13 裏世界、再び。
午後の授業を終えた俺は、いつもとは違って、すぐに学校を出た。
そのまま、学校の最寄り駅—ー大井町駅から電車に乗って渋谷駅を目指す......わけではない。
周りに俺のことを認識している知り合いがいないタイミングを見計らって、大井町駅のトイレに入り、左手を振り出してアイテムウィンドウを出した。
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神崎 直兎
データコイン
400p
アイテム
〔空間制御装置 東京門〕
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アイテムウィンドウの中に入っている、〔空間制御装置 東京門〕を取り出す。
青木達也さんから裏世界の説明を聞いたとき、最後にもらったものだ。
表世界専用のアイテムで、これを使うと、門のある、例のビルの地下に転移できる。
〔空間制御装置 東京門〕の文字を押すと、
《〔空間制御装置 東京門〕を実物化します。(このアイテムは再びアイテムボックスに戻すことが可能です。)よろしいですか Yes/No》
というウィンドウが出てきた。
Yesを押すと、門の空間の揺らぎと似たようなものが現れ、そこからペンが出てきた。
そのペンをつかみ、親指でペンをカチッとおすと、前にまた門の空間の揺らぎと似たようなものが現れた。
そこをくぐると、あのドームのような地下に出た。
昨日降りたエレベーターと真逆の位置だった。
俺はそのまま門をくぐって、再び裏世界に入った。
◇
約束の4時までまだまだ時間があるので、ホームまで寄り道をしながら行くことにした。
初めて裏世界に来たときは、表世界と同じだと思ったけど、あらためて裏世界を見てみると、表世界とは違う建物もそれなりにある。
高層ビルの類が少ない。よく見てみると、途中で折れているビルなんかも多い。
一定の高さのラインを超えることはないようだ。
さらに、ビルにくっついている、電光掲示板なんかもすべてついていない。
彩が裏世界には電気が通っていないと言っていたので、そのせいだろう。
照明は火か、魔法を使うとか言っていた。
さらに、表世界と違って、ほとんどの建物が開いていない。
裏世界の東京都市に住んでいる人は、およそ5万人で、表世界の渋谷区の人口が大体14万弱だったと思うから、人口がかなり少ないし、その上、ギルドのように大人数で大きな建物に住んでるケースが多いため、使われていない建物が多いのだ。
......思っていたよりまっすぐ来てしまったようで、もうホームについてしまった。
が、幸いと言っていいのか、3人ともいた。
桃は中庭の木の上で寝ていたし、翔馬はリビングで、狼の耳と尻尾と爪と牙を生やした—ー半人半獣の状態で爪を研いでた。
やっぱり翔馬の武器は爪か。
......牙もか?
彩は自室にいたが、降りてきた。
「ずいぶんと早かったですね。」
「はい。青木さんから〔空間制御装置〕をもらっていたのを忘れていて。」
「〔空間制御装置〕って、達也が大量に作らされてたやつか。」
「達也って、青木さんの下の名前じゃなかった?」
「あーそれもそうやけど、うちのリーダーのこと。〔ペルセウス〕の〔変光星〕、鳳達也。空間をつなげる固有スキルを持っているから、それをアイテム化したんやろ。」
「アルゴル?」
「うん。リーダーの二つ名。裏世界では二つ名をつけられることが一流の狩人の証なんや。」
「へー。翔馬たちはついてないのか?」
「ついてないついてない。うちはリーダーと副リーダーだけや。」
「副リーダーの二つ名は?」
「えっと、なんやったっけ、ミルフィーユ?」
「いえ、〔千の風と踊る剣〕だったと思います。」
「そうそう、それそれ。シルフィーユや。」
「フーン。」
それにしても空間をつなげるスキルか。
それであんな簡易的な門みたいなのが作れたのか。
「もしかして、門もリーダーがつくったのか?」
「はは、そんなわけないやん。さすがに達也でも表世界と裏世界を超えての空間接続はできひんで。あれはずっと昔に、それこそ文明が起こるよりも前にできたもんや。そこらへんの歴史を書いた本なら図書室にあったはずやから読めば。」
「ああ。時間があったときに読むよ。」
興味深いしな。
知っとけば、もしかすると戦闘とかに発展できるかもしれない。
「それではそろそろ行きましょう。私は桃さんを起こしてきます。」
「ほいほい。直兎、剣とナイフは部屋おいてるから、準備してき。」
「はい。」
「それとこれ、制服やったら戦えへんやろ。戦闘服。入団祝いや。」
翔馬はそう言って服を渡してきた。
赤と青のシャツに、黒いズボンとコートだ。
見た感じ新品なので、買ったのだろう。
「ありがとうございます。」
そう言って俺は2階の自室に上がってその服に着替えた。
◇
戦闘服に着替えた俺は3人と玄関で合流して、そのまま街に出た。
普段無口な桃から「似合ってる。」との言葉をいただいた。
「それじゃあ、今日は3人も一緒に戦うのか?」
「ああ。直兎の成長補正のスキルならどうせすぐ俺らに追いつくやろうからな。」
そうか。足を引っ張らないようにしないとな。
「あの、緊張しなくても大丈夫ですよ。まだ二日目ですし、一緒に戦うといっても、神崎君のためであることには変りないんですから。」
俺の様子を見て不安を感じ取った彩が声をかけてくれる。
「はい。ありがとうございます。」
「ん。じゃあ、今日は5階層くらいまでは行く予定やから。新しいモンスターとも戦うからな。」
「はい。」
二日目の戦闘開始だ。
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次回は11月1日0時予定です。(信憑性低め)
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