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67.王への報告と指名依頼

お待たせしました。

 翌朝、俺は城にやって来た。国王に事情を報告する為だ。個人的な友好関係なんだから話さなくても良いと思ったけど、伯爵としては話しておかないといけないと考えたからだ。

 城に来てすぐに国王に会えるわけじゃないけど、門兵に国王に会いたい旨を伝えると、何故か通された。

 どうしてだろうか?疑問に思いながら、応接室に案内されて、ソファーに座る。

 しばらくすると、国王が部屋に入って来たので、俺はすぐに立つ。


「よく来たな、ラソマ伯爵。まあ座れ」

「はい」


 言われてすぐに座るわけにはいかない。国王が座るのを確認してから座る。国王の近くには近衛の兵士が2人、立っている。


「今日はどうしたんだ?」

「陛下に報告しておかなければならない事があります」

「ほう、何だ?」

「その前に、これは重要な事なので、なるべく知る人が少ない方が有り難いのですが」

「つまり、余と2人きりが良いという事だな」

「はい」


 難しいかもしれないけどな。でも魔王と友好関係になった事を知る人間は少ない方が良いだろう。


「分かった。お前達、2人きりにしてくれ」

「しかし!」

「構わん。ラソマ伯爵は魔王を単独で倒せる存在だからな。正直、ラソマ伯爵が実力を出せば、誰も敵わんだろう」


 国王の言葉に近衛兵達が悔しそうな何とも言えない表情をする。まあ分からなくはないかな。

 その後、近衛兵達は本当に部屋から出て行った。


「これで問題は無いだろう?」

「はい」


 と言いながら俺は防音の結界を張る。これで俺と国王の会話は誰にも聞こえなくなった。国王は俺が結界を張った事に気づいていない。


「さて、それで話とは?」

「最近、魔王が人族の領地の近くまで来た事はご存知ですか?」


 それから俺は簡単に事情を説明した。


「その冒険者は愚かな事をしたな。侵攻してきた魔王を止めるなら分かるが、自分から侵攻するなど、火の魔王や金属の魔王と変わらんではないか。そのような事をして、誰が英雄などと呼ぶのか」


 全くその通りだ。


「それで魔王の国に行ったというのは本当なのか?」

「はい」

「よく無事に帰ってくる事ができたな。いや、ラソマ伯爵だからこそ、帰ってこれたのか」

「そんな事はありません。友好的な魔王だったので、失礼を働かなければ、誰でも無事に帰ってくる事ができたと思いますよ」

「そして魔王と個人的な友好関係を築いた、と」

「はい。伯爵ではなく、Sランク冒険者の私と、魔王ではなく、魔族の女性とその娘という事で友好関係を築きました」

「うむ。人族の伯爵と魔王という関係では知られた場合、色々と要らぬ詮索をされる恐れがある。個人的に、というのであれば文句はない」

「良いのですか?」

「既に友好関係にあるのだろう?今更、それを反故にもできん。それに余もラソマ伯爵と同じで、魔族への偏見は持っておらんからな」

「そうなんですか!?」


 この世界に生きている人で、そういう偏見を持っていないというのは珍しいんじゃないだろうか。過去に戦争もしていたわけだし。


「分かっているとは思うが、この話は誰にもしてはいかんぞ?」

「勿論です。家族にも言いません」

「それが良い」


 その後は特に話もないので帰る事にした。国王の時間を無駄に使うのはいけないからな。


 時間も余ったし、これから何をしようかな。そうだ、初歩的な植物の魔法が使えるようになったんだったか。どんなことが出来るのか調べないといけないな。図書館に行ってみるか。


「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」

「植物に関する魔法は、どういうものがあるのか知りたいんですけど」

「それなら、あそこの棚にあります」

「ありがとうございます」


 図書館の受付の女性に教えてもらった場所に行き、目当ての本を見つけた。

 さて、どんな魔法が使えるかな、と。

 椅子に座って調べる。

 1時間ほど経った頃、初歩的な植物の魔法は、植えた種の成長を早めたりできる事だけだった。たったそれだけかと思うかもしれないけど、それでも魔法を使わずに成長させたものよりも、綺麗なものができるらしい。

