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60.その頃、残念勇者は

お待たせしました。

「ここが俺の住む事になる城か」


 ラソマの野郎に国を追い出された俺は、今日から住む事になる城を門の外から眺めていた。

 ここで沢山の女を抱けるのか!ククク、楽しみで仕方がないぜ!


「待て!何用だ?」

「あ?」


 門兵如きが勇者である俺の邪魔をするのか?


「ここから先は王城につながっている。用事が無い者は立ち去れ」

「馬鹿か。用事があるからここに来たに決まってるだろ。でなきゃ来るかよ」

「なんだと?!」

「お前程度じゃ話にならねえ。さっさと王の前に案内しろ」

「貴様!陛下と呼べ!」


 うぜえなぁ。どう呼ぼうと勝手だろ。俺は勇者だぞ?この国に今、勇者はいねえ。俺がこの国の勇者になってやらないと、魔王が来たら終わりだぞ?


「俺は勇者だ。分かったら道を開けろ」

「勇者だと?嘘を吐くな!勇者様なら王城にいらっしゃる!」

「はぁ?お前が知らないだけだろ。王に会わせろ。そうすれば分かる」

「黙れ!」


 こいつら…俺に剣を向けてきたな。その行為、どういう意味か理解してもらうか。

 俺も剣を抜く。勇者としての力は見せなくても良いか。こいつら程度、俺の剣技だけで十分だ。


「さあ、どっからでもかかってこい!勇者に剣を突きつけた罪、その命で償ってもらうぞ!」


 この程度の言葉にビビってやがる。こいつらの練度は低いな。所詮、門兵か。


「かかってこないなら、こっちから行くぞ!」

「待て!」

「ん?何だ?」


 斬りかかろうとした俺の前に1人の男が立ちはだかる。


「お前も俺の邪魔をするのか?それなら斬るだけだが」

「まあ待て。お前の目的は何だ?」

「この国の勇者になる事だ。その為にわざわざ来たんだからな。さっさと王に会わせろ」

「そこが理解できん。勇者様なら王城にいらっしゃるのだ。お前が誰か分からんが、この国の勇者になるのは不可能だろう」

「本当にそう思ってるか?勇者が王城にいるって事をよぉ」

「ああ、間違いない」

「ちゃんと調べたか?今日、勇者を見かけたか?」

「い、いや、見かけてはいないが…そもそも勇者様を見る機会など無い」

「それなら居るなんて断言するなよ!何の証拠も無いじゃねえか!」


 全く…面倒な奴らだぜ。お前らは勇者である俺の言葉に従っとけば良いんだよ!


