表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/75

58.スィスル、学校に入学する

お待たせしました。

 レイラが俺の住む国の勇者になった。これで魔王が来ても安心だな。そして元から居た残念勇者は国を出て行った。


「これで安心だなぁ」

「何か嬉しい事があったんですか?」


 屋敷に戻り、リビングで寛ぐ俺に紅茶を出しながらアミスが聞いた。


「ああ、ちょっとね。話せる内容か分からないから話せないけど。知りたい?」


 もし内密の話だとしてアミスなら誰にも言わないだろう。


「いえ、話せない内容を無理に聞きたいとは思いまさん。ラソマ様が笑顔で居てくれるだけで嬉しいですから」

「そう?俺もアミスが笑顔で居てくれるのが嬉しいから、その為にも頑張るよ」

「無理はしないでくださいね?」

「勿論」


 無理をして俺が倒れればアミスが悲しむからな。

 翌朝。俺は冒険者ギルドに来た。


「レイラ、調子はどうだ?生活が変わっただろ?」


 ギルド内に居たレイラに声をかける。


「特に変わってないわよ」

「ん?でも引っ越しただろ?」


 前の勇者と同じように城で住んでれば、ベッドや食事が変わってくるはずだ。


「引っ越してないもの。特別な待遇を求めているわけじゃないし。今までの生活で十分よ」

「よく承諾してくれたな」


 国王からすれば勇者を城に住まわせておきたいはずだ。


「ある意味、それが私からの条件だからね」

「成程」


 レイラは束縛されたくないんだろうな。自由な冒険者として活動していれば、束縛されたくないのかもしれない。


「そうか。これからもSランク冒険者として活動するんだよな?」

「当然でしょ。働かなければ生きていけないんだから」


 それはそうだけど、勇者なら国からお金を貰える筈だ。別に冒険者として活動しなくても生きていけるだろう。そう聞くと、レイラは笑った。


「お金は貰ってないの。冒険者として活動できれば、生きていく分にはお金に困らないもの」

「そうか。まあ、何にせよレイラには助かったよ。また非常事態が起きた時に、俺が出撃する回数が減るからな」

「それでも皆、期待してるわよ、英雄様?」

「こっちこそ期待してるぞ。勇者様」


 お互い、周りに聞こえないように小声で喋り、笑う。

 その後、俺とレイラは分かれ、別々の依頼を受けた。さて、今日も働くか!


 1週間後のある日。俺は実家に来ていた。父さんに呼ばれたからだ。


 俺はリビングで家族全員と会っている。アミスは俺の屋敷で待っている。


「今日は呼び出してすまないな」

「いえ、久々に家族に会えて嬉しいです」


 前に会った時は魔王を倒して陞爵された時だな。


「呼ぶという事は私に用事があるのですか?」

「そうだ。お前も冒険者登録を済ませ、無事に冒険者をしている。まあ、普通の冒険者ではないがな」


 そう言って父さんは苦笑いする。確かにSランクであり、魔王を倒す事のできる冒険者は普通ではないな。


「用件はスィスルの事だ。そろそろ王都の学校に行かそうと思ってな」

「いよいよ私も学校に行けるんですね!」


 父さんの言葉にスィスルが嬉しそうな声を出す。


「ああ。ラソマも自立し、スィスルが王都に行っても安心だからな」


 うちの親戚は王都にはいない。俺が居ない状況ならスィスルは王都で1人ぼっちになってしまう。まあ学校で友達をつくれば良いんだけど、家族としては心配になってしまう。


「スィスル、ちゃんと勉強はしていたかい?」

「はい!いつ学校に行っても大丈夫なように勉強していました」

「ラソマ、それは僕が保証するよ。スィスルは勉強を頑張っていた」

「そうですか」


 まあ心配はしていない。スィスルはきちんとしている子だからな。身内贔屓かもしれないけど。


「スィスル、学校に行くのが楽しみだね。同年代の友達もできるだろうし」

「はい!」


 俺が最低ランクなら不安だけど、魔王を倒し英雄と呼ばれ、Sランクであり、伯爵でもある。そんな男の妹に手を出そうなんて考える人はいないだろう。手を出せるとすれば俺より上の爵位、それか王族だろうな。


「とは言え、まずは編入する為の試験があるけどな。その試験に合格しないと学校には入れない」

「頑張ります!」

「無事に合格して編入できたら一緒に王都を散策しようか」

「はい!」


 スィスルは笑顔で返事をする。

 その日の話はそれで終わり、数日後。スィスルは学校へ編入する為の試験を受けた。結果、スィスルは無事に合格した。編入する為の試験って難しいイメージがあったんだけど、スィスルは余裕で合格したらしい。


