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61.スィスルとのデート その1

お待たせしました。

 今日はスィスルと王都を観光する予定の日だ。

 朝早く、スィスルが寮から馬車で俺の屋敷に来た。


「おはようございます、兄様!」

「おはよう、スィスル。朝、早いね」

「今日を凄く楽しみにしてましたから!もしかして迷惑でしたか?」

「そんな事ないよ。俺も楽しみだったからね。今日はゆっくり楽しもう」

「はい!」


 スィスルの笑顔には癒されるなぁ。普段から疲れるような事はしてないけど、この笑顔で心が穏やかになる。


「それじゃあ行こうか」

「行ってらっしゃいませ」


 アミスに見送られて俺とスィスルは屋敷を出る。俺達は貴族だけど、馬車で移動はしない。観光だからな。のんびり徒歩移動だ。但し目的地が遠い場合は瞬間移動を使う。


「とりあえず朝ご飯だな。スィスルは朝ご飯は食べてきたかい?」

「いいえ、兄様とのお出かけが楽しみだったので紅茶だけ飲んで来ました」

「そうか」


 それじゃあ朝ご飯だな。と言う事で調べておいたモーニングが美味しい喫茶店に行く。

 喫茶店に着くと、まだ時間が早いからか、人は少なかった。席に着くと、モーニングを頼む。


「ねえ、あの人ってもしかしてラソマ伯爵じゃないの?」

「やっぱりそうよね。英雄ラソマ様!」

「デートなのかな?」


 店員や客の声が聞こえる。


「デート…兄様と私、カップルに見えるんですね」

「ハハハ、そうみたいだね」


 スィスルは頬を赤くしながら言ってくる。スィスルは14歳、俺は15歳。歳も近いから、まあカップルに見えるか?


「いえ、俺達は兄妹なんですよ」

「え?あ!そうなんですか!失礼しました!」


 店員が謝ってくる。


「いえいえ、知らなかっただけですから、気にしないでください」


 その後は普通に食事を楽しみ、店を出た。


「次はどこに行きますか?」


 前世なら遊園地や映画館があったんだけど、この世界にそういう娯楽施設は無い。ただ王都には、レミラレス領にはない演劇場があり、そこで行われる演劇を観る事にした。

 演劇はスキルや魔法を使って行われるので、結構迫力があり、観ごたえがあった。


「すごい迫力でしたね!」

「そうだね。レミラレス伯爵領でも、こういう演劇場があれば、もっと人が増えるかもしれない」

「それなら私もスキルを使って出演したいです!」

「良いね。スィスルは可愛いし魅力的だから主役間違いなしだよ」

「そ、それは無いです。でももしそうなったらラソマ兄様にお相手をして欲しいです…」

「その時は必ず相手をするよ」


 もしスィスルが主役ならお姫様の役かな。間違っても冒険者の役ではないな。


 その後、俺達は雑貨店にやって来た。


「わぁ!色々な物がありますね!」

「そうだね」


 店内にはレミラレス領では見られない商品が幾つも並んでいる。カラクリで動くものから、魔法で動く物もある。魔道具だな。魔道具は作るのも難しい筈だけど、こんな風に子供用の玩具として売っているのは凄い。


「スィスル、気に入った物はあるかい?」

「はい!これが良いなと思いました。今はお金がないですけど、お金が貯まったら買おうと思います」

「そうか。店員さん、これは幾らですか?」


 スィスルが指し示した商品の値段を聞く。値札が貼ってあるけど、本当にその値段かは分からない。値札の通りだと思ってレジに持っていったら全く違う値段だったと言うのは前世で経験済みだ。

 店員の教えてくれた値段は手頃な値段だった。


「じゃあ、これを買おうかな」

「ありがとうございます!」

「そんな!兄様!私、いつか自分で買います!」

「良いから、良いから」


 そんな俺達の光景を見て店員が微笑む。一方のスィスルは焦った声を出した。


「それじゃこれは荷物になるからマジックバッグに入れておくよ。あとで渡すからね」

「はい、ありがとうございます。兄様からのプレゼント、大切にします」


 頬を染めながらスィスルが嬉しそうにお礼を言ってくる。いや、そんなに大したものじゃないよ?って言ったら店の人に失礼になるか。


 次に向かったのは服屋。

 スィスルは自分で欲しいと思った服を選び、試着室に入る。やがて着替え終えたスィスルは試着室のカーテンを開ける。


「ど、どうですか?」

「うん、とても似合ってる。可愛いよ」


 上目遣いに聞いてくるスィスルに本心から答える。本当に似合っている。


「あ、ありがとうございます…」


 俺の言葉に頬を染めながらスィスルがお礼を言ってくる。


「それじゃあ、これを買おうかな」


 勿論、ここでも俺が払う。スィスルは自分で払うと言ったけど、お金は大切だ。貴族としての小遣いはあるだろうけど、今は学生だ。貯金はしておいた方が良い。


「兄様は大丈夫なんですか?使用人に給料を払ってるんですよね?」

「それは大丈夫だよ。これでもSランク冒険者だからね」


 Sランクの依頼は報酬が高い。スィスルにプレゼントしたくらいで痛む財布ではない。


「今まで着ていた服も可愛かったけど、せっかくだから、ここからはその服を着ていったらどうかな?」

「この服を、ですか?兄様はこの服装の方が好きですか?」

「そうだね。でもさっきまでの服もスィスルに似合っていて可愛かったよ。久し振りにスィスルと一緒に出歩くからね。色々なスィスルを見たいんだ。駄目かな?」

「いえ!兄様が選んでくださるなら、どんな服でも着ます!」


 スィスルが食い気味に言ってくる。そう言ってくれると嬉しいな。

 さっきまで着ていた服はマジックバッグに入れておく。最初、俺に服を渡そうとしたスィスルが照れていたが何だろうか?


