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63.魔王との問題発生

お待たせしました。

 スィスルとの王都観光が終わった数日後。

 俺は冒険者ギルドの近くにある酒場に来ていた。と言っても酒を飲む為じゃない。年齢的にも、まだ飲んではいけない。

 レイラの近況を聞く為だ。この国の勇者に推薦したのは俺だからな。もしもレイラが生き辛いと感じているなら何とかしようと思っている。


「それにしても本当に便利よね。今も私達の声は誰にも聞こえてないんでしょ?」

「ああ」


 酒場のテーブル席に座りながら俺とレイラは話している。防音の結界を張っており、周囲に俺達の声が聞こえる事はない。勇者関連の話だから誰かに聞かれると不味いからだ。

 それなら屋敷で話せば良いと思ったけど、たまには冒険者らしく酒場に行こうという事になったんだ。

 ちなみに周囲の声は俺達に聞こえている。


「勇者としての活動はどうだ?」

「今は魔王も来てないし、何も変わらないわ。ただのSランク冒険者よ」

「そうだよな。でも頼れる勇者が居ると安心できる。魔王がいつ来ても大丈夫だな!」

「ラソマは良いかもしれないけど私は嫌よ。無駄に命を危険に晒したくないわ」

「それなら俺の結界を張っておくか。大抵の攻撃なら防げるぞ」

「それは良いわね。でもラソマに負担がかかるんじゃないの?それだったら良いわよ」

「いや、ありがとう、大丈夫だ。今だって家族と実家の使用人達、それにうちで働いてくれている使用人達に結界を張っているから」

「本当に不思議なスキルね」

「まあな」


 苦笑いするレイラにつられて、俺も苦笑いする。

 本当に変わったスキルだ。でもこのスキルのお陰で俺は良い人生を送っている。まあ全ての超能力を完璧に使いこなせてはないけど。


「それなら張ってもらおうかな」

「おう」


 俺はレイラに結界スーツを張る。これなら魔王の攻撃を防げる筈だ。


「と言っても過信されても困るけど」

「それはないわ。ラソマを信じてないわけじゃないけど、やっぱり最後まで信じる事ができるのは自分のスキルだもの」


 確かにな。どれだけ良いスキルや魔法で援護してもらっても、最後まで信頼できるのは自分のスキルや魔法だ。


「ま、それでもラソマの結界は頼りにするけどね」


 レイラはそう言って微笑む。


「うん、やっぱりレイラ、可愛いよな」

「な、何を言ってるの?!」


 レイラは顔を赤くしながら、動揺している。


「いや、そう思っただけだ。深い意味はないよ」

「深い意味もなく、女の子にそういう事を言わない方が良いと思うけど」

「そうなのか?」

「そうよ」


 本当に、この世界に来てからサラッと言えるんだよな。前世なら絶対に言えなかったけど。


「あんまり軟派な事を言ってると呆れられるわよ?好きな人はいないの?」

「居るよ」


 アミスだな。


「それなら、その子にだけ言うの」

「ああ」

「ちなみに誰?私が知ってる人?」

「そうだな、会って話した事もあるぞ」

「王女殿下とか?」

「いや、確かに会ってるけど違うよ」

「そうなの?他に誰かいるとすれば…え?立場は違うけど、もしかして?」

「そう。アミスだよ。実家の屋敷に居た時から好きなんだ」

「ふぅん。告白はしないの?」

「いずれはする。今は機会を探ってるところだ」


 本当に、どのタイミングで言えば良いのか。女性に対して気障ったらしい事は言えるのに、告白となると言えないんだよな。


「応援してるわ」

「ありがとう」


「なぁ、さっきからあの2人、口動いてるけど、声が聞こえないぞ?」

「だよな!俺だけかと思ってたけど、やっぱり聞こえないよな!」

「何かのスキル、いや、魔法か?」


 俺達の声が聞こえない事を気にした客達が喋っている。


「それにしても、本当にこの結界は便利よね。周りの声は聞こえるのに、私達の声は外に聞こえないんだから」

「自分達の状況は知られたくないけど、周囲の状況を知りたい時には便利だ」


「大変だ!!」


 談笑していると、酒場の扉を思いっきり開けて男が入ってくる。


「どうしたんだ?」

「魔王が現れた!」


 聞かれた男は大声で魔王の襲来を知らせた。


「魔王?」


 俺は結界を解除し、俺達の言葉も聞こえるようにする。


「あ、ああ。英雄…ラソマか」

「そうだ。それで魔王が現れたと言うのは本当か?」

「本当だ」

「どの方向だ?」


 俺が聞くと男は後ろの方を指差す。俺は千里眼と透視で確認する。…うん、確かに魔族が1人でいる。襲ってきているなら、どうして1人だけなんだろうか?


