れられるようになった。
ただ、地面から生えてる草木はダメみたいだ。
薬草採取で無双できるんじゃないかと思っていただけに……。残念!
時空間魔法は魔法と出ているけど、インベントリーに関してはスキル扱いのようだ。
出し入れしたあとでMP (マジックポイント) の数値を確認してみたところ減ってはいなかった。
あとはどれくらいの収納力があるかだけど。
うん、これでまた夢が広がるな。




