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虫取り網に捕まってしまう前に

隔離華症

作者: Shion

男の日常。朝6時前頃に起床し、顔を洗い仕事へ向かう。帰宅し、早めに寝る。そんな日常だ。

彼は夜に眠れなかった。理由は明らかである。隣の家の猫の鳴き声が耳に鳴り響くからである。

男は不快感を隠せなかった。それが1日で終わるはずもなく、次の日も、その次の日も、猫の声が鳴り続けた。我慢が出来ず紙を手に取りペンを持つ。

「こんにちは。隣に住んでいる者です。最近、夜に猫の鳴き声が聞こえ、眠りにつけないことが多くあります。難しいとは思いますが、少し静かにはできないでしょうか。」

その手紙を次の日の朝、仕事へ向かう次いでに隣の家の郵便受けに入れる。そのままいつものように、家に帰る。そうしてその日の夜には何故か、猫の鳴き声が聞こえなかった。 よく分からないが、手紙を出してみるもんだなと感心をした。次の日の朝、いつも通り起床し、顔を洗い、飯を食べ、外に出ると男は尻餅をついた。

家の玄関前に猫が倒れていた。血を垂らし、死んでいるようだった。男は気味を悪くし、足早に仕事場へ向かった。そうして鬱な気持ちを抑えながら足を進め帰宅していると、玄関前には朝にあった猫の死体は無くなっていた。血もなく。男は不思議に思った。誰かが死体を回収したのだろうか?それとも死体は男の幻想だったのか??どちらかは分からないが、玄関前に猫がいなくなった事実だけを受け止め、半分安堵を抱きながら家に帰った。いつものように眠り、いつものように起きる。仕事へ向かうために玄関を開けると、また猫の死体が存在した。男は華麗に無視をして、向かう。なぜ無視するのだろうか。それはもう朝に死体が置かれている生活に慣れているからである。もうおよそ1週間程であろうか。毎日朝家を出ると目の前に佇んでおり、家に帰ると無くなっていた。そんな日常に慣れを感じている。彼は仕事場へ向かう。歩いていると、掃除をしている女に睨まれる。恐らく猫の死体が噂として広まっていたのだろう。道を通る人からすれば、毎日同じようにある家の玄関に猫の死体が置かれているのだ。彼女は恐らく僕が犯人だと思っているんだろう。そう思っても仕方ないのかもしれないが、彼女の僕へ向けた目は冷たかった。男は嫌な気持ちで仕事場へ足早に向かっていった。

仕事を終え、家に帰ると死体は無くなっていた。まあいつも通りのことなのだが。もはや。彼は家に入り、飯を食い風呂に入る。そうして布団を敷いていると隣の家から泣き声がした。これまで1週間近く無かった声が再び聞こえる様になると、やはり良い気持ちにはならない。手紙を再び出そうか迷ったが、男はそのまま眠りについた。次の日の朝、彼が目を覚ました。流れるように時計を眺めると午前5時半頃だった。いつもよりも少し早い。欠伸をしながら外へ出ることにする。玄関を空けると、そこにはガムテープが置かれていた。彼は少し驚いた。今まで猫の死体があったのに驚かなくなった自分がガムテープで驚くのか??そのまま何となしに隣の家を見ることにした。玄関先を曲がると衝撃の光景があった。 掃除をしていたあの女が倒れていいるのであった。腕は後ろに回されガムテープで固定されていた。首にはしめ縄で締められた跡があり、顔は青白くなっていた。彼女の隣には手紙が1枚落ちていた。恐る恐る手に取り開くと、

「これで満足カ?」と書かれていた。

男は震えが止まらなくなった。男は震えが収まらないまま、急ぎ足で家に戻った。ガムテープをどこかに投げ飛ばし家の中に入り鍵を閉めた。しかしそこにあった男の顔はどこか笑みが零れていた。笑いの対極は恐怖である。本当に怖くなった時に、笑みが訪れるのだろうか。彼は涙目で布団に潜り込み忘れようとした。しかし忘れることは出来なかった。あれだけ印象的な物は忘れることは出来ないであろう。彼の人生に大きなインパクトを残したそれは心に強くこびり付いた。そうして時が流れた。外は騒がしく、家にはチャイムが鳴っていた。慌ただしく玄関に向かいドアを開けると警察と思わしき2人組がいた。恐らく死体の件だろう。話を聞くと、話が聞きたい。任意だ。と言っていたらしい。別に困ることもないので警察署にパトカーに乗って向かった。彼は警察署に着くと、ここ1週間で体験した全てのことを赤裸々に話した。話している途中も恐怖で体が震えていた。警察官は深刻そうな顔でメモを取り、隣の警察官は緑の紙を見ながら僕の顔を睨みつけた。僕に罪がないことが恐らくわかったのだろうか、今日は帰っていい、と言われた。彼は足早に家に帰り、恐怖と戦いながら眠った。




そうして次の日の朝、彼は首を吊った状態で見つかった。何故か笑顔であったらしい。彼の部屋にあったのはしめ縄とガムテープと手紙が3通分。

そして後から知った話なのだが、あの男が生きていた約10年までに隣の家に住んでいた方は亡くなっていたらしい。そしてその方は大の猫好きであったそうだ。

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