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20 大混戦

今回はちょっと長め。


〈前回のあらすじ〉

 襲われていた女の子—ー獅城桜を助ける






 「レッドスライム3......オーク1」

 「—-ッ」

 「オーク......ですか。」


 あのあと地下迷宮に来て、現在5階層、桃がそう言った。


 オークは確か、6階層以降の魔物のはずだ。

 もちろん、魔物も移動するので階層を行き来することはよくあるが、きびしい戦いになるだろう。


 「戦いましょう。山口さんと神崎さんは前へ。山口さんは【結界(バリア)】を。神崎さんは【土弾(クレイガン)】の詠唱を。桃さんは私の前にお願いします。」


 彩乃がてきぱきとした指示を出す。

 さすがだ。


 いわれた通りの立ち位置につき、俺と翔馬、そして彩乃が詠唱を始める。


 「【地よ放て】」

 「【聖なる光よ】」

 「【燃え盛るは竜の息吹、きらめくは紅蓮の調べ】」


 そして桃の予言通り、通路から4体の魔物が現れる。


 「【我が支配する大地において、近づくものはなし—ー土弾(クレイガン)】」


 詠唱を完成させてレッドスライムの一体に当たる。


 「【今ここに現れしは正義と悪を分かつ戒門。】」

 「【契約において、今ここに炎の精霊を呼ぶ。】」


 防御力の低いレッドスライムはそれだけで命を散らす。


 それを見たほかの二体の行動は真逆だった。


 一体はおびえるようにオークの後ろに。

 そしてもう一体は飛びながら近づいてきて酸をはく。


 しかし


 「【ここは聖域なりて、わが敵を通さず—ー結界(バリア)】」


 翔馬の魔法が完成し酸を受け止める。


 すぐさまそれをしとめたいところだがオークが動き出す。


 逃げようにも彩乃が詠唱しているためここで止めないといけない。


 「【ハルト、ヴァル、フロ、ミネル】」


 助走をつけてオークとぶつかるが、腕を振るわれてとばされる。

 

 「グハッ—ー」


 オーク、豚人間。

 キモイ。

 ......Ⅾ⁺の魔物で豚の皮人の形をした二足歩行の体に豚の顔がついている。

 高い防御力と力を持っていて、生半可な刃や魔法は通さない。

 その性質故、集まられると対処が非常に難しく多くの死者を出してきた魔物だ。


 日曜日に酒場で食ったオークの生姜焼き。

 あれだ。

 味はまんま豚。

 ただこれを見るとちょっと......


 あれっ、やばっ。


 気が付くと彩乃の後ろまで吹っ飛ばされていた。


 力があるにも限度ってもんがあるだろ。


 そのまま壁に激突する。


 「直兎!」


 翔馬が叫んでこっちを見るが、オークはそのまま彩乃の方に向かう。


 「大丈夫!」


 何とか声を張り上げて翔馬を促す。


 翔馬は若干顔をしかめながらも完全な獣化状態になってオークの方へ向かう。


 「があぁあぁあああぁぁぁぁぁぁ」


 叫びながらも突進しオークにぶつかる。


 少し後退させることに成功したが、やはり吹き飛ばされる。


 そしてオークは彩乃に近づくが—ー


 「【炎の導きをここに。行進せよ、天空の大蛇リントブルム—ー焔蛇】」


 彩乃の詠唱が終わり、杖から炎の蛇が勢いよく飛び出す。


 それにオークが後ろに吹き飛ばされる。


 しかし、


 「なっ」

 「チッ、マジか。」


 焔蛇は確かに、残っていた2体のレッドスライムを倒し、オークを丸焦げにした。

 だがオークはまだ立っていた。


 完全にオーク自慢の防御力を突破することはできなかったようだ。


 「選択ミス...ごめんなさい。」


 彩乃が気づいたように謝る。


 確かに選択ミスだ。

 これならば焔蛇よりも攻撃力は低いが、氷に閉じ込めて相手の動きを奪える凝災にすべきだった。


 だが、オークが焔蛇に耐えることはわからなかったのだから彩乃は悪くない。


 だから、


 「大丈夫。」


 すれ違いざまに彩乃に声をかけ、オークに近づく。


 「ブボオオォオボボオオォォォォオ」


 オークはまた俺をとばそうと拳をふるうが動きは鈍く全然よけれる。


 「はあぁぁぁああぁぁぁぁ」


 そのまま剣を振り回しオークの体を切りつけていく。


 ダメージによって防御力は落ちているらしく、体に無数の傷が刻まれていく。


 そして


 「ががああぁあぁぁぁぁぁあぁあああぁあ」


 翔馬が後ろからオークの顔を殴り飛ばす。


 そしてオークは絶命する。が、


 「っ、悪魔、下級(レッサー)、平民級2体。前方左から。」


 桃が連戦を知らせてくる。


 それだけでなく、


 「ゴブリンナイト2、前方右から。その下にドルトン。」


 追加で魔物まで。


 「っ、多いですね。神崎さんはゴブリンナイトを。山口さんは悪魔を。桃さんはドルトンに対処しつつ山口さんの援護を。」


 その指示が終わると同時にゴブリンナイトが現れこちらに向かってくる。


 その後ろから2体の悪魔も。

 昨日の角ゴリラと、蜘蛛に黒いサルが生えた形の悪魔が天井を歩いている。


 ドルトンはいない。

 いや、()()()()