「うん、とても可愛いよ。天使みたいだ」

「あ、ありがとうございます…」


 照れたスィスルも可愛いなぁ。自慢の妹である。変な男と結婚してほしくはないな。相手はきちんと選ばないと。

 …いや、スィスルが好きになった男を俺が相応しいかどうか判断したら駄目だろ。スィスルの好きにさせないと。でも経済的に駄目なら口出しはする。スィスルは伯爵家の娘だからお金はある方だ。でもそれを頼りにするような男は絶対に駄目だな。


 その後は昼食を食べた。時間的に人が多く、その時は大勢に騒がれたけど、何とかなった。やっぱり俺の顔って知られてるんだなぁ。前世では芸能人とか有名人が羨ましいとか思ってたけど、こうして自由に行動しにくくなるなら、微妙だな。つい苦笑いしてしまう。


「どうしたんですか?」

「ん?いや、考え事をしていただけだよ。ごめんね」


 苦笑いしたところを見られてしまった。駄目だな。スィスルとの観光に集中しないと。


 それから魔術書の置いてある店に行った。スィスルのスキルは大魔法だ。全ての魔法を使えるけど、魔法の名前と効果を知らないと使う事はできない。魔術書には過去にあった強力な魔法の名前や効果が書かれている。レミラレス領に居た時でもスィスルは魔術書を読ませてもらっていた。でも伯爵領と王都では置いてある魔術書の種類と量が桁違いだ。だからスィスルが王都に来た時には是非この店に連れて来たかった。

 強力な魔法が書かれているから、一般的な魔法使いには閲覧許可が必要だ。

 さて、スィスルに閲覧許可がおりるかは分からないけど、そこまで強力ではない魔法なら見せてもらえるかもしれない。


「スィスル、どんな魔術書が見たい?」

「回復系の魔術書が見たいです。大切な人が怪我をした時に治せるように今から勉強しておきたいです」

「それなら大丈夫かな」


 回復系の魔法は、一般的に流通している魔法は傷を治したりするだけだ。欠損した部位は治らない。でも上位の回復魔法だったりすると、部位欠損なら治せるものもあるらしい。さらに禁忌の魔法に指定されているけど、死者を蘇生させる魔法もあるそうだ。まあ禁忌とされている魔法をスィスルに覚えさせる事はしない。禁忌の魔法を知ったとして、国から危険視されても困る。

 店員に、過去にあった回復魔法(禁忌ではない)の魔術書があるか聞いたところ、あったので、閲覧許可の申請を出す。回復魔法だから、そこまで許可がおりるのは難しくないと思っていたけど、予想通り、簡単におりた。


「やっぱり攻撃魔法なら閲覧は厳しいですか?」


 店員に聞いてみる。


「そうですね。回復魔法なら私が許可を出せますけど、攻撃魔法は国に申請を出さないといけません。それに閲覧したい人が国から信頼できる人でなければならないのと、その人も良い意味で名前が知られている方が良いです。ラソマ伯爵なら英雄としても知られてますし、おそらく申請はおりると思いますよ」

「そうなんですか」


 その後少し聞いたけど、貴族というだけでは駄目らしい。公爵でも難しいそうだ。

 俺は無事に閲覧許可のおりた回復魔法の魔術書をスィスルに渡す。

 スィスルは魔法を使ってから、魔術書を凄い速さで読み始める。

 スィスルの大魔法は全ての魔法を使う事が出来る。と言う事は全ての魔法の名前と効果を覚えないといけないという事だ。まあスィスル本人が覚えたくない魔法は覚えないわけだけど。

 そういう理由から、覚えたい魔法の名前と効果を覚える記憶力を上げる魔法、そして魔術書を素早く読む為の魔法をスィスルは真っ先に覚えた。今もその2つの魔法を使った状態で魔術書を読んでいる。


「読み終わりました!」

「さすが、早いな」


 魔術書は厚く、文字もそんなに大きくない。全部読もうとすれば俺なら1日がかりだろう。加えて魔法の名前と効果を記憶しなければいけないわけだから、俺ならどれだけの時間がかかるか。

 でもスィスルは3分程で読み終えた。魔法がいかに凄いかがよく分かるな。


「無理はしてない?」

「はい、大丈夫です!」

「そつか。それなら次の場所に行こうか」

「はい!」


 俺達は店員に魔術書を返し、店を出た。

読んでくださり、ありがとうございます。

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