「王が無理なら、大臣を呼べ。そいつらなら現状を知ってるだろ」

「い、いや、大臣もそう簡単に呼べるものでは…」

「じゃあ公爵から伯爵くらいなら呼べるだろ。事情を言えば理解して、喜んで俺を城に入れるだろうよ」

「わ、分かった。しばらく待ってくれ」

「あまり待たすなよ?別に城に入るなんて簡単なんだからな」

「あ、ああ!」


 そう言って、やっと男が城に走って行った。俺はそれを見届けて剣を鞘に納める。


「お前らも剣を納めろ。死にたくないだろ?」


 俺の言葉に門兵達は剣を納める。

 やれやれ、俺は女を抱きたいだけだってのによ。


 それからしばらく待って、やっとさっきの男が帰ってきた。


「遅え!いつまで待たせるんだ!」

「すまない。この方が伯爵様だ」

「君か?自分を勇者だと言う愚者は」


 伯爵だと紹介された男が俺を見下しながら言う。


「あ?愚者だと?自分の国の勇者がいなくなった事に気づかない、お前達の方が愚者じゃねえのか?」

「貴様!伯爵様に向かって…」

「まあ待て。君、どこまで知っている?」

「この国に勇者が居ない事は知ってる。俺がその代わりに来てやったわけだ」


 伯爵は俺の言葉を聞く気になったみたいだな。


「ふむ…少し、きちんと話がしたいな。まずは城に入ってくれ。そこで話をしよう」

「お、良いのか?城に入れるなんて伯爵が決めれるもんなのか?」

「まあ大丈夫だろう。君の言葉を全て信じるわけにはいかないが、全てを信じない理由も無いからな。特に事情を知っているならば余計に」


 それから俺と伯爵は城に入り、応接室らしい部屋に入った。

 俺と伯爵が椅子に座るとメイドがコーヒーを持ってくる。


「お、可愛いじゃねえか。おい、女。俺の相手をしねえか?」

「お、お相手ですか?何のでしょうか?」

「ククク、決まってるだろ。○○○だよ!」

「そ、それは!」


 こいつ、顔を赤くして照れてやがる。


「君、ここでそういう発言は控えてもらおうかな?君はもう良いよ。下がりなさい」

「は、はい。失礼します!」


 ちっ!伯爵に言われてメイドがあっさり部屋から出て行っちまった。


「おい、邪魔をするなよ」

「君こそ、何のつもりだ?」

「この国は勇者の遺伝子欲しさに相手を紹介するんだろ?だったら俺の遺伝子が欲しい筈だ。違うか?」

「…それも知っているのか。と言う事は本当に我が国の事情を知っているのか?」

「そう言ってるだろ。何せ、この国の勇者は、俺が居た国にいるからな」


 俺の言葉に伯爵が驚く。


「それで、俺が代わりにこの国の勇者になってやろうってわけだ。前の勇者はこの国に帰りたがらないからな。前の勇者の名前はレイラで女だろ?」


 勇者の名前や性別、年齢などの素性は極一部の人間にしか知られてないからな。俺がそう言えば、本当の事だと分かるだろ。


「どうやら君の言っている事は本当の様ですね。ですが本当に君は勇者なのか?」

「ああ、そう言えば、書状を預かっていたな」


 そう言って俺は、俺が居た国の王に渡された書状を伯爵に渡す。伯爵はそれを読んでいたが、読み終えたのか俺に目を向けた。


「君、これを見せていれば、ここまで面倒な事にはならなかったんじゃないのか?」

「忘れてたんだから仕方ないだろ。それにもっと簡単に入れると思ったんだけどな」

「それは楽観的過ぎると言うものだ。それにしても君が勇者か。魔王を倒す気はあるのか?」

「当たり前だろ。魔王は悪だからな。俺にとって獲物だ」


 俺の人気を上げる為の生贄だからな。俺の人気が上がれば、俺に寄ってくる女の数も増える。


「獲物、か。魔王を獲物呼ばわりできるのは勇者くらいだろうな。分かった。陛下に会ってもらおう。但し、粗相のないようにな」

「ああ」


 やっと王に会えるな。

 それから俺は謁見の間に通された。嫌々だが、王の前に跪く。


「お前が勇者か」

「ああ」

「貴様!王に向かって無礼だぞ!」


 俺の応えに王の傍に居る大臣が怒る。


「俺は別に王に忠誠を尽くす為に来たわけじゃないからな。俺の態度が気に食わないなら構わないぜ。但し、魔王に攻められる格好の国になるだろうけどな」

「貴様!我が国の弱味につけ込むつもりか!?」

「そんな事はしないさ。俺はこの国にいない勇者だと言ってるだけだからな。それで、どうする?俺をこの国に置いておくか?それとも要らないか?」

「それは…必要だ。どのような人間であろうと、勇者であるならば、それだけで魔王への抑止力になる」

「決まりだな。俺はこの城に住む、それで良いな?」

「うむ」


 俺の問いに王が頷く。まあ、頷くしかないよな。他に魔王に対抗する術が無いんだから。


「それと女を紹介しろよ?俺の遺伝子が欲しいんだろ?綺麗所をたっぷりと寄こせ。貴重な勇者の遺伝子をくれやるぜ!」


 この国に来た理由はそれだからな。


「分かった。勇者の遺伝子は是非とも欲しいからな。その点は約束しよう」

「決まりだな!おい、伯爵。俺を部屋まで案内しろ」


 さっき話した伯爵に案内を命令する。


「…分かった。ただ君は私と同じ伯爵相当の権利しか与えられん。私と同じだ。分かるか?私に命令できる立場に無い事を忘れるな?」

「ごちゃごちゃ五月蝿えよ。これから先、会う事も無いだろうし、いちいち気にすんな」


 納得していない伯爵に連れられて部屋を出る。


「陛下、勇者があのような者で大丈夫でしょうか?」

「うむ。性格は最低だが、それでも勇者だ。あの遺伝子は欲しい。次期勇者が生まれたなら、必要のないあの者は追い出せば良いだろう。それまでの辛抱だ」

「はい」

「なに、あの勇者を利用するだけだ。女を寄越すだけで良いなら簡単だろう」

「…そうですな。散々利用いたしましょう」

「うむ」


 王と大臣が笑い合ってるな。俺に聞こえていないと思っているのか?勇者としての聴力を侮ってもらったら困る。ドアを隔てたとは言え、このくらいの距離の声が聞こえないとでも思っているのか。ククク、まあ良い。利用されるフリでもしてやるか。それで女を抱けるなら安いものだ。

 さて今日からたっぷりと女を抱かせてもらうぞ!

読んでくださり、ありがとうございます!

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