 「ッーーフォグライダー5、後ろから。」

 「嘘ッ!」


 さらに増えるといってくる桃に彩乃が驚愕の声を上げる。


 後ろからはさまれる形になったため、撤退も不可能。


 彩乃は漁夫の利狙いか悪魔が動く気がないことを確認し、


 「山口さんはフォグライダーに。桃さんはドルトンに対処しつつ悪魔を牽制してください。」

 「はいよっ。」


 そしてゴブリンナイトと俺とが出逢う。


 ゴブリンナイト。

 剣を持ち、操るゴブリンの亜種。

 ランクはⅮ⁻。


 一体目のゴブリンナイトが剣を振り下ろしてくる。

 俺はそれを剣で滑らせて斜め下に下ろす。

 そのまま頭を切ろうとするが、横からもう一体のゴブリンナイトが横腹を狙ってくる。

 それを上から剣を叩きつけることで撃ち落とす。

 その体勢から横薙ぎに剣を払おうとするが、体勢を立て直した一体目のゴブリンナイトが剣を振り下ろしてくるのでそれを受けつつ後ろに跳んで間合いの外へ。


 これで数秒。


 ふとあたりを見回すと薄ピンクの霧が出始めていた。


 横目に後ろを見ると翔馬が五体の魔物と戦っている。


 フォグライダーだ。

 鰐—ーコモドドラゴンのような動物の背から同じごつごつした質感の人型の体、その上にゴブリンにも似た醜悪な顔が乗っている。

 手には木の棒の先に石を括り付けた打撃武器(メイス)を持っている。

 ランクはⅮ。

 見た目は硬そうな皮膚をしているが、防御力はあまり高くない。

 しかし、下のコモドドラゴン—ーのような部分—ーはすばしっこく動き、接近を許してしまう。

 そこで手に持った打撃武器(メイス)を力強く振り落とすという凶悪な戦闘をするが、フォグライダーの特徴は別のところにある。

 名前を英語で表すと、Fog rider(霧の騎士)

 今も漂っているピンク色の霧をコモドドラゴンの気孔部分から噴き出して相手の視界を奪う。

 さらにこの霧にはわずかに催眠効果が含まれていて、常人なら吸い続けるとぐっすり、ステータスによって強化された俺達でも集中力を奪われる。


 翔馬は—ーどこから取り出したか—ー口回りに黒いマスクをつけているが、フォグライダーたちがいるであろう場所には霧が固まっていて、攻めあぐねている。


 「【其は古の氷河。永久の牢獄。吹き荒れるは終結の雹。】」


 彩乃が詠唱をはじめ、桃が槍を構えてあたりを警戒している。


 俺は二体のゴブリンナイトと切りあい、翔馬は霧の中に一撃離脱(ヒットアンドアウェイ)でフォグライダーと対峙している。


 桃は相変わらず何かを警戒しているし、彩乃は詠唱を続けている。


 「【せりあがる氷山。迫る完全結晶。】」


 その状況が動いたのは、桃からだ。


 「【煌めく刃は死の怨念。】」


 詠唱を始めた。


 その瞬間、俺の足元の二点から、ズボッと音を立てて地面が盛り上がり、何かか出てくる。

 ドルトンだ。

 茶色の硬質な毛におおわれた大きなモグラの形をしている。

 地中を掘り進んで敵に近づき手にあるかぎ爪でひっかいてくる魔物だ。

 ランクはE⁺。


 それが二体。


 幸い、ゴブリンナイトがちょうど離れたところだったが、2体のドルトンが左右から迫ってくる。

 右のドルトンのかぎ爪を剣で受け止めるが、左のドルトンは対処できないッ。


 焦って弾き飛ばそうとするが、


 ドスッ


 「【取り置くは命の根幹。】」


 桃が詠唱をしながら左のドルトンを貫いてくれた。


 俺は剣で受け止めているかぎ爪を跳ね上げて後ろに下がる。


 すると桃は左のドルトンから引き抜いた槍を回して、もう一体のドルトンも倒す。


 桃の【看破の魔眼】は、見たもののの情報を読み取る力だが、それから派生して透視にも似た能力が備わっている。


 そのためドルトンが地中から出てくるタイミングで詠唱を始めることも、ドルトンに対処することもできた。


 「【其の槍は自爆する邪槍。死と死の輪廻。】」


 そのままの勢いでゴブリンナイトの後ろに回り込み、ズバズバッと二突き。


 そしてそのまま翔馬の方に向かう。


 獲物とられた......


