第8話 ユイルという幼馴染(2/3)
ナミにとって、ユイルは特別な存在だった。
彼は彼女にとって幼馴染であり、そのころから続く片想いの相手である。
レモンの色よりも淡い色をした、ウェーブのかかった髪に、透き通るような白い肌。その中に光る宝石のようなブルーの瞳。それだけで、ナミにとって特別だった。
ユイルとナミが幼馴染であったのは、母親同士が仲の良い友人であったからである。生まれたときから傍にいて、母親がお互いを訪問するたびに一緒に遊んでいた。そして年齢が上がって学校へ行くことになっても、二人の関係はあまり変わらなかった。確かに、ユイルは男の子で、ナミは女の子なので、学校の中で関わったりすることは少なくなったが、その外に出ればいつもと変わらなかった。寧ろ、お互いの秘密をより共有するようになった。それ故に、ナミは物理的な距離は離れたとしても、心はより近づいていると思っていた。
しかし、ユイルは成長するにつれて、色々なことが変わっていった。「ユイルは、素直で優しい子」というナミのイメージを打ち消すように、彼は非行に走るようになったのである。
そして、ユイルとナミが十八歳を迎えた年のこと。
ユイルは、高等教育学校(高校)を卒業すると同時に家を出て、何故か『ルピア』の街に行ってしまったのである。彼は家族にも詳しい事情は言わなかったようで、置手紙に「ルピアに行きます。暫く戻りません。探さないで」と書いて出て行ったようであった。家族はその置手紙通り、彼を探さなかった。いや、父親に探す気がなかったせいで、探さそうとはしなかったのである。このころの彼は随分と周りに迷惑を掛けていたので、勘当同然だったのかもしれなかった。
そしてナミが十九歳の誕生日を迎えた年、前触れもなく家族の元に手紙が届いた。いや、手紙と言えるかも疑問である。何故なら、たった二言しか書いなかったのだ。
――結婚した。子供が生まれた。
それだけである。
その話は、母親を経由してナミの耳にもすぐに入った。彼女はその話を聞いて、がっかりとも悲しいともいえる気持ちになった。ナミは彼のことが好きだった。だが、彼はナミではない別の女性と結婚し、子供をなした。ナミは彼に好きである気持ちを伝えぬまま、心の中でひっそりと恋を終わらせ、そして今まであった「期待」も失った。