「ラソマ、早く魔王を倒してくれ!」

「いや、でもあの魔族がいるのは魔族の領地だぞ?一向に人族の領地に入って来ようとしない」

「そんな事はどうでも良い!」

「どうでも良い事じゃあない。大事な事だ。人族の領地に居るなら何をされても自己責任だけど、自分の領地に居るんだから何の問題もない。逆に俺が攻撃すれば、そちらが問題になる」

「と言うか、ラソマ、今の魔王の状態が分かるのか?」

「え?ああ、そうだな」

「スキルか?」

「そんなところだ」


 スキルの内容までは説明しない。スキルの詮索は御法度だしな。


「それよりも…どうしてあの魔族はこちらの領地に来ずに、じっとしているのか」

「それも不思議よね。どうして来ないのかしら?」

「少し調べてみる」


 レイラに聞かれて俺は魔族に読心を使う。

 ………おいおい、これはまずいだろ。


「お前…まずい事をしたな」


 魔王が来た事を知らせた男に向かって言う。


「な、何の事だ?」


 あの魔族は魔王で間違いない。そして、この男が何をしたのかも、魔王とこの男に読心を使って分かった。


「結果的にお前が魔王を呼び寄せたのか」

「知らない!俺は知らないぞ!」

「ねえ、ラソマ、どう言う事?」

「その前にギルドに行くか。ギルドには真偽が分かる魔道具がある。それを使ってこいつの言い分の真偽をはっきりさせよう」

「そんなに大事なの?」


 俺は頷く。それから俺達はギルドに行く事にした。その際、魔王を呼び寄せた男が行かないと言ったが、念動力で無理矢理連れて行く事にした。

 ギルドに着くと、すぐに受付のミオナさんの所に行く。


「ラソマさん、今日はどうしたんですか?」

「今からこの男に質問をするけど、真偽が分かる魔道具で調べて欲しいんです」

「この男が何かしたんですか?」

「俺の調べが正しいなら、かなりまずい事をしています」

「俺は何もしていない!」

「ラソマさんがそこまで言う事ですか。分かりました」

「俺も聞いておこう」

「ギルドマスター、聞いてくれるんですか?」

「ああ、その男も冒険者だからな。冒険者ギルドのトップとして聞かないといけないだろ。それで、そいつは何をしたんだ?」


 ミオナさんが真偽の魔道具を用意してくれた。


「まずこの男は仲間と一緒に魔族の領地に行きました。理由は魔王を倒す為です」

「なんだと?!本当か!?」

「違います!」

「…嘘です」


 男の言葉を真偽の魔道具を使っていたミオナさんが否定する。


「魔王を倒せなかったこの男は、仲間を囮にして逃げて来ました」

「違う!」

「…嘘です」

「おいおい、そんな事をしたのか」


 ギルドマスターが呆れている。


「どうしてそんな事をしたんだ?」

「違う!俺は…」

「正直になれ。真偽の魔道具は絶対だし、なんなら、教会に行くか?神父様に嘘は見抜かれるのは知ってるよな?」

「ぐ………羨ましかったんだ」

「何?」


 男の声が小さ過ぎて最初何を言っているのか分からなかった。


「お前が羨ましかったんだ!魔王を倒して英雄としてチヤホヤされるお前が!だから俺達も魔王を倒して」

「英雄になりたかったと?」

「そんな事で、こんな重大な事件を起こしたのか」


 この男がした事は、1人の仲間と魔族の領地に行き、魔王に闘いを挑む。勝てないと判断すれば仲間を囮にしたり、そこの魔族の家に魔法で火をつけ、混乱させて逃げてきた。

 その事情を真偽の魔道具を使いながら問い詰めると、男はあっさりと自供した。


「お前の行動は軽率であり、国を危険に晒した行為だぞ?」

「う…」


 ギルマスの言葉に男はうなだれる。


「それにしても、ラソマのスキルは凄いな。聞く前に、そこまでの事情が分かるのか。諜報にも向いていそうだな」

「そうですね。自分で言うのも何ですが、良いスキルだと思っています」

「そうだな。まあ、良いスキルや魔法も使いこなせなければ意味がないから、今、使いこなせているのはラソマの努力の賜物だろう」


 ギルマスに褒められて少し照れてしまう。そんな風に真っ直ぐに言われたのは初めてだ。


「この男はどうしますか?」

「そうだな…魔族の領地で犯罪を犯したのであれば、魔王に判決を出す権利がある」

「そんな!?同じ人族として守ってくれないのか?!」

「その人族の国をお前は危険に晒したんだぞ?そうまでして守ると思うか?」


 思わないよな。魔王は魔族の領地から出てないけど、下手をすれば人族の領地に入り、この国を攻めていたかもしれないんだから。


「それでは早速、魔王の元に連れて行きますか?」

「ああ。俺も行くぞ。責任者として見届けなければならん」

「分かりました」


 そうして俺とレイラ、ギルドマスター、魔王に攻撃を仕掛けた男の4人で魔王の居る場所に瞬間移動した。

読んでくださり、ありがとうございます。

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