 どうしようか。

 悪魔がまだ残っているので、動き出したときように詠唱をしておく。


 「【地よ放て、我が支配する大地において、近づくものはなし】」


 一方の彩乃は、身を守ってくれる桃がいなくも詠唱を続け、


 「【大地の氷冠。浸食せよ、グレイシャルイロージョン。—-凝災】」


 詠唱を完成させる。


 地面に杖を突くと同時に悪魔—ー角ゴリラにむかって氷が向かう。


 しかし、角ゴリラじゃない方の悪魔—ー蜘蛛猿がおしりから出た糸で体を天井からつるし、氷にむかっていく。


 だが奮戦むなしく、蜘蛛猿は氷漬けにされ、氷はまだ進んで—ーいかなかった。


 「なッ」


 いや、確かに氷は蜘蛛猿を氷漬けにし、命を刈り取ることには成功した。

 その証拠に蜘蛛猿は黒く光るエフェクトと鉄くずをはじけさせ、消滅した。


 しかし、それに呼応するように氷—ー凝災は砕け散ったのだ。


 それを見た角ゴリラが走ってむかってくる。


 「クッ、【土弾(クレイガン)】」


 おいていた【土弾(クレイガン)】を角ゴリラに向かって放つ。


 【土弾(クレイガン)】はまっすぐ飛んで行き、角ゴリラの右肩に当たる。


 ほとんどダメージは入らずに、散っていったが、バランスを崩すことはできたようで、角ゴリラが後ろによろめいて立ち止まる。


 すぐさま駆け寄る。


 体勢を立て直した角ゴリラは俺を見て拳を振り下ろす。


 「ヴモオオオァァオァァオォォォォォォォオォォォォォォオォ」


 俺はそれを—ー


 下ろされる拳の手前で、右足で踏みとどまり、外向きに、反時計回りに回ることで拳を回避し、角ゴリラの後ろに回り込む。


 俺の真横で地面が粉砕して耳を石がかする。


 背中に冷たいものが流れる。


 そのまま回転の勢いをのせて背中を切りつける。


 「ヴォォォォォォォアオォアオォォオオォ」


 あまり深く切りつけることはできなかったが、ヘイトを俺に移すことはできたようで、角ゴリラが吠える。


 それに合わせて、


 《経験値が一定に到達しました。Lv.11からLv.12になりました。》


 頭の中に音声が流れる。


 桃たちがフォグライダーを倒したのだろう。


 「【雷撃よ】」

 「【ため込んだ悪はここに集い、一突きの破邪となる。】」


 翔馬と桃の声が聞こえてくる。


 角ゴリラが拳を横なぎに払ってくるが、俺はかがんでよける。


 角ゴリラはそこから地面に振り下ろしてくるが、あえて前に踏み込む。


 角ゴリラの股をくぐり、その際に両足の付け根を切り裂く。


 そのまま角ゴリラの後ろに抜ける。


 「ヴモオオ!?」


 驚いた声を挙げながら振り向く角ゴリラ。


 それより早く俺は飛んでバック宙、振り向いた角ゴリラの頭を超えて再び後ろに、その際に首と両肩の付け根を切り裂く。


 着地して背中を蹴り飛ばす。


 そこには右手を突き出した翔馬が。


 「【我が支配する領域において、近づくものはなし—ー雷弾(ボルトガン)】」


 詠唱が完成し翔馬の右手から光った電気が発射される。


 バチンッ


 電気が角ゴリラの体に当たり、角ゴリラの動きが止まる。


 雷系・基礎・中級魔法、雷弾(ボルトガン)

 効果は......名前から察して。

 ダメージはそこまで高くないが、反支援(デバフ)効果として行動停止(スタン)効果を持っている。


 例にもれず止まった角ゴリラに、翔馬の後ろからとどめの一撃が迫る。


 「【皇を爆砕せし臣下の刃—ー】」


 桃が最後の詠唱をしながら駆け、かがんだ翔馬の背中を踏み台に角ゴリラへ—ー




 「【覇集(はじろ)】」











最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。


誤字報告をしてくださった方、ありがとうございます。

修正まで時間がかかるかもしれませんが、助かっています。


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最大10ポイントです。

10ポイントはほんとに助かります。


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ブックマークもしていただけるとありがたいです。(大事なことなので2回言いました)


次回は12月31日0時予定です。(大晦日)


それではまた次話で。

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