 スィスルの合格発表があった数日後。俺は実家の屋敷に来ていた。理由はスィスルの引っ越しの手伝いだ。スィスルは学校の寮に入る事になっている。多くはないが荷物があるので、俺が異空間に収納して運ぶ事になった。スィスルはもう荷物を整理し、箱に入れていたようで、異空間への収納はすぐに終わった。


「さて、あとは王都に行くだけだな」


 王都には馬車で行く。瞬間移動で簡単に行けるけど、貴族家の娘として、きちんとした方法で王都への門をくぐらなければならないらしい。それなら門の前に瞬間移動すれば良いんじゃないかと提案したが、それも違い、屋敷から馬車を使う事が重要なんだそうだ。


「スィスル、しっかり勉強するんだぞ」


 屋敷の玄関で父さんがスィスルに声をかける。今は見送りの時間で、この場には家族全員と数人の使用人がいる。


「はい、父様」

「好きな人ができたら報告してね。相談に乗るから」

「す、好きな人なんて…まだ早いですよ、母様」

「ラソマが出て、今度はスィスルか。寂しくなるね」

「学校の方が落ち着いたら、また帰ってきます、オスエ兄様」


 それから使用人達もスィスルに声をかける。スィスルは使用人から人気があったからな。俺はそんな光景を黙って見ている。俺も馬車でスィスルと一緒に王都に行く事になっているし、そもそも俺は王都で暮らしている。今更、いなくなっても俺への感慨はないだろう。


「ラソマ、スィスルを頼むぞ?男が近づいてきたら、どんな男か報告してくれ」

「は、はい」


 そういう父さんの態度は鬼気迫るものがあるな。


「ラソマも、用事がなくても帰ってくるのよ?待ってるからね」

「はい」


 母さんの言葉にグッときてしまう。陞爵してもらえた時くらいしか帰ってないし、もっと気軽に顔を出すべきだな。


「それじゃあ、行ってきます!」


 スィスルが挨拶をし、馬車に乗り込み、俺も馬車に乗る。そうして馬車は王都に向かって出発した。


「スィスルは王都に行くのは2度目だな」

「はい。でも前は編入の為の試験だったので…」

「観光はできてないよな。それじゃあ王都に着いて、引っ越しの片付けを終えたら観光しようか。まあ次の日になるかもしれないけど」

「はい!」


 それまでに俺も王都の観光名所のような場所を探しておかないといけない。俺もそこまで王都観光なんてしてないからな。それにスィスルは女の子だ。男の俺が良い場所だと思っても、スィスルは良いと思わないかもしれない。


「スィスルは何に興味がある?食事とか、衣服とか、遊ぶ場所とか」

「私は兄様と一緒ならどこでも楽しめます」

「そうかい?」


 そう言ってくれるのは嬉しいけど、場所を決める事ができないな。でも2人で王都観光するのは楽しみだな!


 数日後の昼。馬車は王都に到着した。


「長かったな」

「そうですね」


 俺の言葉にスィスルは苦笑いする。瞬間移動なら一瞬なんだけどな。念動力で空を飛んでも、1日で着く事はないし。こうやって、たまに馬車を使うと、瞬間移動の有り難みが分かるな。

 それからスィスルと一緒に学校に行く。そこで入学手続きを済ませて、俺の家に行く。スィスルが実際に通い出すのは明日で、住む寮に入るのも明日からだ。とりあえず今日は俺の屋敷に泊まる事になっている。


「ここが兄様のお屋敷なんですね」

「ああ、遠慮しないで寛ぐんだよ?」

「はい!」


 外観を見て、それから中に入る。


「お帰りなさいませ、ラソマ様。スィスル様、お久し振りです」


 中に入るとアミスが出迎えてくれる。


「ただいま」

「アミス、久し振りね。兄様との生活はどう?」

「楽しいです!」

「それは良かったわ。やっぱりあの時、兄様と一緒に行って正解だったのね。私も兄様と一緒に暮らせたら良かったのに…」

「スィスルは見識を広げないといけないからな。俺と暮らすより、同じ学校に通う子達と少しでも長い期間を一緒に過ごした方が良い」


 俺の言葉にスィスルは頷く。


「まあ、無理そうだったら、ここから通っても良いんだけどね」

「いえ!兄様に甘えっぱなしじゃ駄目だと思うので、頑張ります!」

「うん、その意気だ」


 これなら安心できるな。元からそこまで不安だったわけではないけど。スィスルなら大丈夫だと言う確信があった。家族贔屓かな。

 それから俺達はリビングに向かった。何はともあれ寛ごう。

お読み頂きありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