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 ナノルルは空を飛べないので地上を進むしかない。

 故に今はナノルルお手製の馬車に乗っていた。


 魔石を原動力にした馬車は()()()()()


 正確には馬車の箱だけが一定の高さから動かずに水平方向のみ動いていた。


「快適だ……」


 魔物と全く遭遇しない訳では無いけど、馬車にかすり傷ひとつ付けられない魔物なら相手しなくても素通りする。余程重たくて大きな魔物じゃないなら吹き飛ばすか避けるか出来るのだ。


 更にこの馬車は幾つかのパーツに分けられているので付与された効果がパーツの分だけ存在する。

 だから速度、揺れ、室温などなど、ナノルルが移動手段として造ったのだから惜しげもなく彼女の技術が使われている。


「マスターに満足してもらえて良かったです」

「でも、この広さ……何をイメージして造ったの?」


 広さを変える魔法具として収納庫が最も有名だ。しかし、収納庫と同じ付与をしても生き物を入れることは出来ない。


 だから馬車の箱の大きさは見た目より少し狭い。精々6人座るのが限度だった。


「実は、脚がリクライニング可能で……このようにベッドとして活用出来ます」

「おー」


 ナノルルが実際にリクライニングを起動すると見事に2人くらいは寝られるようになった。


「この箱には窓がありません。なので外から見られることを気にしなくても構いません」

「?ああ、確かに寝顔が見られることはないね」


 普通は窓にカーテンでも引けば見えることもないけど、窓にしようとすると些か耐久性が不安なんだとか。


「……鉛直方向の振動は一切なく、水平方向の揺れも進行方向にしかありません」

「頭の位置さえ気をつければ良いってことだね」

「ここは防音ではありませんが、すぐに過ぎ去る通行人が私とマスターだと気付くことはないでしょう」

「移動速度が速いからちょっとしか聞かれないってことか」


 何かを話していたとして、部分的に聞かれたからと言って普通は話の全容までは分からない。だから気にせず何でも話す事が出来るって訳だ。


「そして、マスターと私以外ここにはいません」


 ナノルルが優しく僕を押し倒す。


 銀色の瞳が真っ直ぐ僕を見つめている。


「しょうがないなぁ」


 そう言って僕は服をはだけさせた。


「ほら、いいよ?」


 ナノルルの頭を抱き寄せる。


「マスター」


 僕の首すじに顔を擦り付ける。銀色の髪が擽ったい。


 ふと思ったんだけど、この馬車、誰がどうやって操縦しているんだろ?


「この馬車ってどうやって操縦して──」


 一瞬浮遊感に包まれると馬車が停止したのが理解出来た。


「?目的地まではもうしばらくかかるはずですが……少し外を見てきます」

「僕も行くよ」


 服を整えて外へ出る。すると、眼前から先は壁だった。


「行き止まり?ですが、地図では何も無かったはず……」

「ちょっと上から見てみる」


 上から向こう側を見れば何か分かるかもしれない。


「私もお願いします」


 ナノルルを後ろから抱きしめる形で持ち上げる。


 飛行スキルで上昇していくと綺麗な正方形の箱が見えた。


 事前情報からしてこれが出来たのは最近のはず。正直に言えば邪魔だ。


 しかし、下手に壊す訳にもいかない。


 それが誰による仕業だったのか、いずれ分かる。なんとなくそんな予感がした。



 ハイネ視点


 俺は個室のあるスイーツ店に入ると適当に注文を済ませた。カルナとメトは俺の両サイドで警戒している。


「それで、本題だが……」


 俺はそう言ってロケットペンダントを見せた。


「これのチェーンを交換したくてな」

「なるほど、今時期の流行り物か。そのくらいなら任せてくれ。仲間に腕利きの錬金術師がいてな。大抵の物なら造作もない」

「錬金術か、それだと何も付与されてないだろ?」

「それなら俺が出来る。物作りは得意じゃないが、付与は何かと便利だからな」

「チェーンが完成したら渡してくれ。報酬は──「それは、全部の話が終わった後にしないか?」──もう頼みたいことはない。押し売りならせめて相手くらい選ぶべきだな。それで、報酬だが──「死者蘇生に興味はないか?」──なんだと?」


 胡散臭い話だ。そもそも死者が蘇ることがあれば俺ではなく魔王様にこの話を持っていくべきだ。何せ、レーヴェの死が人間との戦争の起因となったことくらい簡単に調べられるのだから。


「何故俺にその話を持ってきた?返答次第では話に乗ってやってもいいぞ?」

「SPは分かるよな?」

「当たり前だ」


 ステータスには欠かせない要素のひとつで、スキルや魔法の取得に必要なものだ。


「だったら話は早い。SPは複数人で合わせて使うことは出来ない。そうだったよな?」

「さっきから何度常識確認をするつもりだ。さっさと本題を言え」

「せっかく丁寧に説明してやっていたのに……それじゃあ結論から言うが、後から説明してやらねぇからな」


 時期外れだが、メニューにあった青林檎パフェがポアゾムのもとに届く。彼は果実を齧るとこう言った。


「俺はSPの統合に成功した」


 耳を疑う発言だった。そんなことができるのなら、初めからやっている。


「一体、どうやって……」

「ステータスなんて簡単に偽装出来るから、証拠は……実際に体験してもらうしかないが、可能だ」

「それで、俺に何をやらせたい?」

「何、簡単なことだ。SPを持っている奴を殺してくれればいい」


 そういうことか。


「既に魔王にも話は通してある。だが、同じ報酬で複数の助力が得られるのなら、そっちの方がいいに決まっているだろう?」


 つまり、SPの獲得こそが奴の目的か。

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