 肥料も要らないなら、農家に向いているんじゃないだろうか。まあ俺なら時間操作ができるから、それで成長を早めるけど。

 ちなみに、上級の植物魔法なら種すら要らず植物を生やす事ができるらしい。それは便利だな。

 まあ、魔法が使える世界に生まれたのに魔法が使えなかった俺としては、どんなものでも魔法が使えるのは嬉しい!超能力が使えるのに強力な魔法まで使いたいなんて思ったらバチが当たる。

 さて、これから何をするか。まだ帰るには時間も早いし依頼でもあるかな。

 冒険者ギルドに行き、ミオナさんのもとに行く。


「ミオナさん、Sランクの依頼はありますか?」

「Sランクの依頼は無いですけど、ラソマさんに指名依頼が入ってます」

「指名依頼、ですか?誰からですか?」

「クラッロ公爵様です」


 それはまた大物だな。

 クラッロ公爵と言えば、王都で生きている貴族からすれば知らない人はいないレベルの公爵だ。

 俺は渡された依頼書を見てみる。内容は何て事のない、王都を散策する公爵の護衛だ。王都の治安は悪くないし、貴族なら、自身が専属の護衛を雇っている筈だ。それなのに俺を指名依頼するなんて、何か裏があるんじゃないかと考えてしまうな。


「どうして俺なんでしょうか?」

「さあ?公爵様のお考えですから私には…」

「そうですよね、すみません」


 実家が伯爵であり、俺自身も伯爵だ。その俺が分からないんだから、貴族ではないミオナさんにも分からないだろう。


「どうしますか?」

「勿論、受けます」


 公爵からの指名を断る事は基本的にできない。俺が公爵なら何か理由をつけて断れるかもしれないけど。


「時間は朝から夕方まで、か」


 しかし公爵ともなれば、たかが散策にも護衛が必要。まあ貴族なら誰でも護衛がいるけど大変だな。


 翌朝。俺は依頼主であるクラッロ公爵の屋敷を訪れた。Sランク冒険者の証と依頼書の写しを門番に見せて屋敷の中に入れてもらう。応接室に通されてしばらく待つと、2人の男性が入ってきた。身なりから見て、1人は執事、もう1人がクラッロ公爵だ。

 クラッロ公爵は見た目で分かる。黒髪で黒目なのだ。別に先祖が日本人の転移者だという話はない。そして成人でも身長が140cm程しかない事で有名だ。この黒髪黒目と低身長は遺伝らしい。過去、金髪や銀髪だったり高身長の人だったりと、自分達と全く違う人達と結婚し、子供を作ってきたが、どの子供も黒髪黒目低身長だったそうだ。だから少なくとも、王都で見かける黒髪黒目低身長の人物はクラッロ公爵の親族だと見て間違いないだろう。


「待たせたね。私がクラッロだ」

「Sランク冒険者のラソマです。今回は指名をして頂き有り難うございます」

「うむ、さすがレミラレス伯爵の息子であり、自身も伯爵当主だ。きちんと挨拶ができるようだな」

「恐れ入ります」


 俺を値踏みしてるようだけど当然だな。俺の事をそこまで詳しくは知らないはずだから。とは言えクラッロ公爵なら調べてはいるだろうな。


「今回の依頼内容は王都を散策する私の護衛だ。最初に聞きたい事はあるか?」

「1つだけ、あります」

「ほう?」

「どうして私を指名してくださったのでしょうか?失礼ながら公爵様なら専属の護衛の方がいらっしゃると思うのですが」

「それは簡単な話だ。一度、英雄と言われているラソマ伯爵に会って話がしたかったからだ。私が屋敷にラソマ伯爵を呼べば、余計な詮索をされる恐れがあるからな。私に権力がなければ噂もたたんのだろうが」

「そうでしたか。ご配慮、有り難うございます」

「気にするな」


 そう言ってクラッロ公爵は笑う。王都でも三大公爵として有名だからな。伯爵の俺が呼ばれたら下手をすれば俺に傷がつくような噂が立つだろう。


「他に質問はあるか?」

「いえ、ございません」

「よし、それなら行くか」


 さて、散策する公爵の護衛依頼スタートだ!

読んでいただきありがとうございます。

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